第13話 魔王との対決①
第三十階層に到着。
今までの洞窟感満載な造りと違って、ここはなんだか宮殿のような人工的フロアだ。
装飾が彫られた柱が等間隔に並び、一番奥に大きな台座と椅子がある。
魔王は足を組み頬杖をつきながら、その椅子に座っていた。
「もうここまで来るなんて早いわね。」
あれが魔王?!
よく目を凝らして見てみると、明らかに少女のような雰囲気だ。小さな身体に薄水色の長い髪、白いワンピースのようなものを着ている。とても魔王には見えない。
物理防御力が高い上に魔法にも耐性あり。しかも自然治癒。うーん。どうしたものか。
「暇だから相手してあげる。」
「はじめまして。イベリアさん。」
俺はとりあえず話しかけてみた。
「え!あんた、魔族の言葉が分かるの?しかもなんで私の名前知ってんのよ。」
名前は鑑定すれば分かるのだが、実力差があればあるほど制限がかかる。
彼女と俺の力にそこまで大きな差はなかったから、確認することができたようだ。
「ええまぁ、色々ありまして」
「しかも、あんた人間じゃないのね。羽なんか生やして何者??」
「ヴァンパイアのようですよ。」
「ヴァンパイア~。何それ!初めて聞いた。私も今まで色々見てきたけど、そんなやついなかったよ。」
「イベリアさんは別の場所にも行くんですか?」
「ん?そうよ。こんなとこにいたって誰も来ないじゃない。私だって結構忙しいのよ。」
さっきは暇だと言ってなかったか。
まぁ、これならフラっとどこかへ行ったところで人間にしか見えない。
魔王なのに外を出歩くなんて、どういうことなんだ。他のボスたちは大人しく冒険者が来るのを待っていたというのに。
「その通りかもしれませんね。私以外は当分来れないと思います。」
「でしょ。だからここにずっといたって意・味・な・い・の。魔物たちがザワついてるから、何かと思ったら変なやつが地下に向かってるっていうんで、待っててあげたわけ。そんなことより、準備はいいのよね?」
早く戦いたくてウズウズしているようだ。魔族なだけあって戦いが好きなんだな。
「ええ。」
「楽しませてよ。」
イベリア
種族:魔王 種目:通常種
体力:2100/2100
魔力:355/355
攻撃:360
防御:415
知力:271
速度:353
【基本スキル】魔法攻撃耐性 cl.5 ・自然治癒 cl.3
魔王はそう言い終わるや否や、あっという間に距離を詰めてきた。
今までの魔物とは段違いのスピードだ。
ステータスからいっても物理攻撃が主体なんだろう。
物理攻撃無効は俺とリザ吉に付与しておこう。
《物理攻撃無効》
物理的な攻撃をほぼ無効化する。
■スキル効果:物理攻撃軽減率78~82%
■消費魔力:75
思ったより軽減率が低いな。
俺の能力が低い?!それとも魔王の攻撃力が高いからか。
まず俺は魔王に共振をかけてみた。
一瞬動きが鈍くなったが、やはり強い相手にはあまり効果がない。
魔王が高速でパンチやキックを繰り出す。この体のどこにこんな力があるんだろう?!
一発一発が重く、ガードするのがやっとだ。これでも彼女にしては、小手調べ程度か。
一歩で数十メートルの間合いを詰めてくる。まるで飛んでいるかのような動き。
こちらが反撃すると後方へ大きくジャンプしながら、光の玉のようなものを打ってくる。
炎でもないその不思議な玉は接触すると爆発してダメージを受ける。
何属性なんだ?!
攻撃をなんとか避けながら俺は戦略を考えていた。
リザ吉はさっきから魔王の気迫にビビりまくりで奥の壁にへばりついている。
肝心なときに役にたたないなぁ。
俺はリザ吉に合図を出し、ファイアーブレスで援護射撃するよう指示した。
俺も接近戦では打撃、中距離では氷魔法で応戦するが、自然治癒が思ったより早く、あまり体力を削れていない。
「なかなかやるじゃん!」
魔王はまだ余裕そうだ。
物理防御も魔法防御も高いとなると、どうしたものか。体力もかなりあるし。
俺は昨日のスキル一覧を思い出していた。
魔王だから弱点は聖魔法かな?!鑑定では弱点らしいものは表示されていなかったが、とりあえず少し強めの魔法を打ってみよう。
≪ホーリーアロー≫
[属性]聖 [GRADE]3
複数の聖なる光の矢を放ち攻撃する。
■消費魔力:50
上空が輝き薄暗い洞窟に光が差す。光は形を変え、複数の光の矢となって魔王に突き刺さった。
「いた~い。なにすんのよっ!」
そこそこ効いたようだが、弱点というわけでも無さそうだ。魔法攻撃耐性は全般か?!
やっかいだな。
うーん、とりあえず魔王の絶え間ない攻撃で体力も削られてるし、早めの回復。
打撃攻撃に加え、こちらが少し距離をとると光の玉を打ってくる。攻撃に切れ目がない。
こちらも応戦してダメージを与えてもジワジワ回復していってしまう。
と、
その時、急に魔王の動きが止まった。
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