第18話 カイルとリーシャ
カイル達の家に着き、ハンスの事やタリスマンの事、それにカオリの事を話し終え、これから2人がどうしたいか俺は聞いていた。
「えっと、色々言われたけど取り敢えずはギマン、本当にありがとう。ハンスの奴に色々と嫌がせを受けて冒険者ギルドの件もあったし、正直もうどうしたらいいのかわかなくなっていた。だからホントに感謝している」
「うぅ...グスン。私からもありがとうございます。嫌だけどあいつに着いていくしかないとホントに覚悟してました」
リーシャちゃんは涙を流しており、カイルは土下座をしていた。
「まずはカイル土下座はやめてくれ。リーシャちゃんも本当に辛かったな。よしよし」
泣いているリーシャちゃんを抱き寄せ頭を撫でる。
胸の感触が半端ないです。はい。
2人の姿を見ていると早急にハンスを潰して良かったと思う。
後ろからその光景を見ていたカオリは少し頬を膨らませていた。
「あぁ、わかった。で俺達がこれからどうしたいかって話だな。そりゃ勿論この恩を返す為に俺は何でもするぞ。《鑑定》が使えるギマンが俺達のステータスを見ても協力してくれって言うって事は何か手伝えることがあるんだろ?だったから是非とも協力させてくれ」
カイルは正座を崩し胡座をかき、俺の目を見て力強く言ってきた。
「私も勿論協力します!ギマンさんの為なら身体を捧げても構いません!でもその前にギマンと...」
抱き寄せているリーシャちゃんが上目遣い破壊力あるなぁ。
リーシャちゃんが何か違う方向に行ってる気がするが、2人共、協力してくれるようで良かった。
「彼女も泣き止んだようだし、そろそろ離れたらどうだ?これから作戦会議をするのにその格好だとな。」
カオリから抗議され、それもそうだなと思い名残惜しいが俺はリーシャちゃんから離れる。途中「あっ...」という悲しそうな声がしたけど。
「ひとまず、これから魔の森に行ってLv上げと各々のスキルの確認をしてもらおうと思う」
そう言うとカイルが手を挙げた。
「ちょっと待ってくれ。そもそも、そこのカオリさんはともかく俺達は何もスキルなんか持ってないぞ」
「うん。私も持ってないですよ?」
そっかまだ2人には自分にスキルがある事を説明してなかったっけ。
「いいや、俺が鑑定した時、カイルには《剛腕》。リーシャちゃんには《大器晩成》というスキルがあった。ちなみにカオリには《
3人は面白いように驚いてくれた。
やっぱりカオリは自分のスキルが超聴覚だけだと思ってたか。
「《剛腕》は10秒間だけ攻撃が100倍になるが3日に1回しか撃てない。《大器晩成》は徐々に大成するとあったからLvを上げていると何かしら起こると思う。《
タリスマンとの戦いではぶっつけ本番になるけど、自分達がスキルを持っているという事は自覚しておいて欲しい」
長い説明を終えて3人を見ると、みんな俄には信じ難いと言った表情をしていた。
「勇者様が10倍なのに俺が攻撃だけとはいえ100倍?嘘だろ...」
「私スキル持ちだったんだ。でも、これでギマンさんの役に立てるなら...」
「耳が恐ろしく良いだけと思っていたが、まさかそんな強力なスキルまで持っているなんて...」
CTが1日以上じゃなければ使用して貰って俺の錯覚で会得出来るんだが、リスクが大きすぎる。
《大器晩成》などは使用するスキルじゃないから、そもそも会得出来るか怪しい。まだ錯覚のスキルの全てを知ってる訳じゃないから残りの2つも100%手に入れれるってことも分からないからな。
「みんな驚くのは後にしてくれ。それより今すぐにでもLv上げに行くぞ。タリスマンとの約束まで時間が無い。」
思うところはあるだろうが、今はタリスマン攻略を急ぎたい。
「わ、わかった。すまねぇな。この歳になってスキルがあるって言われて動揺していた」
「ごめんなさい!このスキルでギマンさんの役に立ってみせます!」
「そうだな。今はあの化け物退治に専念しよう」
如何にスキルが強力だろうが基礎ステータスが低ければスキルを撃つ前に瞬殺されてしまうだろう。
「なぁカオリ、パーティってどうやって組めばいいんだ?」
Lv上げをする際、俺だけが倒していても他の3人にまで経験値が振り分けられるとは限らない。
だったら、パーティを組めばいい。これでもし、俺だけ経験値を得たら瀕死にして最後だけ皆にトドメをさしてもらおう。
「冒険者カードをタッチすれば、パーティを編成する画面が出てくるからそこで組めるぞ」
そう言われ俺はポケットの中の冒険者カードを出す。
こんな木の板で出来たカードにそんな機能があるなんて普通思わないだろ。
カードをタッチするとパーティを編成すると出てくる。そこから招待したい相手を選んでくださいと表示され、カイルとリーシャとカオリを選択する。
すると、3人の冒険者カードから音が鳴った。
「今、パーティに招待を送った。入ってくれ」
すぐさま、カイルがパーティに参加しました。と出て、その後リーシャちゃんとカオリも参加してくれた。
「よし、取り敢えずこれから魔の森へ向かう。最初は俺が倒すけどLvが上がらないようならトドメだけ刺してもらう」
「それと...みんな最後に俺に協力してくれてありがとう。必ずタリスマンを倒すから俺を信じてくれ。」
そう言うと3人はキョトンとした後に笑い声をあげた。
「まさか、ギマンからそんな事言われるなんてな!水臭いこと言うなよ! どんな化け物が相手だって絶対倒してやるぜ!」
「私はギマンさんを信じてますよ! だから絶対に悪い魔族を倒しましょう!」
「フフッ。ギマンに付いていくと決めた時から信じているさ。妹の仇必ず取る!」
普段言わない事を言うとこんなに照れ臭いもんなんだな。
元の世界では信じていた相手に裏切られ地獄を味わい、その後、己を騙し、人を騙し続けた俺だったが付いてきてくれる3人を見てもう一度だけ人を信じてみようと思った。
ここは魔族領に聳え立つ漆黒の城の一室
「あぁ、明日が楽しみですね。やはり若い女性の血は最高なんですよ。もう家畜の血じゃ耐えきれなかったですからね。貴方もそう思うでしょ?アザミ?」
タリスマンは恍惚の表情を浮かべて扉のすぐ側に跪いている女性に話しかける。
「はい。勿論でございますタリスマン様。」
その言葉には感情というものが全くなく無機質な声だった。
「それにあの人間の目、あれは私に脅えて屈服しようとしている者の目じゃなかった。久々に闘争も楽しめるんでしょうか?しかし、所詮は人間ですからね。あぁ...明日が待ち遠しい!」
彼女はただ、主人であるタリスマンを虚ろな目で見ていた。主人の命令を忠実に遂行する。それが彼女『アザミ=エンフェルト』の眷属としての生きる意味なのだから。
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