第45話祇園精舎に『鐘』はない

 しかしスナックから戻ってくる土谷君。


「あれえ?どうした?土谷君。自信はあるか」


「いや、あのお、もう君たちじゃあラチがあかないから残ってる三人まとめて来なさいと…」


「何だって?お前、余計なこと言って凡ちゃん怒らせたんじゃねえか」


「いえ!行ったらいきなりそう言われましたよ」


「そうなのか。じゃあ日体大、馬淵。三人で行くぞ。元気はあるか。自信はあるか」


「おおおお!」


 そしてとめさんと四人でスナックへ向かいます。


 カランコローン。


「いらっしゃーい。あ、とめさん。ご無沙汰しております」


「いえいえ、こちらこそ凡ちゃんも元気そうで嬉しいな。元気はあるか」


「はい。それでですね。もうこの子たちはこの機械に入っている曲は無理だと思うんですね」


「そうなのかい?」


「はい。『闘魂こめて』とか歌えますか?」


「え?そんなの楽勝だろう。なあみんな」


「いえ…」


「知らないです…」


「六甲おろしなら…」


「お前ら…。元気はあってもなあ」


「そこでですね。『なぞなぞロックンロール』を小僧寿しヴァージョンで私が歌いますのでその『なぞなぞ』を早押しでお答えいただくということでいかがでしょうか?」


「それはいいですけど…。『なぞなぞロックンロール』は歌えるでしょう。なあ、お前ら」


「いえ…」


「(し、知らねえ…)知らないです」


「無理です」


「もおー、『ゆとり』だなあ。そんなんで毎日更新って無理だよ。ランキング云々の前に『なぞなぞロックンロール』を知らないって『書く』以前だな。『祇園精舎の鐘の音』とか言うけど千九百八十一年まで祇園精舎に『鐘』はなかったからな。じゃあ、すいません。凡ちゃんお願いします。ストロングさん、たんこばさんもご無沙汰しております。よろしくお願いしますね」


「あ、はい。とめさんもおかわりなく」


「私にまでお気遣いありがとうございます」


 ストロングさんもたんこばさんも一応キャラ作りをしてますがしっかりと礼儀正しい方たちですね。


「それでは今宵、大木の凡ちゃんこと私が『なぞなぞロックンロール』の『ロックンロール』を『小僧寿し』に変えて出題致します。俺は高校生の頃、サーファーの女の子と恋をしたことがある。俺はその頃からリーゼントしてた司会者だったから。周りの奴らはみんな『似合わねえから』やめろよって言ったけど。だけど俺はその子の外見に惚れたんじゃなくはーとがいかしてたから突き合ってイキタイと思った。そうやって突き合っているうちにある日彼女が髪の毛をぽにーてーるにして赤い口紅をつけてきた。俺はものすごくうれしかった反面なんとなく寂しい気もした。今までと同じスナックのママでいてくれたら、俺の気持ちは変わらなかったのかなーってその時思った。今でもこの夕暮れの浜辺を見ると無邪気にカラオケを楽しんでいたあいつの姿を浮かんできた。なぞなぞー小僧寿し♪なぞなぞー小僧寿し♪なぞなぞー小僧寿し♪なぞなぞくえーすちょん。『くえすちょん。いつも気合いが入った魚は?』」


「さあこい。『いつも気合が入った魚』はなんだ?」


 考え込む三人。


「制限時間は十秒だ。はい五、四、三、二」


「はい!」


「早かった。馬淵」


「クジラ!」


 ブブ―――――。


「てめえ!テキトーに答えてんじゃねえ!ぶち殺すぞ!」


「ごるああああああああ!舐めてんのかてめえ!俺でも分かるぞ!この野郎!」


「だそうだ。馬淵、なんで『クジラ』なの?」


「いや…、気合が入ってそうだったので…」


「『クジラ』のどこに気合を感じる。ちなみに『俺でも分かる』とおっしゃってた、たんこばさんの正解を聞いてみましょう。


「『えい』だろ?」


「あたーりー!」


「あー…」


「あーじゃねえよ。基本だよ。基本。お手付きは一回休み。では凡ちゃん。次お願いします」


「なぞなぞー小僧寿し♪なぞなぞー小僧寿し♪なぞなぞー小僧寿し♪なぞなぞくえーすちょん。『くえすちょん。奈良の大仏と鎌倉の大仏、先にたったのはどっち?』」


「奈良の大仏と鎌倉の大仏。先にたったのはどっちだ?制限時間は十秒。自信はあるか」


 考え込むお手付きで一回休み中の馬淵君以外の二人。これは『なぞなぞ』です。


「はい!」


「土谷君が早かった。正解は?」


「えー、奈良の大仏も鎌倉の大仏も両方『座って』るのでどちらも『たって』ない!」


「あたーりー!」


「おめでとう!抜けたぞ!土谷君!よかったよかった。ほら、ストロングさんやたんこばさんに祝ってもらえ」


「おお。来いこの野郎!」


「よかったなあ!ぶち殺すぞてめえ!この野郎!」


 そう言いながら二人に軽々と胴上げされてます。いやあ、いい人たちです。


「残る席はあと一つ。日体大、馬淵君。どちらかが『敗者』になります。それでは凡ちゃん。よろしく」


「なぞなぞー小僧寿し♪なぞなぞー小僧寿し♪なぞなぞー小僧寿し♪なぞなぞくえーすちょん。なぞなぞー小僧寿し♪なぞなぞー小僧寿し♪なぞなぞー小僧寿し♪なぞなぞくえーすちょん。『くえすちょん。赤、青、黄、エッチな色はどれ?』」


「赤、青、黄、いいエッチな色はどれ?時間は十秒。さあこい。元気はあるか。自信はあるか」


 考え込む二人。間違うとお手付きで一回休み。慎重になっても遅れをとる。必死で考え込んでます。そして。


「はい!日体大が早かった」


「(くそ!『あっべ・こっべ』も使えねえ!日体大の不正解を正解にしちゃうかもしれねえし…。頼む!間違えろ!ちがえろ!ん?えろ?エロ?ああああああああああああああああああ!)」


「イエローでいいエロで黄色!」


「あたーりー!」


「抜けたぞ!日体大!おめでとう!よかったなあ!」


 そしてストロングさんとたんこばさんに祝福される日体大君。この第七チェックポイント『街角テレビ』で馬淵君は力尽き、『モブ』となってしまったのです。

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