第62話『安全・安心』のロンダルキアに憧れて

「あのおー♡」


「ん?どうしたサキュバス。元気はあるか。自信はあるか」


「はい♡それでご相談なんですが。私は抜けましたけどこれは『パーティー』ですよね?三人が全員で抜けないと意味がないと思います♡なので私はいったん不合格としてください。この場合、私たちの『パーティー』は現在二問正解し、あと一問正解しないと全員揃っての通過は出来ません。かといって、二問正解した権利を渡辺さんと横田さんに与えてしまうと私一人でも『ロンダルキアに憧れて』ダンジョンから問題の入った封筒は何度でも回収してくることは楽勝ですけど肝心なクイズが、ねえ♡かといってこの二人のどちらかが私を残して『ロンダルキアに憧れて』ダンジョンにもう一回チャレンジするのは無謀です」


「なるほど。ようは『パーティー』を組んだ時点で『パーティー』のメンバー全員が通過出来るまで好きにやらせろってことか。オッケーだ。『異世界ウルトラ』はそんな細かいことに文句は言わない!それよりサキュバス。おぬし見直したぞ。仲間想いだなあ」


「えへ♡(この二人は今後も使えそうだしー♡)」


「じゃあ、僕らもサキュバス岸野さんについてもう一回『ロンダルキアに憧れて』ダンジョンに…」


「いや、足手まといはここで待っててくださいな♡」


「(…言い返せない。けど頼もしい…)」


「はっはっは。サキュバスぅ!おぬしはおっとこまえだねえ。それじゃあ行ってこい!」


 そしてもう一回『ロンダルキアに憧れて』ダンジョンに突入していくサキュバス岸野さん。


「あ、お姉さん。またこんなところに来られたんですか?」


「危ないですよ。なんなら僕がガードしましょうか?」


「落とし穴とか落石とかの場所を細かくこの紙にメモしておきました。あと全体マップも念のために用意しておきました。どうか使ってください」


 『ロンダルキアに憧れて』ダンジョンでこれまで散々多くの冒険者たちを苦しめてきたモンスターや魔物たちがとても親切にサキュバス岸野さんを『安全・安心』で巡れるよう細かい配慮をしてくれてます。うーん。『テダマニ・トール』恐るべし!!


 一方その頃。


「ベホマゾソ!ベホマゾソ!」


「いやあ、岩瀬さんって本当に頼りになるわあ♡」


「いえいえ。保坂さんや松本さんもどんなチート能力をお持ちなのか分かりませんがこんなに手強いモンスターを相手にすごいですね!僕なんて攻撃力が全然でして…」


「(誰が私のチート能力なんか教えるかっつーの)いえいえ。私なんて魔物を油断させるぐらいしか。それより松本さんの方がお強くて」


「(この『ろりこん作文クソ野郎』なんかにチート能力を教えるわけねえだろが。つーか、何々?保坂さんが魔物を『油断』?それって『大人の魅力』アピール?)いえいえ。私は『若さ』だけが取り柄ですから。保坂さんのような『大人の醸し出す魅力』なんて持ってませんから」


 なんかハーレムから一転、女性同士の嫉妬争いが…。


 一方その頃。


「お、日体大。よく戻ってこれたな。元気はあるか。自信はあるか」


「はい。何とか頑張れました」


「いくぞ問題。『世界の国の名前をあいうえお順に並べて最初に出てくる国はどこ?』」


「アイルランド」


 ブブ―。


「アイスランドだよ。ばかやろう。ほら、行ってこい。時間はねえぞ」


「あのお…」


「なんだ?」


「薬草をまた買いたいんですが」


「ああいいよ。道具屋『とめさん』へようこそ。『薬草』ですか?いくつですか?」


「えーと、持てるだけください」


「『異世界ウルトラ』の道具袋は『八個』までだよ。問題の入った封筒も『一個』にカウントされるからね」


「じゃあどうせ途中で使いますから限界の『八個』ください」


「おや、それを買うにはお金がたりないようです」


「え?足りない?そんなことないでしょ。薬草は八ゴールドでしょ?それぐらい持ってますよ」


「おいおい。そんなの値段は常に変動するだろう。今の相場は薬草一つ八千ゴールドだよ」


「え!?(ぼったくりだ…)」


「今の日体大だと四つしか買えないね」


「(くっ!『ハン・ピレイ』!)」


「いやいや。僕には通じないからね。はい商売の邪魔になるから用が済んだら帰った帰った」


 シブシブと『薬草』四つを買ってから再度『ロンダルキアに憧れて』ダンジョンに入っていく日体大さん。シビアですねえ。

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