第38話痩せないからね。『あれ』では。

「これで決めるぞ!『即興!タイトル文字数クイズ』。えー、三人には今すぐに作品のタイトルを考えてもらいます。制限時間は二十秒とします。そしてその後、三人には体重計に乗ってもらいます。一文字を一キロと換算いたします。それで一番数字のかけ離れた方が脱落となります。さあ、いってみよう。松戸のかとう君が配った紙と鉛筆に作品のタイトルを書き込め。本文はいらないぞ」


「(え!?マジか!?)」


「(えーと、『ラ、ン、ド、セ、ル、が、似、合、う、い、も、う、と、が、じ、つ、の、あ、に、で、あ、る、お、れ、に、ぐ、い、ぐ、い、せ、ま、っ、て、く、る、ん、だ、が』。さ、三十八文字!?全然足りねえ!半分にも足らねえ!)」


「(え、これは意外と簡単じゃね?普通に文章を書けばいいんだし。それより『あっべ・こっべ』発動!)」


 チッチッチッチッチッチッチッチッチッチ。


「タイムアップであります。鉛筆を置いて。岩瀬君、自信はあるか。山手線、元気はあるか。馬淵君、自信はあるか」


「はい!」


「では一斉にホールドアップ!何々、順番に見て行こう。岩瀬…。お前…。考えたなあ…」


「はい!」


「じゃあそのタイトルを大きな声で読み上げてくれるか」


「ランドセルが似合う妹が実の兄である俺にぐいぐいせまってくるのだが幼馴染がクラス一の美少女なのにおいらにぞっこんばっこん」


「何文字?」


「『ら、ん、ど、せ、る、が、に、あ、う、い、も、う、と、が、じ、つ、の、あ、に、で、あ、る、お、れ、に、ぐ、い、ぐ、い、せ、ま、っ、く、る、ん、だ、が、お、さ、な、な、じ、み、が、く、ら、す、い、ち、の、び、し、ょ、う、じ、ょ、な、の、に、お、い、ら、に、ぞ、っ、こ、ん、ば、っ、こ、ん』。七十二文字です。!」


「お前、とんでもない『名作』のタイトルが出来たじゃないか。あの『病院推奨』シリーズの合作か。一つだけいい?」


「あ、はい…」


「岩瀬…、タイトルの前に『てにをは』って言葉を調べといた方がいい。病院ではそういうところもしっかり見てくれるから」


 さすがとめさん。タイトル『幼馴染がクラス一の美少女なの「に」おいら「に」ぞっこんばっこん』で『に』の連続が気になったようです。いけませんね。読み手はイラっとしますね。


「次に山手線。読み上げてくれ」


「『回る回るよ電車は回る。喜び悲しみを乗せながら。人生は常に各駅停車。でも時に快速や飛行機との乗り継ぎもある。そして今日も僕はぐるぐる回る』です」


「何文字?」


「『ま、わ、る、ま、わ、る、よ、で、ん、し、ゃ、は、ま、わ、る、よ、ろ、こ、び、か、な、し、み、を、の、せ、な、が、ら、じ、ん、せ、い、は、つ、ね、に、か、く、え、き、て、い、し、ゃ、で、も、と、き、に、か、い、そ、く、や、ひ、こ、う、き、と、の、の、り、つ、ぎ、も、あ、る、そ、し、て、き、ょ、う、も、ぼ、く、は、ぐ、る、ぐ、る、ま、わ、る』八十五文字です!」


「山手線らしくいいタイトルだなあ。でも、君が岩瀬君より太っているようにはとてもじゃないが僕には見えないんだが。最後に馬淵君。読み上げてくれ」


「『ベイビーベイビーベイビーベイビーベイビーベイビーベイビーベイビーベイビーベイビーベイビーベイビーベイビーベイビー』五十六文字です」


「馬淵君…。君は…、よしかわさんやぬのぶくろさんから『許可』を貰ったのか。『許可』をまあいいか。文学は自由だ。よし、それでは一人一人、順番に前へ出てこの『体重計』に乗ってくれ。あ、大丈夫。安心してください。『書いてますから』。これも自由だよな。この『異世界ウルトラ』の体重計は着ている服や下着、荷物などは含まれないようになっている。じゃあまずは岩瀬君。乗ってみよう。自信はあるか」


「多分、近いと思います」


 そして岩瀬君の体重『七十八キロ』誤差『六文字』。


「おいおい、その若さでその体重は中性脂肪とかあれじゃあないか。普段、夜中にとんこつラーメンとか唐揚げとか食べてないか?」


「ガンガン食べてます」


「それで幼馴染や妹に『消費』してもらうってか。痩せないからね。『あれ』では。次、山手線。自信はあるか」


「ちょっと…長くなり過ぎましたね」


 そして山手線君の体重『六十三キロ』誤差『二十二文字』。


「ラストはベイビー馬淵君。自信はあるか」


「あります」


 そして馬淵君の体重『五十四キロ』誤差『二文字』


「おめでとう!この瞬間、岩瀬君、馬淵君、勝ち抜き決定!やったな!そして山手線。残念ながらここまでだ」


 ようやく第六チェックポイント『ふりんと日記とびーえるが大好きなおいすたー』での決着がつきました。

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