第115話異世界ウルトラクイズ王決定ぇ!!!

「異世界横断ウルトラクイズ決勝戦、『異世界コロシアム』に集められた転生者一万と五十一名の頂点に立つのは果たして誰か。先んずれば人を制すをモットーとする横田さんか、死中に活を求める渡辺さんか。燃えている異世界であります」


 そしてドラゴンから荷物を持ちながら格闘場中央へと歩く二人に一万と四十九名の『モブ』から拍手の嵐が送られます。皆さん意外といい人ばかりですねえ。


 三十秒前。


 どっくん。どっくん。


「日差しがとってもやわらかい、秋の異世界『ネオヨーク』。格闘場。二人は共に社会人。二十九歳の成田空港渡辺さん代表作『詩人からの手紙」と二十五歳の駅前旅館の若旦那横田さん代表作『傷』です。『異世界横断ウルトラクイズ』決勝戦。ここまで来たら説明はいらないだろう。早押しで十ポイント先取した方が優勝である。最初の問題」


 ここからバチバチの戦いが始まります。


「人類が世界で初めて月面着陸をしたのはアポロ何号」


 ポーン。


「ほれ横田」


「十一号」


「正解。その通り。問題。『高い山の上で雲や霧に自分の影が大きく』」


 ポーン。


「渡辺君」


「ブロッケン現象」


「正解。その通り。頭の部分に七色の光の輪が見える現象を何と言う、ブロッケン現象そのとおりであります。『濃い硝酸と塩酸を一対三の割合で混ぜ』」


 ポーン。


「王水」


「正解。横田君その通り。『鰯の頭も信心からと言う言葉を生む元となった日本の年中行事と言えば』」


 ポーン。


「節分」


「正解。渡辺君。じっくり時間一杯考えた。二対二。『ハラッパ―、モヘンジョダロと言う古代都市は何文明』」


 ポーン。


「インダス文明」


「横田。その通り。『うねび、みみなし、かぐやまは大和三山、ではがっさん、ゆどのさん、はぐろさんは何三山と言う』」


 ポーン。


「出羽三山」


「正解。三対三。お互い譲らず。『中華人民共和国建国記念日を何と言う』」


 ポーン。


「国慶節」


「正解。渡辺君が初めてリード。『ヘッセの嵐、宮城道雄の海、ストラヴィンスキーの祭典と言ったら季節はいつ』」


 ポーン。


「春」


「正解。横田君。春の嵐、春の海、春の祭典であります。『紋付の一つ紋は紋をどこに付ける』」


 ポーン。


「早かった。横田君」


「背中」


「正解。『国家と国家の緊張緩和を示す緩みと言う意味の』」


 ポーン。


「横田」


「デタント」


「正解。その通り。デタント。『酸素、窒素、二酸化炭素、人間の吐く息にもっとも多く含まれているのはどれでしょう』」


 ポーン。


「両方の手が動いた。横田」


「窒素」


「その通り。『角兵衛獅子はその発生した地方名をとって別名何と言う』」


 ポーン。


「横田君。自信を持って」


「越後獅子」


「正解。その通り。『人間の睡眠には二種類あります。夢のある睡眠はレム睡眠、では夢のない睡眠を何と言うか』」


 ポーン。


「渡辺さん」


「ノンレム睡眠」


「正解。その通りです」


 問題に不正解は一度もありません。そして正解のたびに一万と四十九名の『モブ』から拍手が沸き起こります。これはもうリスペクト、尊敬の拍手であります。


 横田さん八ポイント。渡辺さん五ポイント。


「馬がその葉を食べると体が痺れるというところから」


 ポーン。


「馬酔木」


「名付けられた木は何かぁー。馬酔木。その通り。さて、リーチがかかった。若旦那いいかい?サラリーマン渡辺さんいいか。追いあげろ。問題!『すべての楽器の中で最大の規模を持ち、手と足の鍵盤で演奏する楽器と言えば何か』」


 ちちちちちちちちちちち、ポーン。


「渡辺さん」


「パイプオルガン」


「正解!その通り。その自信。その自信。いいぞお。追い付いてこい。リーチのかかっている横田さんですが渡辺さんが追い上げてくる。問題。『現存するもっとも大きい両生類は何だ』」


ちちちちちちちちちちち、ポーン。


「これで決まるか!『傷』!どうぞ!」


「オオサンショウウオ」


「おめでとう!決定ぇ!チャンピオン決定ぇ!一万と五十一名の頂点は横田君の『傷』だあ!」

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