第5話 お見舞い

(行けないってどういうことだ?)

直前に予定でも出来たのだろうか。それとも俺は嫌われたのだろうか。とりあえず彼女にメールをして何があったか聞いてみるのが1番良い気がする。

(家の都合かなにかな...)

文章を打っていると電話が来た。レンさんからだ。


「レンさん?」

「ごほっ、ごめんね。熱が出ちゃった」

「俺は全然平気だよ!デートはまた今度行けばいいし!」

「ごめんね...昨日は夜更かししちゃって...」

「夜更かしはダメだよ。体に悪いからね」

「家族はいるの?」

「朝か...1人...」

「分かった。じゃあ今から家行くから安静にしてて」


~~~~~~~~~~

(リクくんが来てくれるらしい。とても嬉しい。でもデートが楽しみで寝れなかったとは言えない。なんで言えないの?)

ベッドの上で安静にしようとしてもできない。リクが来ることを考えるとよく分からない感情に包まれる。

(リクくんに会いたい)

ただそう思うだけであつくなる。きっと熱があるのだろう。


「...」


(リクくんが告白してから1週間。たった1週間しか経っていないのに色々なことを教えてくれた。お父さんもお母さんも私には笑顔で接してくれていたけど、笑顔以外の顔を見せてくれなかった。だから分からない。リクくんがどうしてそこまで私のことを考えてくれているのか)

額に手を当てながら「リクくん」と自分の耳にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。


~~~~~~~~~~

「暑い!!」

思っていた言葉が溢れた。なにせデートする予定だったショッピングモールから彼女の家までは軽く10キロはあるのだ。父の車に乗せてもらって来たが、父はそのまま仕事に行ってしまった。つまり走っていくしかないのだ。

(でも行ってどうするんだ俺。行っても彼女の迷惑になるだけじゃないのか?)

それでもリクは彼女の家に行く。自分の言ったことが嘘にならないようにするために。


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「ついた!」


あの日初めて来た時には押せなかった呼び鈴を押したが返事はない。それもそうだ。彼女は寝ているのに俺が起こしたら元も子もない。

(これ、結局彼女の迷惑になってる...)

どうにか彼女に迷惑がかからないようにしようと考える。ピッキングする?2階によじ登る?そんなことばかりが頭に浮かんだ。しかしそれらを実行することはなかった。彼女からメールが来たのだ。


玄関、開いてるよ


(熱で動けないのに玄関開けっ放しで大丈夫なのか...?)

彼女からのメール通り玄関が開いた。1度来た彼女の家はなにも変わっていなかった。他の家族がいる気がしない。この前来た時からほとんど変わっていないのだ。まるで1人暮らしのだ。だが今はそんなことより彼女の事。階段をゆっくり

そしてリクはレンの部屋の前に立った。

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