第17話 変身
俺たちは地下九階まで戻ってきた。
イベリアの話によると彼女は昔、シルフだったらしい。シルフというのは人間の少女に似た精霊だ。それならこの見た目も頷ける。シルフが魔王になるとは、相当能力が高かったんだな。
過去のことはめんどくさいのか知られたくないのか話したがらなかったので、あまり詮索しなかった。
シルフといえば風の精霊、リザ吉も火の精霊サラマンダー、かなり強力なパーティーになったもんだ。
第六階層からここあたりまではそれほど強い敵がいる訳ではないので、そろそろ人目に付く可能性がある。
念のため人間になっておこうかな。
俺は恒例の変身イベントを経て、人間に変化した。
翼や身体の模様が無くなり全体的に小さくなった。
よく見慣れた手足。なんだか懐かしい感覚だ!
髪は銀髪のままだが、また短くなっている。
「あんた、人間にもなれるのね」
イベリアが物珍しそうな顔で俺を見る。
「イベリアとの戦いで進化したからね。変身できるようになったんだよ。」
「私のおかげじゃん。」
イベリアは得意気な顔でそう言った。
俺の周りに集まるのはなんか調子のいいタイプが多い気がするんだが。
それにしても人化するとステータスはかなり落ちるようだ。
今の状態ではリザ吉より劣っている。
ソーマ
種族:ヴァンパイア 種目:人間
体力:455/455
魔力:127/127
攻撃:115
防御:108
知力:122
速度:116
【基本スキル】創造主の記憶
【種族特殊スキル】かみつき・吸血・眷族化・超音波・共振 ・大気振動
でも、やはりスキルは変わってないな。
先天的資質である基本スキルは、ランクアップや上位スキルへの移行はあっても、よほどの事がない限り変化しない。
リザ吉は種族まで変化したので、基本スキルも変わっていて驚いたが。
普通の人間は進化や種目変更がないため、飛躍的にステータスがアップすることはない。
地道に鍛練を積んで少しずつ能力を上げていくしかないのだが、その代わり人間には職業がある。
人間にとって最も大きな能力補正が職業だ。
十五歳の時に天啓の儀が行われ基本スキルが付与されることで自ずと職業も決定するようだが、一度決まるとあまり変わることはないらしい。
その後、鍛練を続け、適性条件を満たした場合には上位職への転職も可能だ。
転職すると、ステータスが上昇し、基本スキルがクラスアップしたり、新たに付与される場合もある。
上位職は色々とあって、複数の上位職の適正条件を満たしていれば、その中から自らなりたい職業を選択できるようだ。
当然、俺に職業はない。
ただ、俺が人間の時に名乗る職業は考えておいた方がいいだろう。
天啓の儀ができるのかは知らないが、人間に扮している以上、職業は設定しておいた方が無難だと思う。
といっても何がいいかなぁ。
その時俺は、ふとさっきの戦いを思い出した。
「そういえば、戦ってるときにイベリアが打ってきた光の玉みたいのはなんていう技なの?」
ファイアーやブリザードなどの属性魔法は敵によって威力が異なってしまう。
イベリアが使っていたのは威力もあって無属性のようだったし、俺も基本攻撃として利用できないかな。
「玉のこと?」
「そうそう!あの光の玉みたいなやつ。」
エネルギー弾とかそんな感じかな。
「玉だよ。」
「玉??それスキル名?」
そんなスキルあったっけか?
「スキル名なんて忘れちゃった。ずっとそう言ってきたから。名前なんてなんでもいいでしょ。」
玉、玉、、
俺はスキルリストを調べてみたが、やはりそんな名前のスキルはなかった。そりゃそうだ。
よく見たらイベリアのステータス画面にちゃんと書いてあった。
あれの正式名称は魔弾。
魔族の種族特殊スキルだ。
敵の場合は種族特殊スキルが見れないんだな。
広範囲攻撃のほうが魔弾拡散ってやつかな。
大量の魔弾を一気に放出する技らしい。
種族特殊スキルではないので、魔力を消費するが、あれだけ広範囲に無数に打たれたら何発かは確実に被弾するだろう。
イベリアに教えたら、ふ~んだそうだ。
確かに名前なんて何でもいいのかもしれないが、興味無さすぎやしないか。
魔弾を打てる職業なんてないし、考え直しだな。
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