第14話 斬撃と混血種
冒険者カードを作り、カイルとリーシャちゃんと合流した俺は「お礼がしたい」と言われて断れず、2人の家に向かっている最中だ。
「それにしても、ギマンって本当にFランクなのか?何か佇まいといい、オーラといい、俺にはとてもFランクには見えないけどなぁ」
「それ私も思いました! お兄ちゃんよりも年下なのに落ち着きがあってカッコよくて、守られたい!って感じました」
リーシャちゃんの感想はちょっとズレてるとは思うけどな。
俺はこの2人の前では力を全く使ってないはずだが、ステータスが上がれば強者のオーラか何かがつくとかじゃないよな?でも確かにAランクの冒険者から急に絡まれて普通の冒険者だとあんなに冷静にいられないよな...
「正真正銘のFランクだぞ。昔からあまり物事に対してのリアクションが薄いとは言われてたから勘違いしてるだけだ」
元の世界の俺のモットー「緊急時に冷静でいられない者から死んでいく」というのが体に染み込んでるからなのか。
「いいよなぁ。クールで爽やかでイケメンは」
カイルは顎髭を触りながらしょぼくれていた。
「カイルだって大人の渋さがあるじゃないか」
「俺の渋さは単純に老け顔と心労によるものなんだよ!」
「お兄ちゃんホント老け顔だもんねー」
そんな冗談を言い合いながら2人の家へと向かう。
2人と話しながら俺は、冒険者ギルドから出た時に感じる複数の気配を察知していた。
十中八九ハンスとその手先の奴らだろう。
まぁ奴らが行動に移すのは分かっていたが、この2人を巻き込むのは俺としても都合が悪い。
そろそろ、こちらからもアクションを起こそうかと考えていた時。
「着いたぜ。ギマン」
とカイルが後ろを振り返り言った。
そこには、煉瓦で出来た一戸建ての家があった。2人で住むにはちょっと広いかなと思うほどの想像していたよりキチンとした家で少し驚いてた。
「この家は俺達の両親が残してくれた家でな、Fランクの俺達でも住めてるって訳だ。」
おそらく顔に出ていたのであろう。カイルが俺の疑問を先に言ってくれた。
「あっ! お兄ちゃん! 家の中全く掃除してない! 特に私の部屋なんか...」
リーシャちゃんが急にこの世の終わりのような顔をして家の中に急いで入っていった。
「ギマン悪いけどちょっと待っててくれないか?ちょっと家の中、掃除してくる」
「ちょうど俺もお招きされてるのに、手ぶらじゃ悪いと思ってたから何か買ってくるさ」
「そうか。金は後で払うから買い出し頼むな」
「いいよ。家にあがらせてもらうからそれの代金だと思ってくれ」
家の中から「お兄ちゃん早く!」とリーシャちゃんの可愛い声が聞こえて、カイルはそそくさと向かっていった。
さてと、どこか寄り道する予定だったが都合よく1人になれたな。
ここで後ろの奴らが俺を狙っているのか、2人を狙っているのかはっきりさせておこうか。
俺は人気のない裏路地へと足を進める。後ろの気配は俺に着いてきた。
狙いは俺か...。まぁ確かにハンスの性格上、俺をボコボコにしてリーシャちゃんの心を折りたいとかいうクソみたいな考えなんだろう。
裏路地の奥まで進み、人気が全く無くなったところで後ろの気配達はもう隠れる気がないのか、ぞろぞろと俺の目の前に現れた。
「こんな人気のない裏路地に行くなんて襲ってくださいって言ってるようなもんじゃねぇか?」
「ギャハハ、ちげぇねぇや」
「もしかして迷子になったんでちゅかー?」
案の定、ハンスと酒場にいた奴らだった。
「リーシャは俺が唾つけといたんだ。てめぇみたいな奴がでしゃばんな」
ハンスはそう言いながら腰の長剣を抜いた。それに呼応して後ろのチンピラ達も各々の武器を構えた。
「ここに来た理由は、てめぇらクズを逃がさねぇ為だ。リーシャちゃんに唾つけといただ?本人が嫌がってるのに無理やり脅して物にしようとしてる奴に誰が渡すか」
「あぁ? てめえ誰に向かって口聞いてんの分かってんのかよ。俺は冒険者ランクAだぞ? ちょっと痛めつけてリーシャの心を折ってやろうと思ってたが変更だ。四肢切り落として死体として送ってやるわ」
ちょっと挑発してやるとハンスは顔を真っ赤にし激昂した。
どうしてここまで俺はハンスを舐めきって、複数の相手をしようとしているのか。
それは冒険者ギルドで事前にハンスと周りのチンピラ共を《鑑定》していたからだ。
周りのチンピラ共はLv10〜15で当然スキルの類はなかった。
そして、ハンスを鑑定した時はこうだった。
『ハンス』男性
種族名:混血種 職業:冒険者 犯罪歴:182
Lv:55
HP:1085
MP:1000
攻撃:835
防御:700
魔法:680
速さ:580
知能:100
器用:50
スキル
《斬撃》刃物系武器装備時、斬撃を飛ばすことが出来る。
俺が見た中で1番強いが、今のステータス差なら余裕をもって対処出来ると踏んだ。
後は《斬撃》というスキル持ち。《鑑定》を会得したように今回も会得出来るのか検証したかった。
そして、俺が気になっていたのは種族名のところの混血種。見た目は完全に人間なのだが果たしてこいつはなんの血が混ざってるのか、俺には嫌な予感しかしなかった。
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