第26話 冒険者ギルド
信じられないといった表情で、テイマーにあんな能力補正あったかしら、などとまだブツブツ言っているレオーナに替わり、ギルド長のオーウェンがギルドについて説明してくれることになった。
「さっきはスゴかったな!あ、失礼。あんな光景はなかなかお目にかかれないから驚いたよ。俺も昔は冒険者だったが、素手であんな壊し方するのは初めてだよ。」
オーウェンもまだ興奮冷めやらぬといった感じのようだが、相変わらず笑顔は絶やさない。
「私はテイマーなので、武器が使えない分、打撃や腕力をメインに鍛えていたんです。」
事実とはだいぶ違うが、あながちそんなに間違ったことは言ってないと思う。
「面白いのが来たもんだ。それじゃあギルドについて、簡単に説明させてもらうよ。まずはこれがギルドカード。ランクはFだ。」
俺はギルド長から緑色のカードを受け取った。
「もう知ってるかもしれないが、冒険者ギルドは何でも屋みたいなもんだ。いろんな依頼者が自分では解決できないことや困っていることなんかを頼みにやってくる。依頼のあった案件は俺の冒険者の勘で難易度に応じてランク分けしている。ここにあるのが、その依頼案件。通称クエストだ。」
そう言うと、オーウェンは左腕を上げ、さっき俺が見ていたボードをパンっと軽く叩いた。
そのあともオーウェンの説明が続いたが、まとめると次のような内容だった。
①
冒険者ランクもクエストランクもAが一番高く、Fが一番低い。
クエストをクリアすると報酬とポイントが与えられ、ポイントが一定値に達すると上のランクに昇格する。
カードの色も変わるそうだ。
Cまでは簡単なクエストでもコツコツ続ければ、時間はかかるが到達できる。
B以上はポイントを積み上げただけではダメで、高難度のBランク指定以上のクエストを数回クリアしないといけない。
カルカスではDまでのクエストしか出たことがなく、Bランククエストは国をあげて取り組むレベルの案件。Bランク冒険者は国内でも数えるほどしかいないとのことだった。
ちなみにAランククエストは今まで一度も出たことがない。
②
クエストはどれでも受注できるが、クエストランクと同じ冒険者ランクの者が一人はいないと受注できない。要はDランククエストをやりたいならDランクの冒険者が一人はパーティーに必要ということだ。
なので、ソロの場合は自分のランクまでしか受注できない。また、複数人の場合は報酬もポイントもパーティー内で分配される。
③
クエストには受注からの有効期限があり、クリアが早いほどポイントアップする。有効期限があるのは実力の適正な把握とクエスト途中の不慮の事故で連絡が取れなくなる場合があるからだ。死亡も含まれる。
達成できなくても報告すればペナルティはないが、有効期限から一ヶ月以内に報告しない場合は免許停止。理由次第では元に戻るが、悪質な場合や半年以上報告のない場合は免許が取り消される。
他にも虚偽の登録や虚偽の報告はダメだとか、信義則に反することはダメだとか、いろいろあったが、ざっとそんな内容だった。
「そして、、」
一通り説明が終わると、オーウェンは依頼案件掲示板(クエストボード)の更に右側にある黒い球体のところへ歩いていった。
「これが冒険者のすべての情報を記録している魔水晶だ。今までのクエストの記録や現在のポイント、全国ランキングが表示される。ちょっとここにカードをかざしてみてくれるか?」
俺は言われた通りにギルドカードを魔水晶にかざした。
名前:ソーマ 冒険者ランク:F
ギルドポイント:0ポイント
次のランクまで500ポイント
全国ランキング:52,632/52,632
俺の現在の状態が表示されている。その他にも過去の実績やペナルティなんかも記録されるようだ。おそらく空間魔法が付与されているんだろう。
「この魔水晶は国内すべてのギルドで情報共有されている。悪いことをすれば、どこでもバレるし、自分の順位も一目で瞬時に分かる優れものだ!
ランクが上がると直接オファーが来たり、たまにランク限定のクエストなんかもあるぞ。」
と誇らしげな表情でオーウェンは言った。
「なるほど。よく分かりました。詳しいご説明ありがとうございます。私も早速クエストを請け負いたいと思っているんですけど、何かありますかね?」
1人ではランク的にオーク討伐は無理のようだし、とりあえず何でもいいから日銭を稼ぎたい。何か紹介してくれないかな。
「うーん、いま君ができるクエストはFだけだからなぁ。DとEのクエストは今のところ他の冒険者の応募もきてないし。」
意外と仕事って少ないんだな。いつもこんな感じなんだろうか。
「Fランクのキュア草採集の本日受付分も終了してるから、また明日来たらどうだ?
それか、どうしても今日というのなら、午後二時にFランククエストの角ウサギ討伐を受注したパーティーがここに集まるようだから、飛び入りで参加できるか聞いてみたらいい。」
なかなか有益な情報じゃないか。オーウェン、グッジョブ!
「ありがとうございます。二時頃にまた顔出してみます。それと、ちょっとお聞きしたいんですが、、」
俺はこの世界の貨幣価値のことが気になっていたので、少し小声でオーウェンに質問してみた。
「銀貨とか銅貨なんかがあると思うんですけど、あれは一枚何ルギアになるんでしたっけ?」
オーウェンは目を大きく見開く。
「なんだ?!そんなことも知らないのか!金銀銅の小貨がそれぞれ一万、千、百、大貨が五万、五千、五百だろぉ。」
「あ、そうでしたね!思い出しました。」
せっかく小声で聞いたのにそんなに大きな声で言わなくてもと思ったが、なるほど、大貨と小貨があるのか。
大貨のことは知らなかったけど、だいたい思ってた通りだな。
イベリアが持ってたのはどっちだったっけ。あまり大きそうに見えなかったが。
「硬貨にも刻印されてるから見れば分かるよ。」
「分かりました。ありがとうございます。」
時計の針はちょうど十二時を指していた。あと二時間。もう少し町の中を散策してみるか。
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