第20話 第一階層

三人が去ったあと、俺はイベリアに話かけた。


「何か言うんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたよ。」


あのままヴァンパイアはこの人ですなんて言われたら、たまらないからな。


「あんたのあの時の顔、よかったよ~」

イベリアは面白そうに笑っている。


くっ、このお転婆魔王めが!


「でも、思ったより大人しくしてたじゃん。」


俺も少し嫌味っぽく言い返してやった。


「だって、あの子。ずっと見てくるんだもん。私だって人間に会うときはバレないように気をつけてるのよ。」


「人間の言葉も分かるの?」


「ある程度はね。自然と覚えた。」


イベリアも外に出るときはそれなりに考えて行動してるんだな。


リザ吉は人間の言葉が分からないので、ずっと暇そうに寝そべっている。




そして、、


俺たちはとうとう一階に到着した。


思えば全てはここから始まったのだ。


床は真ん中が道のように整備され、両脇の上部には等間隔に松明が灯っている。


「こんな造りになってたんだな。」


久しぶりに嗅ぐ松明の指し油の匂い、生暖かい風の感触。

あの頃は目も見えず、食べるだけで精一杯だった。


コウモリや動物の姿はない。俺もあの岩の隙間に身を潜めていたな。


まさかこんな形で戻ってくることになるとは想像もしていなかった。


外にはどんな世界が待っているのだろう。


入口が近づいてくる。

太陽の眩しい光が初めて俺の肌に降り注ぐ。


大丈夫だ。


太陽の光は俺に優しい温もりを与えてくれた。見た目だけではない。

今はホントに人間になっているようだ。


懐かしく心地よい。全身鳥肌が立つ感覚。


俺は立ち止まって目を閉じ、しばらく久方ぶりの陽光を味わった。

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