第5話 もやり



 食パンは都雅の手作りだし、食材も彼が買って来てくれたけれどそれでも、人生初の料理。人生初の手作りサンドイッチは、なかなかの出来だったのではと満足しながら両手で持ち上げたサンドイッチを見ていたのだが。

 ふと。我に返ったのだ。

 渡した時に、浅葱はどんな反応をするのか。と。

 五年間。仕事も私事もほぼほぼ不干渉で、食事も洗濯も掃除も互いに自分のことは自分でしていたのだ。

 急に干渉してどういうつもりなのか。

 そう問われたとしたら、どう答えただろうか。



 サンドイッチが、クッキーが、ピザが、シチューが、ヤサイズが食べたいと、独り言が時々聞こえてきて、作る気力がないのだろうから、じゃあ代わりに作ろうかと気紛れを起こしただけだ。

 五年間一緒に過ごしてみて、多分、これからも長い付き合いになるだろうと予想したので、今までありがとう、これからもよろしくとの伝言を込めてみたかっただけだ。

 少し。ほんの少しだけ。自発的に何かしようかという気力が、薬草に熱中する君を見ていて生じてしまったからだ。



 全部本当だけれど、何かが違うような気がする。



「うーむ」


 もやもやするなあ。

 史月は顎に手を添えて、渋面顔になった。











(2021.10.4)


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