第113話あれは物語を終わらせられない自称作家が『異世界もの』でダラダラ書き続けていく文字数ですよ

「ねえ」


「天は我を見放しました」


「それはもう使い古されたセリフだろ。はははは。天は我を見放した、その通りだな。いやあ、しかし素晴らしい出足だったぜ。ねえ」


「先走りですかね…」


「うーん、勝負のかけ方と言うか、作戦ミスだったのかもしれないなあ。いいとこまでいったのにねえ。そうかあ…。いい?この旅を振り返って一番印象に残ってることは何かな?」


「もう苦しいことばかりでした。でも楽しいことばかりでしたかもですね。多くの書き手の皆さんとの出会いや別れ。励ましもありましたし」


「そうだね。君は最年少であり。『極道ラブ』だっけ。ジャンルの違う書き手さんとも仲良くなれただろ」


「はい。それに」


「それに?」


「別れても作品は読めますから。そういう意味では『作品』を書き続ければ皆さんとどっかで『繋がれてる』のかな、と」


「いいこと言うなあ…。それでさあ。きんときまよちゃん。あなたから見た、敗者から見た、あの二人の勝者。どっちが優勝するとあなたは予想しますか?」


「それはどうしても答えなければダメなんですよね?」


「別に甲乙つけがたいでもいいよ。実際あの二人の『クイズ無双』はすごかったし。その二人にあれだけ食らいついたあなたもまた『クイズ無双』だったと思うよ。そんなあなたから見てだよ」


「…、渡辺さんかな?」


「その理由は?」


「作品もそうですが『落ち着き』を感じますんで」


「なるほど。『落ち着き』かあ。それでこの後あなたは何するんだっけ?」


「え?私ですか?帰るんじゃなかったですか?」


「あっはっはっはー。『罰』だよ。あっはっはっはー」


 おっとどっこいきんときまよちゃん。本当にここまで最年少で頑張りましたが敗者は罰を受けると決まっているのです。


「きんときまよちゃんはBL好きなの?」


「はい!大好きです!」


「じゃあ『百合』は?」


「うーん、嫌いじゃないかなあ…」


「書こうか」


「はい?」


「『百合もの』を書くんだよ。そうだなあ。ネット小説なら百万文字が普通なんでしょ?」


「いや…、あれは物語を終わらせられない自称作家が『異世界もの』でダラダラ書き続けていく文字数ですよ。普通、新人やアマチュアの書き手なら多くても十万文字から二十万文字。原稿用紙千枚が四十万文字として。そんな応募作を読む編集や下読みはいませんから」


「知らねえよ。書け」


「いやいや。じゃあせめてBLで…」


「あ?『極道ラブ』はもう百万文字超えてるだろ?だったら『百合もの』も楽勝だろう」


「いやいや。『極道ラブ』も足かけ三年かかってますからね」


「そうなの。じゃあ三年か…。大丈夫大丈夫。食料とかそういうのは…『極道ラブ』のアニキとかに頼めば何とかなるんじゃねえかな?あと家が駄菓子屋でしょ?あなたは。送ってもらえばいいじゃん。無理だけど。まあ、頑張れよおおおおおおお!」


「あ、とめさああああああああああああああああん!」


 勝者二人と共にドラゴンの背に乗り『無双』を飛び立つとめさんたち。


「頑張れよおおおおおおおおおおおおおおおお!」


「鬼いいいいいいいいいいいいいいいいいい!悪く書いてやるうううううううううううううううう!」


 さてさて準決勝まで残った最年少松本さんの書く『百合もの』。読んでみたいですね。


 準決勝。『無双』。転落者、最年少松本さん。


 決勝戦へコマを進めたもの二名。

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