第22話 先立つもの

家族宣言も無事に終え、俺たちは再び歩き始めた。


そういえば出てはみたもののどっちに向かえばいいんだろう。とりあえず道っぽいところをまっすぐ進んで来たけど、イベリアなら何か知ってるかな。


「イベリアはいつも洞窟を出た後、どこに行ってるの?」


「私が行くのはカルカスって町だけだよ。この道をずっとまっすぐ」


そういうとイベリアは前を指差した。

町か。イベリアは洞窟を出て町に行っていたのか。


なるほど。確かに冒険っぽくなってきたぞ。町といったら美味しいものや面白いものもたくさんありそうだ!


ん?


ということは、やはり当然あれが必要なんだよな。俺に素朴な疑問がわいてくる。


「町に行くってことはさ。買い物とかするんだよね??それにはやっぱりお金がいるのかな?」


イベリアは無表情でポケットに手を突っ込みごそごそと何かを探している。


「これのこと?」


イベリアはポケットから五枚の硬貨らしきものを出した。

真っ白な小さい手のひらに銀色三枚、銅色二枚の硬貨のようなものが乗っている。


「お金持ってるの?!なんで?町で仕事でもしてるとか?」


魔王のポケットからお金が出てきたのにも驚いたが、まさか働いてる?この世界の魔王はそんなことまでしてるのか?


「しごとって何よ。んなことするわけないでしょ!お金なんて洞窟で冒険者の周りにいっぱい落ちてるじゃん。私はたまたま拾ったら町に行ってるだけだよ。」


はは~ん。そういうことか。


おそらくイベリアは町でお金と商品を交換しているところを目撃。


洞窟に戻ると力尽きた冒険者なんかからお金がこぼれている。


ここにあるじゃ~ん。

あれも買っちゃえ。

これも買っちゃえ。


おそらくこんなところだろう。

あのポケットじゃ大した量は入りそうにないが。


お金は拾って使うものではないんだよイベリアくん。

基本的なところが欠落しているな。


といっても、俺も服を漁っているわけだから偉そうなことは言えないんだが。


「そっかそっか。」


この世界で法律だの常識だのを振りかざしたって無意味なことは十分理解している。この程度のことは大した問題じゃないだろう。


それはいいとして、貨幣価値としてはどんなものなのかな。


「イベリアは町でどんなものを買うの?いま持ってるお金でどれくらい買えるのかな?」


「んー、買うのはだいたい服とか食事だね。適当に使ってなくなったら帰るだけだから分かんないよ。」


魔王なのに結構女の子らしいものが好きなんだな。


いちいち計算しながら買ってそうにも見えないしそんなもんか。少しは飲み食いできるくらいあるんだろうか。


「魔族ってトカゲの丸焼きとか食べるのかと思ったけど違うんだね。」


「なぐっていい?」


「ご、ごめん」


どうやら俺の勘違いだったようだ。

魔族ってそういうもんなんじゃないのか。

俺もコウモリの時はトカゲ旨かったし。魔族じゃないけど。


人間の状態でイベリアに殴られたら本当に死んでしまうかもしれない。気を付けないと。

こわっ!


「それに、あんた絶対私のこと当てにしてるでしょ。先に言っとくけど、これは私が手に入れたお金なの。あげないからね!」


「いや!当てにしてるわけじゃないよ!どんなもの買えるのかなと思って。。」


とはいったものの、ホントは少し当てにしていた。

食事くらいいいじゃんか!

と思ったが、町に着いたらそこら辺も考えないとな。

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