伝染
西川笑里
読み切り
「伝染?」
私がそう言うと、「そう、伝染」と風香は答えて空を見上げた。
「人間の意識って伝染するって聞いたことない?」
「意識の伝染——」私がリフレインする。
「例えばね、女子の生理は伝染するって昔から言われててね」
「そんなバカな」
「でも、実際昔は言われてた。非科学的だと言う人もいるけど、科学的に説明できるって人もいるのよ」風香はここで一息いれた。「女性が生理が起こりやすいのは、満月の夜なんだって。つまり、月の引力によって潮の満ち引きが起こるでしょ? あれと同じなんだって」
違うでしょと言葉で否定するのは簡単だ。でも、じゃあ違うという理由はと聞かれるとはっきりとした根拠もない。
「満月の夜に狼男が現れる伝承だって同じ。男性の意識が月の力によって変化する、それが狼男という架空の話に変化している。つまり月にはそういう力があるって。まあ、そういう伝説。信じるか信じないかはそれぞれ」
「私は絶対信じない」
「絶対、か。実はそういう頑固な人こそ、一度そういうものにハマると抜け出せなくなるんだよ。ひょっとしたら、とか、自分の考えを打ち消したりできる柔軟な思考が大切だってことに気がつかない。あなたはきっと他人の意識が伝染したら、何も疑わずに新興宗教とかに騙されるタイプだね」
私はごくりと唾を飲み込んだ。なぜか否定できない。
「どうすれば——」
「私とあなたの仲だもの。いい方法を教えてあげる。そういうとき、自分の意識を封印するための壺があるのよ。それを買えば、うさんくさい宗教などに洗脳されなくなるんだよ」
伝染 西川笑里 @en-twin
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