第24話 ギルド加入試験①

冒険者ギルドの中はログハウス調の内装になっていた。


入り口の両脇にはいくつかのテーブルと椅子が置かれ、冒険者たちの待ち合わせや作戦会議などに使われていそうな雰囲気。


いまも数人の冒険者たちが椅子に座っている。目を閉じて腕を組んでいるもの、俺の顔を見て残念そうにしているもの。誰かとの待ち合わせだろうか。


視線を奥に向けると、正面左側には受付らしきカウンターがあり、若そうな女性スタッフがにこやかに俺に会釈してくれた。


その右隣りの正面中央にはいくつかのボードが設置され、何か掲示されているようだ。俺はとりあえずボードに近寄ってみた。


ボードを近くでよく見てみると「依頼案件」と書かれている。


現在依頼がきているクエストの募集案内みたいだな。


どれどれ、どんな依頼があるのかな~。

クエスト!

なんだかワクワクする単語だ。


お金も貰えるし冒険者にとっては生命線となるものだな。


募集案内に記載されているのは案件のタイトル、クエストランク、報酬額、有効期限と具体的な内容や達成条件など。


いまある依頼案件は、、


ランクF キュア草採集

ランクE 要人警護

ランクD オーク討伐


の3つだった。


え~と、一番難しそうなオーク討伐だと報酬は、、、


じゅ、十万ルギア!

焼きバード千本分ではないか。


この世界の相場はさきほど把握した。


十匹狩ったら一万本。ぐふふ。

俺は無意味な皮算用をしつつ、左の受付に座っている女性に話しかけた。


「こんにちは。オークを討伐したいのですが。」

単刀直入に伝える。


「え、はい。それではギルドカードのご提示をお願いします。」

女性スタッフは一瞬困惑した表情を見せたあと、そう言った。


ギルドカード?


当然そんなものは持っていない。

登録が必要なのか?結構しっかりしてるのね。


俺が知っている世界よりだいぶ細かな設定があるようだ。


「すみません。カードは持ってないです。ギルドに来るのは初めてなので、システムがよく分かってないんですが、登録か何か必要なのでしょうか?」


後ろから冒険者たちの失笑が聞こえる。

くそぉ、お金に目がくらんで冷静さを失っていた。


「初めてでいらっしゃいますね。そうしますと、冒険者ギルドに登録するための適正試験を受けていただく必要があります。」


適正試験!そんなものまであるの?!

とりあえず、受けないことには始まらないからな。


「そうでしたか。失礼しました。すぐにでも試験を受けたいと思っているんですけど、どうすればいいですか?」


「かしこまりました。試験はいつでも受験することが可能です。ある程度の能力がないと危険な依頼もございますので、皆様に実施いただいております。準備しますので、少々お待ちください。」


そう言うと女性スタッフは奥の部屋へと入っていった。


どんな試験だろう。簡単なのだといいけど。この世界の細かいことはあまり知らないからな。筆記試験なんて出されたら受かるか不安だ。


後ろにはやりとりの一部始終を見ていた冒険者たちがまだ残っている。目が合うのも嫌なので、俺は受付を向いた姿勢のまま戻ってくるのを待っていた。

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