第46話一口飲む?一口。一口だけ

「負けたぜ馬淵。どうしたあ」


 最後でこの『街角テレビ』を勝ち抜いた日体大君を他の勝ち抜いた転生者が温かく出迎えます。


「よかったね」


「ありがとう」


「よかったよかった」


「ありがとう!」


 ここまで共に戦うことで友情らしきものが芽生えたのでしょうかね。いい光景ですね。


「おしかったなあ。チャンスはあったのになあ。黄色って分かんなかったか」


「いや、分かったんですが少し遅かったです」


「そうか。それで応援してくれた、先に負けて『モブ』になった人たちに一言なんかないか?」


「勝てなくてすまなかったけど、すごく嬉しかったです」


「嬉しかった」


「はい。あとはどんなに優れたご都合主義の『チート』だろうとそれに合った『チート』じゃないと意味がないなあってことです」


「そっか。そうだよなあ。どんなにご都合主義で無敵の『チート』だろうとそれを発揮できる環境じゃなきゃ意味ないもんなあ。しかも『クイズ』である『知力』、『体力』、『時の運』は『チート』だけじゃあやっぱ勝てないよなあ」


「はい。いい勉強になりました」


 すごくいいこと言ってますね。


「それじゃあ勝ち残った九名の転生者は『自信だ!爺さん!』行きだ!バンザーイ!」


「バンザーイ!」


「もいっちょバンザーイ!」


「バンザーイ!」


「もひとつ元気よく」


「バンザーイ!」


 そして『罰』です。氷河ならではの冷たい『罰』!


 ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン。


 馬淵君がせっせと氷河をスコップで掘り起こしています。


「お、いいぞ。もっともっと掘り起こせ」


 そして…。


「まあ、気長に。気長に食べてね」


「はい…」


 氷河を掘り起こした氷が大きなボウルに入れられ、上から『シロップ』ですかね。赤い『イチゴ味』のシロップを大量に、え?シロップじゃなく『血』ですか?まあ、ご想像にお任せってやつですね。


「いやあ、勝つと負けるじゃ大違いだね。だいたい『こういうもの』は嫌いな方なの?」


「いえ、大好きです」


「大好き。くっくっく。その割には全然減らないなあ」


「さ、さぶい。冷たい」


「冷たい?コーヒーって暖かいよ」


 そう言って水割りのグラスからいつの間にか湯気が出ているホットコーヒーを両手で暖かそうに、ちびちびとすするとめさん。


「あっはっはっはっはっは。一口飲む?一口。一口だけ。やめとく?あっはっはっはっはっは」


 摂氏二度の氷点下で食べるかき氷は最高に美味しいでしょうね。黙々と完食する馬淵君。一言も喋らなくなってます。そのまま食べ終わり『モブ』です。


「ご苦労さん。ご苦労さん。よくやった。よく食べた。ねえ。また来年来てくれるか。ねえ」


「…毎年来たい…」


「転生したから参加出来たんだからね。まあ、リアルには帰れないけどね。うーん」



「スタジオの高島です。哀れなあの姿。いや、ますます面白くなります。それでは続いて参りましょう」


「今週はここまででございます」


「もう。勿体ぶりのこの『まきこ』!ホントにもお…」


「ええ、次週はですね。第八チェックポイント『自信だ!爺さん!』。正解すると増える座布団。ゆらゆら揺れて崩れると最初から。地獄の『えんどれすはめごろし』です。それから『ロンダルキアに憧れて』では地獄の迷宮をさまよってもらいます。『だまさみ・くるま』ではあの黄金期の名作に挑んでもらいます。来週も盛りだくさんの内容となっております」


「いや、もう本当に番組の趣旨が『ブレブレ』ですね。だがそれがいい。そして毎日更新」


「勝てば天国」


「負ければ地獄」


「知力体力」


「時の運」


「早くこいこい木曜日」


「『異世界横断ウルトラクイズ』でお会いしましょう!」


 毎日更新です!

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