第25話 ギルド加入試験②

奥の部屋からさきほどの女性スタッフと一緒に大柄で口髭をたくわえた男性が出てきて言った。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。私はギルド長のオーウェンです。よろしく。適性試験を受けたいというのはあなたですか?」


「はい、そうです。よろしくお願いします。」


このギルド長も女性と同じくにこやかに対応してくれる。なかなか感じのいい接客だ。


冒険者たちは時には自分の命を投げ打ってまで依頼されたクエストに挑んでいる場合もある。そんな人たちに敬意を払うのは当然なのかもしれない。


「分かりました。屋内では危険なので、試験は屋外で行います。そこの扉から外に出てください。」


「はい。」


俺は言われるがまま、その扉から外に出た。


試験場所は広めの庭のような感じで、周囲が塀で囲われていた。


「それでは、試験を始めさせていただきます。私は当ギルドスタッフのレオーナと申します。よろしくお願いいたします。まず、お名前を教えていただけますか?」


「ソーマです。」


「ソーマさんですね。かしこまりました。」


ギルド長から受付の女性スタッフにバトンタッチしたようだ。ギルド長は未届け人といったところか。


レオーナさんね。

これからもお世話になるだろうから、覚えておこう。


ギルドの建屋を見ると、さっきまで座っていた冒険者たちがニヤニヤしながら窓越しにこちらを見ている。


高みの見物でバカにしようとしてるんだな。


「試験は物理攻撃判定と魔力判定の二種類ありまして、両方ともステータス値が一定以上であればクリアできるようになっています。だいたいの目安は攻撃力か魔力が20くらいですね。どちらか一方の試験を選んでいただきクリアできれば合格です。両方クリアする必要はありません。例えば剣士の方は物理攻撃判定、魔法使いの方は魔力判定を選択されることがほとんどです。」


「判定方法は至ってシンプルでして、物理攻撃の場合はあちらに置かれている石に少しでも傷をつけられれば合格、魔法攻撃の場合は二十メートル離れたこの位置から、こちらにある的に魔法を当てられれば合格です。破壊する必要はありませんので、攻撃魔法でも回復魔法でも当てるだけで構いません。」


「ソーマさんは武器を持たれていないようですので、魔法攻撃ということでよろしいですか?」


レオーナは手元のボードのようなものを見ながら言い終わると、俺の方を向いた。


うーん、どちらでもいいんだが、俺の職業はテイマーということになっているからなぁ。


物理攻撃のイメージかな?!

的に当てるだけっていうのも魔力の加減が難しいし。

壊していいっていうんだから物理攻撃でいくか。


「物理攻撃でお願いします。」


「物理攻撃ですか?承知しました。ソーマさんはどのようなご職業なんですか?」


武器を持っていないのが、不思議なんだろう。


「私はテイマーです。」


「テイマーですか?!珍しいですね。ただ申し訳ございませんが、あいにく魔物はお使いになれないんですが。」


やはりそうなのか。最初からリザ吉に手伝ってもらうつもりはなかったが、テイマーには少し不利なんじゃないか。まぁいいんだけど。


「ええ、大丈夫です。あの石を割ればいいんですよね?」


「そうですが、、」


何か言いたそうなレオーナを残して、俺は石のあるところまで歩いていき、石の上に手を乗せた。

なるほど。魔法で少し硬く強化されているようだ。付与魔法かな。


俺は指に力を入れる。


すると、石はガラガラと音を立てて崩れていった。


「えっ!ちょっ、は?、なんで?」


さっきまで丁寧に対応してくれていたレオーナが取り乱している。

座って見ていたギルド長もいつの間にか立ち上がっていた。


「失礼しました。この石は魔力が込められていまして、普通は傷一つ付きません。冒険者の方が攻撃しても少し欠けるか、良くてひびが入る程度なんですけど。」


レオーナは何をしたという表情で俺を見ている。


高みの見物を決め込んでいた冒険者たちも状況が把握できず、窓にへばりついていた。


こうして俺は無事に加入試験を突破することができた。

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