第111話チートなき『無双』

「では。いくぞ。準決勝。『無双』。問題。『メイフラワー号に乗った清教徒たちが上陸した土地は』」


 ポーン。


「極道ラブ」


「プリマス」


「正解。『極道ラブ』が一ポイント。問題。『戦時中、球を打つと書いて打球と言われたスポーツはいったいなんだ?』」


 ポーン。


「極道ラブ」


「ゴルフ」


「正解。『王手』席にリーチだ。いくぞ。『傷』、『詩人からの手紙』。元気はあるか。自信はあるか。問題。『塗料の原料などに使われる松ヤニからとった油を何と言う?』」


 ポーン。


「詩人からの手紙」


「テレピン油」


「正解。うーん。どうした?『傷』こと若旦那。問題。『古代中国の歴史で四面楚歌の中、項羽と共に…』」


 ポーン。


「極道ラブ」


「劉邦」


 ブブ―。


「その先を聞いて欲しかったなあ。『彼と共にいた彼の愛人はいったい誰だったか』という問題。ちなみに誰だか分かります?『極道ラブ』」


「全然わかりまてん」


「わかりまてんか。虞美人ですね。さあお手付きは一回休み。ポイントは減りません。問題。『紺屋の白袴、紺屋って何屋さんですか』」


 ポーン。


「はい。傷」


「染物屋」


「そのとおりです。おたくは旅館ですね。問題。『アンデルセン童話集、皇帝の新しい着物、これはいったい何の物語かな』」


 ポーン。


「極道ラブ」


「裸の王様」


「正解!さあ『極道ラブ』こときんときまよちゃんが『王手』席へ。『傷』と『詩人からの手紙』。阻止しろよ。


『プロ野球パリーグで実施されております指名代打制、アルファベット二文字で言うと』」


 ポーン。


「傷」


「DH」


「その通り。残念だがきんときまよちゃん。一般席に戻ってね。ポイントは二ポイントに減ります。すなわちリーチ状態。またすぐに『王手』席へ戻れます。いくぞ問題。『スペイン人、コルテスによって滅ぼされましたメキシコの王国は何?メキシコ』」


 ポーン。


「極道ラブ」


「アステカ文明」


「正解。どうぞまた『王手』席へ。すげえな。きんときまよちゃん。成田空港も若旦那も圧倒されてるよ。ボタン押せねえなあ。問題。『百ボルトの電圧で一アンペアの電流が一秒間に出すエネルギーは何ワットだあ?』」


 チチチチチチ。


「あれ?手が動かないか。勝負かけろ!『極道ラブ』!」


 一瞬先に横田さんが。


 ポーン。


「傷」


「百ワット」


「正解。はい戻ってね。きんときまよちゃん。代わりに駅前旅館の若旦那、『傷』が『王手』席へ。問題。『不思議の国のアリス、アリスが飛び込んだのは何の穴』」


 ポーン。


「これは決まったか。新宿南口駅前旅館の若旦那二十五歳。代表作『傷』」


「兎の穴」


「正解!おめでとう!さすがだ!」


「やったあ!」


 思わず後ろの二人、最年少松本さん、成田空港渡辺さんも拍手です。


「待ってるぞー」


 そう言い残して横田さんは勝ち抜け席へ歩いていきます。さあ、残る席はあと一つ。チートなんか誰も使ってません。ガチです!

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