第6話

「久しぶりに斬りごたえのある奴と出会えたな〜!」


「早くティーレさんに会いたいならさっさと終わらせて!」


「りょーかい!」


「グゴガガゴォォ!」


 フウロがゴーレムに突っ込もうとすると、ゴーレムが瞬時にパンチを繰り出した。


「おっと!見かけによらず動きが速いな!」


「グゴ!」


「ほっ!ふっ!」


 ゴーレムのラッシュを紙一重で躱しつつ、確実に距離を縮めるフウロ。


「ゴーレムといえば核だよな〜バラバラにすれば問題ねえか」


「グゴオオオオ!!」


「ッラァ!!」


「グォ!?」


 ゴーレムは右ストレートを放つが、フウロに届く前に右腕がきめ細かい氷の山になる。


「あれで身体強化も魔法も使ってないんだからバケモノよね〜」


「おいおい、褒めても何にも出ねえぞ‥‥っと!」


「グギギギィィ!!」


 ゴーレムの右腕をバラバラにしたフウロは、そのまま両足を同じように斬り刻む。

 ゴーレムは足が無くなったことによりフウロの方に倒れる。


「フゥゥゥ‥‥‥一刀億斬ミリオンスラッシュ


「‥‥‥!!!」


 ゴーレムの巨体がフウロを押し潰す前にバラバラとなり、ゴーレムの体だった氷の欠片は風に流されてゆく。


「お疲れさーん。早く洞窟に入るわよ〜フウロが先ね」


「おう!後ろは任せたぞ〜」


 フウロとグフィンは屈みながら洞窟を進む。道中にモンスターが出て来なかった為、二人はあっという間に神秘の神樹の元へ辿り着いた。


「これが神秘の神樹か!葉が紅くて綺麗だな!」


「そうね。それより、神樹が生えている場所は思ってたより広いわね。寝るのには困らなそうで良かったわ」

 

「そうだな。早速葉の様子を確かめるか」


「ええ」  


 二人はフウロよりも少し高いくらいの神樹の葉を一枚一枚確認する。


「不味いわね」


「‥‥マジ?」


「本気って書いてマジよ。殆どの葉がブラッドティアーを生成したばっかだわ。溜め込んでいる魔力が少なすぎる」


「嘘だろぉぉぉ!早くティーレさんに会いてぇぇぇぇ!!!!‥‥‥はっ!」  


 突如、フウロの全身に魔王から殴られて死にかけた時のような衝撃が走る。


「元からおかしかった頭がさらにおかしくなった‥‥ごめんねフウロ。流石に脳を回復させる精密な回復魔法は使えないわ」  


「やかましいわ!!今思ったんだけどよ、俺の魔力を神樹に流して葉に魔力を溜めるスピードを早めたらダメなのか?」


「‥‥っ!馬鹿と天才は紙一重っ!」


「どういう意味だ!!」  


「そのまんまの意味よ!でかしたわフウロ!その方法ならもしかしたらだけど早くブラッドティアーを手に入れれるかも!」


「お、おお?そうか?俺ってやっぱ天才?」


「天才天才!早速試しましょう!」


「扱いが雑すぎない?まあ良いけどよ‥‥魔力を流すのは俺で良いのか?あんまり魔力量が多くないから維持できないと思うんだが」


「確かに私に比べれば少ないけどティーレさんに渡すんでしょ?アンタがやらなくてどうすんのよ」


「そうだな‥‥やってみるか!」


 フウロは神樹に魔力を流し始める。フウロはあまり魔力量は多くはない。それはグフィンやティーレ達に比べたらの話であり、一般の人々と比べると多い部類に入っていた。

 フウロが魔力を流すと、神樹の葉が数枚反応して微かに光ったのをグフィンは見逃さなかった。


「大発見よ!数枚だけだけど魔力がちゃんと溜められてるわ!」


「本当か!よーし、やってやるぞぉぉ!!待っててください、ティーレさーーん!!」


「やかましいのよ!ここ狭くて音が反響しやすいんだから静かにしなさい!」


「グフィンの方がうるさい気が‥‥」


「あ?」


「すまん‥‥」


 フウロは納得はいかなかったが、再び魔力を流し始める。しかし、ただ魔力を流す作業だけなのだが意外に難易度が高かった。流す魔力が少ないと神樹がそもそも反応せず、かと言って流す量が多いと葉が魔力に耐えきれずに枯れる可能性が有ったからだ。 


「もう少し魔力を抑えて」


「分かった。この位で良いか?」


「もう少し‥‥そう、その量よ。このペースだと一ヶ月あればゲットできそうね」


「一ヶ月か‥‥頑張れるっちゃ頑張れるけどティーレさん成分が足りない‥‥」


 数時間ティーレと会っていないだけで寂しくなってしまったフウロにグフィンはある物をフウロの前に置く。


「こ、これはっ!!!」


「ティーレさんの寝顔の写真よ。これを見て頑張りなさい」


「か、可愛すぎる!女神は存在した‥‥!グフィン神に感謝を」  


「誰がグフィン神よ。今度ご飯奢りなさいよ」


「容易い御用だ」  


 ティーレの写真を見たフウロは、恐ろしい程の集中力を発揮した。今まで苦戦していた魔力の流す量を、数時間も一定に保っていた。


「わ、私よりも魔力の操作が上手いかもしれない‥‥ティーレさんの写真を見てこの成果って控えめに言ってキモいわね」  


「キモい言うな。それほど俺のティーレさんに対する愛が大きいってことだ!」


「寝るわ。おやすみ」


「おおぃ!!」






後書き

剣聖は聖女と付き合いたいを読んでいただきありがとうございます!面白いと思ったらハートと星、フォローして下さると嬉しいです!感想等もお待ちしております!

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