第30話 初報酬
ギルドに入ると、いつも通り受付にレオーナが座っていて、営業スマイルで俺たちを迎え入れてくれる。
「討伐が完了したので、手続きをお願いします。」
と言って、俺は捕獲した角ウサギ三匹をレオーナに見せた。
「ソーマさん、初クエストお疲れ様でした。では、条件となっている対象物の確認をさせていただきますね。」
レオーナは角ウサギ三匹を入念に確認している。これが商品になるわけだから重要な作業だ。
「はい。確かに問題はありませんが、こちらの二匹はまだ生きているのでしょうか?」
「そうですね。気絶しているだけです。足はしっかり縛ってあるので安全ですよ。あ、生きてないほうがいいんですか?」
あまり考えずにそのまま持ってきてしまったが、討伐ルールでもあるのだろうか。
「いえいえ、生きているほうが鮮度が良いので喜ばれます。生け捕りは手間もかかるし危険なので、皆さんあまりされないんですよ。」
鮮度ということは食用にでもされるのか。少し可哀そうだが、魔物は繁殖力が高く定期的に駆除しておかないと人間たちの生活が脅かされる。共存するには必要なことだ。
「それでは、これが今回の報酬の一万五千ルギアになります。それと今回のギルドポイントは討伐時間が早かったことと生け捕りに対するボーナスが付きますので、百八十ポイント付与されます。三名なので六十ポイントずつですね。」
「ありがとうございます!また宜しくお願いします。」
なるほど。そういうシステムになってるんだな。
そう言うとレオーナはにこやかにお辞儀した。
俺たちは三人で椅子に座り、今回の報酬をテーブルの上に広げる。レオーナは機転を利かせ、分けやすいように大銀貨三枚で渡してくれていた。
「報酬は一万五千ルギアだから、一人五千ルギア。大銀貨一枚ずつだね。」
俺が大銀貨を一枚ずつ渡そうとすると、リッシュが機先を制した。
「いえ、私たちが倒したのは一匹なので、一枚でいいです。残りの二枚はソーマさんが受け取ってください。」
と思いがけないことを言ってきた。
「それは悪いよ。俺はいきなり参加させてもらった立場だし。」
それでもリッシュは首を横に振る。結構律儀な男なんだな。若いのに大したもんだ。
「本当にいいの?あんなに大変だったし、フローラさんも欲しいものあるでしょ?」
「私は全然平気ですよ。ソーマさんがいてくれてホントに助かりました!ありがとうございました。」
フローラも笑顔でそう言ってくれる。
「そうですよ。いろいろ勉強になったし。今日は楽しかったです。」
なんて良い兄妹なんだ。涙が出そう。
「分かった。それじゃあ今回はお言葉に甘えていただくことにするよ。ありがとう!
また一緒にやろう!次の報酬はあげるからね。」
こうして俺はいきなり一万ルギアのお金を手に入れることになった。
今日はゆっくり休めそうだ。
◇◇
二人と別れた後、俺は噴水広場まで来ていた。時刻は午後五時を回っている。
途中で買った焼きバード二十本を頬張りながら、これからのことを考えた。
とりあえず今日はご飯も食べたし、あとは宿屋にでも泊まって1日の疲れを癒すとするか。
焼きバード二十本で二千ルギアだから、あと所持金は八千ルギア。
そこそこの宿には泊まれるな。温泉に温かい夕食、どんな料理が出てくるんだろう。楽しみ!
そういえば、イベリアとリザ吉は大丈夫かな。自分のことばかり考えていたけど、夕食ぐらいは三人で食べたい。
俺は思念で問いかけてみた。
が、二人とも全く問題ないそうだ。
食事は適当に済ませているし、魔族は宿に泊まるという習慣もなく、好きなときに好きなところで休むだけのようである。ちょっと残念だ。
あの二人ならどこでも安心だが、リザ吉はともかくとして、イベリアはどこで休んでいるんだろう。
道端に寝転んでいる訳でもないと思うんだが。。謎だ。
それと、何気なく今日のギルドの話をしたところ、イベリアがかなり食いついてきた。
なんでも、人間の言葉が理解できるのは一部だけなので、ギルドのことなどは今まで良く分からなかったらしい。面白そうだし、お金も貰えるということは知っていたようだが、入ってはみたものの、何をしていいか分からず言葉も通じない。それ以来ずっと遠ざかっていたようだ。
今すぐ行こうと騒いでいたが、今日はもう遅いので明日にしようとなだめ、なんとか納得させた。
詳しくは教えてくれないが、何か欲しいものがあるようだ。
昼間見たとき服屋でフリーズしてたのはそのせいかな。俺に言ってくれれば買ってあげるのに。
俺は明日に備え、早めに宿屋で休むことにした。
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