第42話「てめえ!さざえさんの名字舐めてんのかああああああ!」

「(水割りグビッ)あはっははははは。日体大。少しは抵抗しろよ。ストロングさんやたんこばさんに負けない体格してるだろう」


「いやいや!めっちゃ怖いですよ!」


「そんなのぶっ飛ばせばいいんだよ。次は保坂さん。行ってこい!」


「はい!」


 カランコローン。


「いらっしゃーい。お、こちら綺麗なご婦人ですね。二股かけてめった刺し。それでも十月四日には結婚式。新郎さんはすでに『モブ』ですが新婦さんは頑張ります。山梨県が生んだ大スター、保坂さんが歌います。『青い珊瑚礁』。どうぞー」


 たーたたん、たらららたーん、たーたたん、たらららたーん、とぅるるるとぅるるるとぅるるるとぅるるる。


「あー、わたしーのー濃いはー、皆身の風邪にのっては知るわー、あー、アオ医科ぜきっては知れあのシ魔へー」


「おー!素晴らしい歌い出し!完璧であります」


「いいぞ!」


「ウマいなあ!」


 ストロングさんやたんこばさんも褒めてます。


「穴田とあ歌日にすべ手をわ擦れて島ウノ、はシャイだわ足しはり取るがーる、あ墜むね機超える弟子ょう、すはダニ機らきら三誤賞、ふ足り霧で長され手も異委のーーーー穴田が隙!あー、私の濃いはーー皆身の風邪にのっては知るわー、あー、あ追い風邪切手は知れあのし魔へーーーー♪」


 うまいっすねえ!保坂さんは二番も完璧にモノマネまで交えて歌い切りました。


「キンコンカンキンキンコンカンキン!おめでとうございます!見事歌い切りました!もちろん合格です!」


「お姉ちゃん、最高だったよ」


「今度、飲みに行こうよ。お姉ちゃんって『濃い』の?」


「あ、じゃあ連絡先を」


「こらこら保坂さんは新婚さんですよ。おめでとう!抜けたぞ!いやあ、よかったよ」


「いやーん、年がバレちゃいますよー」


「いやーんって。山梨県の生んだ歌姫だよおい。よし合格席に行ってこい」


 なんか、アナコンダさんやたんこばさんは『女性』に優しいような気もしますね。


「よし、松本さん。続くんだ。行ってこい!」


「はい!」


 カランコローン。


「いらっしゃーい。またもや女性のお客様がご来店。ありがとうございます。今宵は一人、歌いたい夜なのでしょう。にわかもブームで大流行致しましたこの曲。真のファンはいつまでもこの名曲を後世に語り、そして歌い継ぐでしょう。世界的物語を松本さんが今宵歌いあげます。それでは『ボヘミアン・ラプソディー』。どうぞー」


「いっしゅてぃっしゅとぅりあらいーいっしゅじゃすふぁんたしーこーりーるらーいさいーぞういずけっぷふろむりありてぃ、おーぷんゆああいするっくあっぷとぉすかいざしー、あいじゃすざぷーぼーいあいにーのーしんぱしーびこうざいーじかむいーじーごりとはいりとろうえにうぇにぶろだずめにまたとうみー、とうみー、ままー、じゃすきるどめん、ぷるがんなげっとひずへっど、ぷるまいとりがーひずでっど、ままー」


「おおおお!」


「いいぞ!」


「なんか涙が出てきた!」


「しつれいー、まっちゃんですかー」


「おおお!」


「完璧だあ!」


「合格!キンコンカンキンキンコンカンキン!素晴らしい!合格です!」


「よかったよ!」


「お姉ちゃん、『英ぺ』やなあ。よかったよ」


「抜けたぞ!おめでとう!松本さん!いやあー、すごかったね」


「いえ、昔から熱狂的なファンでしたので。あの映画は最初に自費でファーストを出すぞ!ってシーンがありますがその曲が『せぶんしーずおぶらい』でヴォーカル入りでしたよね。本当のファーストはあれ『インスト』なんですよ。それにですね」


「分かった分かった。とにかく君が真のファンなのはよーく分かった。今度は『シェーン』を一緒に観に行こう。とにかくおめでとう!『自信だ!爺さん』行きだ!よーし、続けよ、馬淵!行ってこい!」


「はい(あっべ・こっべ使えるかなあ?)!」


 カランコローン。


「いらっしゃーい。お、男性のお客様です。さあいい流れが出来ております。このままどんどん続いてもらいたいものです。日曜夜。症候群とまで言われたあの国民的名曲です。歌えない方はいないでしょう。今宵、日曜日ではありませんが歌ってもらいます。馬淵さんで『サザエさん』。どうぞー」


「(え?『サザエさん』?)」


 でけでん♪


「(あ、オープニングの方か。確か…『どら猫』の方が一番?やったかな?『あっべ・こっべ』考えてる暇がねえ!)」


「おさ加奈桑えた銅鑼ねこおっ掛けて、肌死で書けテク容器な佐座餌ん、みん名がわらっ照、おひさ魔もわらっ照、るーるるるるー、強も言いてん気―♪」


「素晴らしいです!完璧です!」


「やるじゃねえか!」


「間違えたら殺すぞ!」


 やっぱり、男性には厳しいですね。そして二番も完璧に歌いきります。


「素晴らしい!さすが!ではそのまま三番もお願いします!」


「(え?三番!?知るかあああああああああ!)財布を忘れてぺいぺい電子マネー、便利になったね、便利なさざえさん」


 曲が止まります。


「ごるああああああああ!」


「てめえ!さざえさんの名字舐めてんのかああああああ!」


「全員が磯野じゃねえんだよ!ぶち殺すぞ!てめえ!河豚田舐めてんじゃねえぞおおおおおおおおおおお!」


 水割りでいい感じになったとめさんが本気で馬淵君の首を絞めているストロングさんとたんこばさんのアドリブにゲラゲラ笑っています。馬淵君、強制退店です。


「お前さあ。電子マネーってなんだよ。そんなトンチじゃ怒られるのも当たり前だろお。はははははははは」


 いやー、三番あるんですね。次は二十九歳横田さんです。

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