第64話読み専

「へえ。中の様子は皆さんに筒抜けだったんですね」


 宙に浮かんだ浮かんだ大型ビジョンをを眺めながら勝ち抜けた最年少松本さんと新婚保坂さんが言ってます。


「そうだよ。見ろよ。あのサキュバス岸野さんの魅力を。モンスターたちの目がみんな♡になってるだろう。『大人の魅力』だとか『若さ』だとか、ちっちゃいちっちゃい」


「(そうなのよねえ…。あの方には私も…、ポッ)」


「(私も両刀なのかしら?なんか気になるのよねえ。あのお方は…)」


 恐るべしですね。チート能力『テダマニ・トール』は。


 一方。


「くそが!ひとつ八千ゴールドで買った薬草もすでに全部使っちまった!あのぼったくりがあ!やべえなあ…。ん?待てよ。薬草ってまあ少しは体力回復したけど…。体力全快!とはならなかったよなあ…。薬草使う時に『ハン・ピレイ』を同時に使ってたらどうなるやろ?うーん。逆にめちゃめちゃ少ししか回復しない恐れもあるしなあ…。不便だ…」


 そこに偶然、国士館さんが。


「あ、日体大さん。お疲れ様です」


「あ、国士館さん。どうです?このダンジョンは?」


「いやあー、『モブ』の連中に踊らされて一人で挑戦してますが。まあ無理ですね。今、ようやく『封筒』をさっき見つけてこれからとめさんのところに向かうところなんですけどね。えへ」


「薬草は余ってません?」


「いや、最後まで何があるか分かりませんので『二つ』だけ持ってますね」


「(え?二つ持ってんの?)あのお…、国士館さんはどんな作品を書かれていらっしゃるんでしょうか?」


「あ、僕は『読み専』ですね。基本」


「(え?そうなの?)そうなんですか?僕の作品とかってどう思います?」


「え?あの名作『美少女高校生双子姉妹を拾ったらヤンデレで俺の取り合いになって困ってる件』ですか(名作なわけねーだろ。このろりこんクソ野郎が)?」


「え?名作!?ありがとうございます!いやあ、実は薬草を譲ってもらおうと思ってたんですが。ファンの方に甘えるわけにはいけませんよね。あ、それに僕、さっきいったんとめさんところで不正解だったんですよ。そこで『道具屋とめさん』で薬草を買おうとしたら『薬草一個八千ゴールド』ですよ!ぼったくりですから!なんか相場が変わるとかって言ってましたんで。気を付けた方がいいですよ!」


「(こいつ…。いけしゃあしゃあと…。すでに一回この『ロンダルキアに憧れて』ダンジョンをクリアしてんのか。それに『道具屋とめさん』の薬草が八千ゴールド?それはひでえな。でもいいこと聞いたよーん)そうなんですね。じゃあ行ってきます。これからも作品楽しみにしてますんで」


 そこに偶然、岩瀬さんが。


「あれ?二人してどうしたの?え?もしかして二人で『パーティー』を組んでるとか?」


「いえ。僕らはあくまでも『パーティー』は組んでませんよ」


「(こいつも確か…。よーし)あ、岩瀬さん。僕って基本、『読み専』なんですよ。ねえ、日体大さん」


「そうそう。さっきも僕の作品をご評価いただきまして。いやあ、素晴らしい読み手な方ですよ」


「そうなんですか!?じゃあ僕の『幼馴染がクラス一の美少女なのにおいらにぞっこんばっこん』や『ランドセルが似合う妹が実の兄である俺にぐいぐいせまってくるんだが』はどうですか!?日体大さんと方向性は似てると思うんですが」


「(このろりこん作文クソ野郎は本当に頭がお花畑と言うか…)最高です!特に純文学の『ランドセルが似合う妹が実の兄である俺にぐいぐいせまってくるんだが』は日本の文学シーンを変えるものになると思ってます(そんなわけねえじゃん)!」


「ありがとうございます!いやあー。国士館さんは素晴らしい読み手様ですね!ねえ、日体大さん。そうだ!お礼に有益な情報を教えますね。実はこの『ばらまきクイズ』は封筒の中身に『ハズレ』もあるんですよ!さっき僕も『ハズレ』でして。もう一回戻ってきてまして」


「(このろりこん作文クソ野郎は…。なんとかもおだてりゃなんとやらとはよく言ったもんだよなあ)へえ。そうなんですね。ちなみに岩瀬さん、否、文豪岩瀬さんのチート能力は何なんですか?」


「あ、僕のチート能力は回復系です。『ベホマゾソ』です。体力全回復しますね」


「(こいつ使える!)」


 さあ、なんだかいろいろと展開が変わってきてますね。楽しみですね。

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