5-2話 文化祭前日
夏休みが終わり、
文化祭を翌日に控える日になっても、依然として作業は続いている。みんな帰る気はなく、寮に泊まる気満々だった。夜も深くなって来た頃、ようやく2組のお化け屋敷の準備は整い、クラスメイトは解散した。
解散したとはいえ、行き先は寮だ。拓海も男子寮に移動した。共用スペースの一角でクラスメイトと談笑している。
「ふぅ、やっと準備終わったな」
「とはいえ、明日からが本番だからな」
「ああ、今日はほどほどにして寝ないとな」
しかし、ここから話が盛り上がってしまうのが高校生の持つ若さだ。
「え!
「ああ……実は、いる……」
「誰だよ!?」
「ふっふーん、村岡が参加してた陸上合宿に来てた
「
「他校なんだから問題ないだろ?」
「え、何、もしかして天知に相談してたのか?」
「……した。それはもう、盛大に相談した」
学校外で恋愛といったら
「だけど、ずいぶん早く進んだな。もう、やった?」
「だー、下世話なこと聞くなよ! 先週OK貰ったばっかだぞ!? まだだよ!」
「なら、今のうちに俺の秘蔵の夜の作法の指導コンテンツをプレゼントしてやるよ」
「なんでそんなもん持ってんだよ!?」
「バカモノ、そういう知識は大事だぞ! 拓海だって役に立っただろ?」
「ぶっ!?」
浩太に急に話を振られて拓海は飲み物を吹き出してしまった。
「俺に振るなよ……」
「いいから答えなさい、我が友よ」
「…………ああ、役に立ったよ、本当に」
拓海は頬を赤くしながら言った。
「だろ? ほれほれ、今年彼女ができた拓海もこう言っているわけだ。君たちもちゃんと夜の作法は学んでおくんだぞ。AVの真似はダメだ」
浩太は男子生徒たちに言った。それは即ち村岡も含まれている。
悪友に出汁にされ、男子たちも盛り上がっているのを見て、拓海と女子寮にいる
やられっぱなしも
「浩太こそ、クラリスとはどうなんだ? ひとつ屋根の下で?」
クラスメイトが反応しそうな単語も含めて拓海が言った。
「あー、クラリスね。まあ、美人だから目のやり場に困る時はあるよ」
「なぬ、素直な発言……?」
「そこに嘘言ってどうするよ!」
「天知も相当羨ましい状況だよな……。お前こそ、どこまでやったんだ!?」
「手ぇ出すのは俺の主義的にノー! だって、クラリスだぞ?」
それは本当なのだろうと拓海は思った。浩太の基準が外見だけではないことは、中学からの付き合いで拓海もよく知っている。
「そういや、文化祭、クラリスの友達が来るんだよね?」
「ああ。シャロンという女子が来る」
「女子!?」
「それは会ってみたい!」
やっぱり女子という単語に反応する男子陣に、拓海と女子寮にいる日菜菊は再びため息をつく。
遅くならないうちに休もうという話になり、1年2組の男子は解散した。拓海と浩太とキマロは、村岡と一緒にバスケ部の
しかし、ここでもすぐに寝ることにはならず、改めて雑談が始まった。
村岡は筋トレ等の知識が凄まじく、飛山もトレーニングについてよく相談しているので、まずは筋トレ談義だった。
「不室さあ、たまに
「ああ、やってるよ。あれ、村岡からアドバイス貰ったメニュー」
「あれ続けてるんだな。絶対に背中丸めるなよ、腰やっちゃうから」
飛山の質問に拓海が答え、村岡が補足した。なお、他にも、日菜菊を背負って走ったり、スクワットをするなどの運動もしたりしている。
「いやまあ、お前にとっては自重トレーニングってことになるんだろうけど、事情を知らない他のクラスの奴からは、羨望の目で見られてるぞ」
「けっ! 俺は理解してくれる人が理解してくれりゃ、それでいいよ」
拓海が悪態をつく。少し、怪異研究会の合宿でラミアのレシアに起こされたトラブルのことも思い出した。
「ま、他のクラスからは、日菜菊も人気だからな。てか、飛山、お前はどうなんだよ?」
「な、何が……?」
「好きな
飛山も浩太の弄りのターゲットになるのだった。
◇◇
翌朝。
日菜菊は自室で寝覚めた。女子寮の共用スペースでの雑談には混じっていたが、寝る時に誰かと一緒というのは今回も避けた。せっかくの機会なので、
日菜菊は朝支度をし、学食で怪異研究会の面々と合流した。クラスメイトも次々と学食に姿を現し、朝食を取って、2組の教室に向かった。
朝早くから学校に来てくれた妖狐のエマとクモの妖怪とろくろ首のお姉さんを出迎え、日菜菊も白装束の準備をした。拓海は異世界ゾダールハイムのゲート監視所で魔術をかけてもらうように待機している。
莉子、クラリス、浩太、キマロも、お化け屋敷の持ち場についた。
そして、いよいよ文化祭はスタートしたのだった。
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