第21話 外界
洞窟を出ると目の前には森が広がっていた。
入口の周囲十メートルほどは半円状に整地され、切り株や座りやすそうな岩もあり、数人の冒険者たちが何やら話をしている。
今日の洞窟攻略の作戦でも練っているのだろうか。
俺たちが通りすぎようと少し近づいたところで、冒険者の一人に気づかれた。
「うあぁ~、ファイアリザードだ!」
その声を聞き、他の冒険者たちも驚きの声をあげ大きく後ずさる。
そうなるよな。
この洞窟にやってくる大抵の冒険者にとってファイアリザードは最初に立ちはだかる強敵。
討伐できたパーティーの方がまだ少ない。
それが急に目の前に出てきたのだから、驚くのも当然だろう。
木の後ろに隠れ顔だけ出してこちらを凝視しているものもいる。
本当にああいう隠れ方するもんなんだなぁ。
驚かすつもりはないが、こればかりはどうしようもない。サラマンダーじゃないだけマシだろう。
空間魔法の収納スキルというのもあるが、どうせいつかは分かること。そこまでする必要はないし、リザ吉が可愛そうだ。
あまり目立ちたくはなかったが、いきなり注目されてしまった。
当の本人のリザ吉はというと、これまた初めての外の世界に戸惑って、キョロキョロと辺りを見回している。
冒険者たちにとっては獲物を物色する魔獣のように写っていることだろう。
とりあえず、俺たちは足早にその場を立ち去ることにした。
◇◇◇
頭上では木々が風に揺れ、木漏れ日が俺たちの足元を照らしている。
後ろからのひしひしとした視線がようやく無くなり俺たち三人だけになったところで、俺は重要なことを思い出した。
このまま旅を続けていくのであれば、これは二人にまず確認しておかなければならない。
「あのさ、これから一緒に行動する上で、まず確認しておかないといけないことがあるんだ。」
二人がこちらを振り向く。
「実はいま二人には眷族化っていう俺のスキルが掛かってる。これの一番のメリットは直接会話しなくても思念というものを使って頭の中で話ができることだ。」
そう言って、俺は試しに思念で話しかけてみた。
「聞こえるでやんす」
「そうね」
「リザ吉は知ってただろうけど、イベリアは初めてだよね。」
イベリアは少し怪訝そうな表情をしていたが、それほど驚きは無さそうだ。
「そして、、実はこれが何故できるかというと、眷族化っていうのは俺と血縁関係を結ぶということなんだ。」
「ただ、これは俺も最近分かったことなんだけど、眷族化したからといって、俺の指示に強制力もないし、主従関係なんかもない。基本何も変わらない。嫌になったら解除することもできる。」
実際にはスキル効果に書いてあったように相手との信頼関係が構築されるらしいのだが、それはあえて言わなくてもいいだろう。
「端的に言うと兄弟とか親戚みたいな感じかな。先にやっといて申し訳ないけど、俺はこれからも三人で協力していきたいんだ。だから、このまま眷族化を続けてもいいかな?」
一通り言い終えて俺は二人に問いかけた。
「もちろんいいでやんすよ。ソーマさんがいなかったらとっくに死んでましたから!」
リザ吉はあっさりと快諾してくれた。
問題はイベリアなんだが、、
「難しいことは良く分からないけど、便利だしいいんじゃないの。大して変わらないなら、どっちでもいいよ。」
あまり興味がなさそうな雰囲気ではあるが、イベリアもひとまずOKか。良かった。
それならば、、
「よし!ということで、今日から俺たちは家族だ!改めてよろしくね。イベリア!リザ吉!」
俺は最後に一番言いたかった言葉でまとめに入った。
「はあ、かぞくぅ?」
「へぇ」
二人は明らかに引いている。
イベリアは頭のおかしい痛いやつを見るような目で、一人でニヤつく俺を見ている。だが、そんなことは気にしない。
家族!
良い響きじゃないか。
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