第4話 楽しさと恥ずかしさ

彼女に感情がないなら、俺が見せればいい。どういうものが嬉しくて楽しくて、喜べて悲しいのか。


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「ねぇレンさん」


学校の屋上にきて会話を始めた。まずはどの感情を教えようか。


「憐さんはどんな感情が分からないの?」

「分からない。感情が分からないから、なんて言えばいいのか」

「そっか、感情って言葉で言えないと難しいね...」


なんで感情って言葉で言いづらいのか。言葉で言えないならどうするべきか考える。


「俺が表せばいいんだ!」

「吉野くんが?」

「そう、俺が顔の表情とか気持ちを言うんだ」

「吉野くんはそんな事まで私にしてくれるんだね」

「だって、憐さんは俺の彼女なんだから」


咄嗟に言ったのが恥ずかしくなってきた。顔が暑い。


「ふふっ」

「レンさん?」

「どうしたの?」

「今、レンさんが笑った!もう出来た!」

「今の感情は何なの?」

「うーん、今のは俺の事を[面白い]って思ったんじゃないかな」

「面白い?」

「うん、相手がおかしなことをしていて、笑っちゃうこと」

「ちょっと違う、私は吉野くんがかわいいと思った」

「かわいいはわかるの!?」

「あとかっこいいも」


(え、俺の事かわいいって思ったって...めっちゃ恥ずかしい)


「でもやっぱりレンさんと一緒にいると楽しいや」

「楽しいは、どんな感情なの?」

「うーんとね、レンさんが俺と一緒にいたいならそれは楽しいからだと思う。その感情」

「もっと簡単に言って」

「俺と遊ぶのは楽しいからってこと」

「なるほどね」

「レンさん、お願いがあるんだけど」

「なに?」

「俺の名前、下の名前で呼んでくれたりしない?」

「ちょっと、いいづらい」

「お、恥ずかしくなってる」

「これが恥ずかしい?」

「そう。俺の名前をよ...」


呼ぶのが恥ずかしいって、好きになってくれてるのか...?だとしたら嬉しい。憐さんに俺の事を好きになって欲しい。


「レンさん、好きって分かった?」

「それはまだ、分からないかな」

「そっか」


でもやっぱり時間がかかりそうだ



~~~~~~~~~~

リクくんといるのが楽しい。楽しいから一緒にいる。ここまでは今の私にでも理解出来た。でもまだ分からない感情が多い。リクくんがいないところではずっと呼べるのに


「リクくん」


どうしてリクくんの前では呼べなかったんだろう。恥ずかしいはちょっと難しい。


「あ、リクくんからメール」


今週末って空いてる?空いてるならこの前のデートのリベンジっていうか、今度こそ成功させたいと思って。もしデートできそうなら連絡してね!


もちろんデートしたい。私も自分からなにかしたい。デートについて調べておこう。


~~~~~~~~~~

(今日こそデートを成功させる!)

そう意気込んで憐さんとの2回目のデートをする予定だ。

(でもレンさん、遅いなぁ)

待ち合わせを10分過ぎても連絡はない。寝坊とか?

そんなことを考えていると、憐さんからメールがあった。




ごめんなさい。体調を崩してしまったので今日はデートに行けません。本当にごめんなさい。

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