第2話
フウロが飛び出してから、漸く現状を理解した2人は慌てていた。
「フ、フウロさん‥‥‥さよならとは一体‥‥それに、気づかせてくれてありがとう?」
「‥‥え?な、何で帰っちゃったの?」
「もしかして‥‥笑い合う僕達を見て、僕とティーレ様が恋仲だと勘違いしたとか‥‥?」
「えっ、嘘でしょ!?」
シャルトの言葉に真っ赤な目を見開かせて驚くティーレ。シャルトは顔に手を当てて仰いだ。
「タイミング的にそうとしか思えないですね。絶対フウロさん勘違いしてますよ‥‥」
「な、何とかしなきゃ!折角ギデオンの花が手に入ったのに!」
ティーレが手に入れたギデオンの花は僅かに中毒性がある。ギデオンの花弁に魔力を流して水に溶かす、それが一般的なギデオンの花の使い道だ。
そのギデオンの花弁を溶かした水を飲んだ者は、ギデオンの花に流れた魔力の持ち主の事を考えてしまう症状が現れる。
所謂、惚れ薬と呼ばれる物だ。ティーレはもう自分に惚れているフウロにこの惚れ薬を飲ませて、自分がいなきゃ生きていけないくらいさらに好きになってもらおうとしょうもない事を考えていた。
「早くフウロさんの告白を受ければ良かったんですよ‥‥流石に何十回も振られれば可哀想と思わなかったんですか?」
「だ、だって‥‥振った時のフウ君が可愛くて‥‥それに、あのやり取りは昔からずっとやってたからそれが無くなるのも寂しいなって」
最初は単なる幼馴染としか見れなかったからフウロを振っていたティーレ。
しかし、一緒に魔王を倒す旅に出てからは圧倒的な力で魔物を倒し、人々に優しく接するフウロを異性として見るようになってしまった。旅の途中で告白された時は流石に優先順位が魔王の方が高かったので、魔王を倒して平和な世界になったら考えると断っていたのだ。
フウロならしないと思ってはいたが、浮気を確実にさせない為にギデオンの花で作った惚れ薬を飲ませてから告白を受けようとしていた。
それまではまたフウロが告白してくれると慢心して、フウロの反応を見て気持ちよくなっていたら今の状況になった。完全に自業自得である。
「はぁ‥‥早く誤解を解かないと誰かに取られちゃいますよ?フウロさん、結構モテているんですから」
「えっ‥‥」
「えっ?知らなかったんですか?」
「そんな事フウ君から言われてない‥‥」
「わざわざ好きな人にそんな事を伝える馬鹿はいませんよ‥‥」
「ど、どうしよう‥‥」
血の気が引いたのか、ティーレの白い肌がさらに白くなっていく。
「教会のことは僕が何とかするので、ティーレ様は早くフウロさんを追いかけてください」
「で、でも」
「気にしないでください。フウロさんが知らない誰かに取られても良いんですか?」
「嫌!」
食い気味に言うティーレ。フウロの隣に自分以外の誰かが居ると想像しただけで、ティーレの胸中は嫉妬や憎しみでドス黒く染まっていく。
「それじゃあ早く誤解を解いてきてください」
「ごめんなさい。教会のことはお願いするわ!」
険しい顔で教会を出て行った上司を見て、シャルトはため息をつく。
「はぁ‥‥無事に仲直り出来ると良いんですけど‥‥」
シャルトは心配しながら天に祈りを掲げる。
「うわぁぁぁ!!!!」
「キュウゥゥウ!?」
ティーレがフウロを追いかけて教会を出た頃、フウロは教会から出た後、森の中を叫びながら全力疾走していた。
あまりの速さにフウロが足をつけた地面は陥没し、木々は揺れ、小型のモンスターは吹き飛ばされていた。
(なんて事だ‥‥!!俺は今までティーレさんにプレゼントを贈ったことがなかった!!!)
フウロが笑い合う2人を見て気づいたことというのは、自分がティーレにプレゼントを贈ったことがない事だった。
つまり、ティーレとシャルトは盛大な勘違いをしていた。
(女性にプレゼントなんて贈ったことが無いからどうしたら良いか分からん!アイツに相談しないと!)
フウロは魔王を一緒に倒した旧友の元へと急いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます