第11話 火の精霊

地下二十階。


今までの快進撃の勢いで大した準備もせず、そのまま突撃してしまったが、ここの守護者は火の精霊サラマンダーだった。


体長はリザ吉より二回りほど大きい。羽を広げたら七~八メートルくらいはありそうだ。


翼からは絶えず炎が噴き出している。


こりゃあ、リザ吉のサポートはほとんど期待できないな。


あんなにやる気満々だったリザ吉は完全にビビりまくっている。


ここは氷魔法主体で攻めるしかないか。


「リザ吉は無理しなくていいよ。ここは俺が戦う。」


「すいません。お願いしやす!」


と言い残し、リザ吉はあっという間に壁際まで下がってしまった。


サラマンダーがこちらを振り向く。


サラマンダー   

種族: 精霊  種目: 通常種 


体力:690/690 

魔力:88/88


攻撃:181

防御:175

知力:78

速度:140


【基本スキル】炎攻撃 cl.3・炎無効化


いきなりのファイアブレス。

突進しながらの広範囲攻撃をかわすのは少々しんどい。

空も飛べるから尚やっかいだ。


避けたつもりだったが少し体力を減らされてしまった。


ここはあえて俺も同じ属性になるのが一番だな。


≪炎無効化≫

炎による攻撃をほぼ無効化する

■スキル効果:炎攻撃軽減率92~99%

■消費魔力:50


無効といってもダメージ0という訳ではないのか。


俺はまず炎無効化と魔力転換を発動した。


その間も立て続けにファイアブレスを打ってくるが、すでに俺には効かない。ほぼ、だが。


すると、サラマンダーも物理攻撃主体に変更してきた。俺のスキルに気付いる?!


えーと、アイスストームの消費魔力は、、、60!


前よりもだいぶ増えている。

個体変化すると魔力の消費量も変わるんだな。

威力も違っているのだろうか。


とりあえずアイスバレットで応戦。

三発打ってみたが、二発かわされてしまった。

身体がデカい割に機敏な動きだな。俺が下手なだけか。


サラマンダーはファイアブレスを煙幕のように使い、直接攻撃を仕掛けてくる。


物理攻撃無効を使ってもいいけど、そこまで苦戦はしないかな。


この世界ではある程度ダメージを受けたり回復した方が最大体力や防御のステータスが上がりやすい。


最初からガチガチに付与魔法をかけてしまうと知力は増えるが、他の能力があまり伸びないのだ。


攻撃用に魔力も温存しなければならないから、やたらとスキルを使えるわけでもない。


やはりここは弱点の氷魔法アイスストームを使いたい。


けど、確実に当てたいな。


無理しなくていいなんて格好つけてしまったが、俺はリザ吉に合図を送りサラマンダーの気をひかせるよう指示した。


最初は無理無理と顔を横に振っていたが、しぶしぶ攻撃を開始。


炎攻撃は効かないが、サラマンダーがリザ吉に少し気を取られている隙に、俺は死角に移動した。


よーく狙いを定めて、


「アイスストーームッ!」


声に出したところで特に威力は変わらないんだが、どうしても出てしまう。

気分の問題だ。


氷の竜巻がサラマンダーを襲う。


なんとか左翼に命中させることができた。


凍って動きが止まっているうちに、さらに二発のアイスストームを立て続けに発射。


二発ともなんなく命中し、サラマンダーは動かなくなった!


「おつかれ!リザ吉。助かったよ!」


「テスターさん、さすがです~!とりあえず早く出ましょう。」


魔法のせいで洞窟は急速に気温が下がっている。


リザ吉は寒そうにさっさと階段を下りていった。


翼を広げ氷漬けになったサラマンダーはなかなかの迫力だ。


「眷族化しても良かったかなぁ」


あまり余裕もなく一気に凍らせてしまったことを少し悔やんだが、炎攻撃の仲間はいるのでよしとするか。

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