第17話 褐色とメロン
カイル達の家への帰路、俺は周囲にひたすら鑑定をかけ、タリスマンの手先を発見。
種族名で混血種って書いてあるから見分けやすいな。
監視役の男に「監視対象の男に異変はない」と錯覚をかけておいた。
これでひとまず安心だと思うが問題は明日タリスマンをどうやって迎え撃つか。
俺の現時点での手札は《錯覚》に《斬撃》だ。
あまりにも心許ない。
巻き込むのは避けたかったがあの兄妹に俺の事と今回の事件の事を明かして協力してもらおう。
考え事をしながら歩いていると後ろから声をかけられた。
「あんた、あの化け物相手にどうやって勝つつもり?」
急にそんな事を言われ後ろを振り返ると、金色の髪を後ろで一括りし、耳が長く肌は褐色のメロンが2つ胸に収まっまてるのでは無いかと思うほどの持ち主だ。
いわゆるダークエルフというやつだ。
今の口振りからしてどうやってかタリスマンの事を知ってるらしい。周りに気配はなかった。なぜだ。
そこで俺は目の前の相手に《鑑定》をかけた
『カオリ=エンフェルト』 女性 B:98 U:55 H:92
種族名:
Lv:16
HP:350
MP:150
攻撃:270
防御:240
魔法:180
速さ:420
知能:250
器用:300
スキル
《超聴覚》30m範囲の音を聞き分けられる
《
物凄い情報量だ。まずは、素晴らしいスリーサイズからじゃなくて《超聴覚》、このスキルで俺とタリスマンの会話を聞いていたようだな。
2つ目のスキル《
そして、俺はまだカオリにあった事もないんだが、好感度が60あるのはなんでだ?
おっと、いけない。並列思考を行っていたけどさすがにずっと無視するのはまずい。
カオリが話しかけたのにこっちをずっと見て無視してるもんだから険しい顔になっている。
「俺とタリスマンの会話を聞いていたのか?」
ここは敢えて確認から入る。誤魔化して錯覚をしてもいいが、今は1人でも協力者が欲しい。
「そうよ。私のスキル《超聴覚》であんた達の会話を聞いてたの」
やはりか。それにしてもあの会話だけで俺がタリスマンに立ち向かおうとしてるって事は分からないはずだ。
なのにカオリは第一声にどうやって勝つつもり?と言ってきた。
「なら聞いてたろ。あの化け物に殺されないように明日取り引きするんだよ」
「嘘ね。本当に生き残りたい人間なら眷属になる選択肢を取るわ。そしてなにより私が今あなたにあの化け物の事を話してるのに監視役の男は何もしてこないし、どこかに報告もしてない」
「あなたさっきあの男に何かしてたでしょ?でないとこの状況、監視役が何もしないわけないわ。明日取り引きする人間がわざわざそんな危険を犯すとも思えないわ」
Lvに対して知能が高いなだけあるな。
俺はカオリが話してきた時、すでに監視役の男に「取り引きの女を調達してるだけ」と錯覚をかけておいた。
それにしても危ない事すんなー。俺がもし錯覚かけてなかったからタリスマンに報告されて消されてたかもしれないのに。何がそこまでカオリを突き動かすのか。
「わかった。降参だ。で何で俺をそんなにストーカーしてんの? 」
「私はアンタじゃなくてハンスを追っていたのよ。そしたら、アンタがハンスをボコボコにして情報を聞き出そうとしてる時に化け物が現れて...」
タリスマンの事を思い出したか、カオリは体を震わせた。
「なんでハンスを追っていたんだ?」
「それは.....」
カオリは少し間を開けて話し出した。
「私の妹を殺したからよ」
ハンス達が攫った女性の遺族か。納得した。
「けど話を聞いてたら殺したのはハンスじゃなくて、あの化け物だったのね。ねぇ、ハンスをボコボコにしてくれたアンタには感謝してるし、私は足でまといかもしれない。でもあの化け物と戦おうって言うんなら私も連れて行って!取り引き用の女って事なら不審がらないでしょ!?」
捲し立ててくるカオリの表情には妹の仇は何がなんでも取るという強い意志を感じた。
「死ぬかもしれないぞ?」
俺は心を鬼にして、少し殺気を混ぜてカオリに聞いた。
一瞬だけカオリは脅え1歩下がったが、両頬を叩き俺に近づいて力強い瞳を覗かせた。
「覚悟は出来てるわ。私は死んでもいい。だけど必ずあの化け物を殺して」
その言葉を聞き、俺は殺気を消した。
「わかった、タリスマンは必ず殺す。だけど、カオリは死なせない。俺の名前はギマンだ。よろしく」
握手を求めて、カオリを見ると顔を真っ赤にしておずおずと握手を返してきた。
「こちらこそよろしく。私の名前はカオリよ。あれ?ってか今私の名前呼んだ?」
あっ、やべぇ。普通に名前聞く前に呼んでしまった。
「さぁな。それじゃあ作戦会議しに行くぞー」
俺は踵を返し歩きだす。
「ちょ、ちょっと!絶対さっき名前呼んだでしょ!?待ってよ!もう」
後ろからカオリが抗議してくるが知らない知らない。
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