第39話十三歳年下の子と友達になれました

「それじゃあ次の『街角テレビ』に向かってバンザーイ!」


「バンザーイ!」


「もういっちょバンザーイ!」


「バンザーイ!」


 そしてここで『敗者』となった、『モブ』決定となった山手線にとめさんが話しかけます。


「残念だったなあ。どうだったここまでの旅は」


「思いがけず、十三歳年下の子と友達になれました」


「へえ」


「嬉しかったです」


「若い書き手を見てどう思います?最近の」


「なんか…、考え方が変わりましたね」


「そお」


「だいぶですね」


「今までどんなことを思ってました」


「もう、ついていけないとか、時代が違うと思ってましたけど、いやあ、おんなじなんだなあって思って。嬉しかったです」


「自分の若い頃とおんなじだった、それはよかったですねえ。とっても大きなことですねえ。そのこと分かっただけでねえ」


「自分もまだまだ若いなあって思って」


「あははは」


「恥ずかしいですね」


「そんなことありませんよ。よかったよかった。うん。お子さんの名前は」


「かずひろです」


「かずひろ君に向かってなんか一言」


「かずちゃん、もう帰るからな。ごめんな」


「帰れないけれどね。奥さんには」


「あ、えーと、山手線の運転を頼む」


「あははは。はい、ありがとう。みんなとはここでお別れだ。最後に何かある?」


「みんな頑張ってな!優勝しろよ!」


「おっちゃんも元気でね!」


「おっちゃんの作品、楽しみにしてるからね!」


「ちゃんと毎日更新してよ!」


「ああ、頑張るよ!」


「あははははは。毎日更新してよってお前ら自分に言い聞かせろよな。ではここで『罰』をうけてもらう」


「え?『罰ゲーム』じゃないんですか?」


「『罰ゲーム』ではありません。『罰』です。あははははは」


「えええ…」


「と言っても『ご褒美』みたいなもんだ。山手線にはここに居残って『原稿用紙四百枚』書いてもらう」


「え?原稿用紙四百枚ですか?」


「そうだよ。僕がプロデューサーの佐藤さんに『緊急特番』を任された時なんか本番三日前に原稿を同じく原稿用紙四百枚分手渡されて丸暗記して挑んだよ。大体十六万文字ぐらいだろ。三日もあれば書けるよ」


「マジですか…」


「そうだよ。さっきのいいじゃん。『回る回るよ電車は回る。喜び悲しみを乗せながら。人生は常に各駅停車。でも時に快速や飛行機との乗り継ぎもある。そして今日も僕はぐるぐる回る』だっけ。君にしか書けない傑作になると思うよ」


「あ、あのお…、書き終わるまでは…」


「うん。この『ふりんと日記とびーえるが大好きなおいすたー』で頑張れ。こんな嬉しい『罰』はないよ。書き手にとって」


 これはある意味『書き手』にとって素敵な『罰』ですね。


「ここでスタジオの高島です。いやあたくましい書き手でしたね。山手線」


「はい。山手線さん、よくやってくれましたねえ」


「さて『ふりんと日記とびーえるが大好きなおいすたー』って言うから生牡蠣食べるのかと思ってましたら暴露大会でしたね。自己顕示欲は恐ろしい」


「あははははは」


「そして次のチェックポイントは『街角テレビ』ですが」


「すいません。その前に大事なご報告がありまして」


「どうしました?」


「実はその『街角テレビ』なんですが。『ふりんと日記とびーえるが大好きなおいすたー』を勝ち抜けた十一名の転生者に児玉さんいたじゃないですか」


「いましたね」


「実はその児玉さんにドクターストップがかかりまして。続行不可と判断され強制『モブ』となってしまいました」


「なんですと!?」


「いやあ、ホントにいい若者だったんですが、惜しい人を亡くしてしまいました…」


「いやいや勝手に殺しちゃダメですよ。あなた。児玉さんは元気に生きてますからね」


「はい、児玉さんは腹痛を起こしただけで今は元気に『モブ』として大会を見守っております」


「ああびっくりした。それじゃあ『街角テレビ』に挑戦する転生者は十一名ではなく十名ということですね」


「はい。ここでも脱落するのは一名ということになります」


「それではここでもコンピューターに予想してもらいましょう。今度は当てないと『責任問題』ですよ。それでは小林漢語さん。『あ、さて』」



「あ、さて。覚悟は十分に出来ております」


 そう言って視聴者にも分かりやすいよう特大の辞表を掲げる小林漢語さん。


「幸い私には『歌手』にならないかという話も来ておりますし。ねえ。『ふりんと日記とびーえるが大好きなおいすたー』での予想は見事に外れてしまいました。まあしかし、二度と過ちを繰り返さないのが日テレ(ひてれ)のこのコンピューターの特徴です。さあ、予想してみましょう。あ、依然として二十五歳横田さんがトップ、続いて二十九歳渡辺さん、気になる最下位ですが…。ああ…、岩瀬君ですか…。またもや落選マークがついてしまいました。どうやらこのコンピューター、意地になっているようですね。結果が大変気になるんですけれどもその前にどうぞ」


 あれ?さっき視聴者にお見せした大きな辞表ですが、スーツに入れてる間に『CM』と文字が変わっております。粋なジョークを見せてくれますね。小林漢語さん。そして勝ち残った転生者たちは第七チェックポイントである『街角テレビ』へ向かうのです。

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