第5話

転移したフウロとグフィンは、フォルカス雪原の近くにあるノーア村に来ていた。大きい建物は無く、自然に囲まれて静かな所だ。


「ウップ‥‥やっぱ転移は慣れないな」


「大丈夫?少し休む?」


「いや、歩いてるうちに回復するだろ。それよりもさっきは何でティーレさんを待たなかったんだ?」


「だって怖かったもの。獲物を狩る目だったわ」


「嘘だ〜いつも通り愛くるしい目だったじゃないか」


「アンタの目が節穴だって事が分かったわ。早く行くわよ」


「おい!置いてくなって!ウプ‥‥」


ノーア村を出て10分ほど歩くと、段々と風が強くなり目を開けるのがやっとだった。


「エアアーマー」


パチンッとグフィンが指を鳴らすと、風を感じなくなったフウロ。


「サンキュー」


「どういたしまして。フォルカス雪原に着いたら、私は魔法に集中するからモンスターの相手は任せたわよ」


「ばっちこい!」


風の抵抗がなくなり、移動速度が速くなった二人はあっという間にフォルカス雪原に着いた。モンスター同士が激しい吹雪の中醜く争っていたり、寒さに耐えられなかったモンスターが凍ってバラバラになっていたり控えめに言って地獄のような光景だった。


「思ってたよりエゲツないわね」


「こんな場所でブラッドティアーが取れるって信じられねえな〜」


「そうね〜ヒートキーパー」


「おおっ!寒くなくなった!」


「さっさと終わらせるわよ〜」


「おっけー。よっ」


「グラァァッ!?」


フウロはモンスターを切り捨てながら歩いて行く。フウロは魔法によって体温が維持されているので、吹雪の中でもいつも通りの動きができた。

魔王を倒したフウロにとって、そこら辺のモンスターは雑魚に等しかった。


「吹雪が止んで、モンスターがいなかったらそこそこ良い景色ね」


「ふっ!そうだな〜あそこの氷筍とか陽の光が当たったら綺麗だろうな。ほっ」


「あら、良いこと言うじゃない。カラフルエンチャント」


グフィンは氷筍が広がっている区域全体に、魔法で色を付与した。

氷筍は紫や橙色、翡翠色など様々な色に変わり、内側から発光している。それにより、幻想的な光景がフウロ達の目の前に広がった。


「すげえな‥‥」


「想像以上に綺麗ね‥‥いつまでも眺めれるかも」


二人は輝いている氷筍を眺めながらゆっくりと歩く。


「ここの安全が確保されれば良い観光スポットになるかもな〜ティーレさんにも見せたかったぜ」


「新婚旅行に連れて行きなさいよ。その時は私がやってあげるわ」


「良いのか!?楽しみにしてるわ!」


「そりゃあ、私達の仲だし‥‥」


「そっか!」


照れてしまいソッポを向くグフィン。一緒に旅をしたフウロは、これは照れた時の反応と知っていたので嫌な顔をせずに笑っていた。


「おっ、あの洞窟じゃないか?」


「そうっぽいわね。所で入り口が狭すぎない?」


洞窟を発見した二人だったが、洞窟の入り口は屈まないと入れないほど狭かった。


「そうだな。でもグフィンならそのまま入れるんじゃないか?」


「しばくわよ」


「いって!しばいてから言うの辞めてもらえる!?」


「フウロが悪いから反省料として受け止めなさい」


「ちぇっ‥‥」


ムスッとしたフウロはそのまま洞窟に向かおうとた瞬間、凄まじい地鳴りが二人を襲った。


「なっ!」


「地震!?‥‥いや、下に巨大な魔法陣があるわ!跳んで!!」


「了解!」


「クリムゾンフレイム!」


フウロがジャンプするのと同時に、グフィンは地面に向かって魔法を放った。

とんでもない熱量を持った紅色の炎は雪を溶かし、そのまま地面にある巨大な魔法陣を破壊せんと飲み込む。


「あっつい!熱い熱い熱い!!」


「ば、馬鹿じゃないの!?もっと高く跳びなさいよ!!」


炎の勢いが強すぎて、炎はフウロのジャンプした高さまで届いていた。グフィンがかけたヒートキーパーの魔法を貫通して、フウロに熱が与えられる。

フウロは急いで剣圧で周りの炎だけを消しとばす。

降りたフウロはグフィンと口論を始めた。


「だってそんな大規模な魔法使うと思わねえだろ!馬鹿じゃねえの!」


「魔法陣が大きかったからしょうがないでしょ!馬鹿馬鹿馬鹿!!」


「馬鹿って言った方が馬鹿なんだよ!ドアホ!」


「はぁ〜!?やる気!?」


「上等だ!」


「グゴォォォォ!!!!」


「「へっ?」」


歪み合うフウロとグフィンの声を遮るように大きな鳴き声が響く。

二人が声のする方を見ると、氷でできた巨大なゴーレムが洞窟を守るように立ち塞がっていた。


「ゴ、ゴーレム!?」


「チッ‥‥魔法陣の破壊が間に合わなかったみたいね。でもこの程度ならフウロ一人でも大丈夫そうね。任せても良い?」


「おう!っていうかゴーレムって声出せんの?」


「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!!!‥‥私も気になるけど」

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