第31話「また来いよ。絶対だ」

 ざわつく敗者となった『モブ』である一万と二十七名。


「おいおいおいおい!なんやあの能力は!」


「あんなの『無敵』やろ!」


「でも…。あれはもともとあの人の能力ではありませんよね?」


「そやそや。あの人、ドロンコで一回負けて『敗者復活』でとくさんからあの能力を貰ったんよ」


「え?つーか、とくさんはこの中の誰かからあの『無敵』の能力を奪ったんやろ?あの『チート』があれば普通に勝ち抜けるんちゃうの?」


 甘い!考えが甘すぎる!だから君たちは『モブ』なんだ!と思いつつ、優しく説明するとくさん。


「君たち。よーく考えてごらん。いくら『無敵』の能力があろうと『クイズ』に正解しないと勝ち抜くことは出来ないでしょ?」


「いや…。そこはほら…。『自分が勝ち抜けるように周りを操ること』が出来るわけだし…」


「だからね。サキュバス岸野さんをご覧なさい。もう二回も先頭に立ったのにクイズで間違えてるでしょう。とめさんには効かないんですからね」


「いや、でも一回戦の『異世界コロシアム』ぐらいはあの能力があれば勝ち抜けるでしょー」


「そうそう。全員を操って全員『〇』とか全員『×』にすれば、ねえ。最悪引き分けに持ち込めるでしょー」


 そんな中。一人の『モブ』が心の中でつぶやく。


「(あれは…、実は俺の能力だったんだよ…。そりゃあ『絶対』負けないと思ったさ…。でもね…。あの能力…、有効エリアが半径十五メートルぐらいなのよ…。『異世界コロシアム』広いもん…)」


 そうなんです!あの無敵チート能力「テダマニ・トール」も


・とめさんには効かない


・テリトリー範囲が半径十五メートル


 そして『クイズ』が解けないとどんな能力も常勝とはならないのです。だが、サキュバス岸野さんはその辺を上手に理解し使っています。


「(あ、答え分かってるけど『わざと』間違って答えたくなった)〇〇!」


 ブブ―――!


「(あれ?なんで俺は正解分かってたのに…、違うこと言うてもうた…)」


 さあ、これに気付く転生者はいるのでしょうか?


「元気はあるか。自信はあるか」


 この二言だけでいくらでも場をつなぐとめさん。さすがです!


「(あ、そろそろこの人を勝たせようかなあー♡)」


「元気はあるか。問題。『夜明けを告げる明告鳥を何という?』。さあ引っ張れ!はい。児玉さん。自信はあるか。ていうかさっき答え言ったぞ。おい」


「にわとり」


「おめでとう!抜けたぞ!」


 そんなこんなで十名抜けました。残りあと二枠。


「(そろそろ私も抜けるかなあー♡)」


「お、サキュバス岸野さんが先頭に来たぞ。自信はあるか?」


「分かんなーい♡」


「分かんなーい♡て、おぬし相当やりおるのう。さては相当遊んでたな!いくぞ問題。『あの声でとかげ食らうかなんとやら。さてなんとやら?』さあ引っ張れ!」


「(みなさん協力してーん♡)」


「よしそこまで!『ヨムさん組』。サキュバス岸野さん。自信はあるか?」


「ええー♡分かんなーい♡」


「分かんなーい♡じゃだめだぞ。なんか言ってみろ」


 そこで周りの転生者が。


「ホトトギス!」


「ホトトギスだよおー!」


「ホトトギスよおー!」


「こら!他の人が答えるんじゃあない!分かんないぞ。騙されてるぞ。さあサキュバス岸野さん。答えは?」


「ホトトギス」


「正解!抜けさせてもらったなあー。何やってんだよ。お前らは」


 それを見ていた『モブ』と元『テダマニ・トール』の能力者。


「(その手があったか…!でも…、『異世界コロシアム』は無理だよなあ…)」


「席はあと一つ?ラストだよ。がんばれ。行くぞ問題。青山大学と日体大が先頭に来たぞ。残り一枠だがまだ後ろの人にもチャンスはあるぞ。『裏切る』もよし。協力してあげるのもよし。問題。『ことわざ。青は藍より出でて藍より青し。師匠に当たるのはどっち?青か藍どっちか?』さあこい!さあこい!引っ張ってやれ!気持ちは分かるが引っ張ってやれ!青山大学のために引っ張ってやれ!せーの!せーの!そっちも日体大のために頑張ってやれ!せーの!せーの!ほら、もうもうもうほら。はい、日体大。青か藍か」


「藍」


「正解!やったあ!最後で抜けたあ」


 はい。実は日体大君は「ハン・ピレイ」の能力者でした。「ぱわーじじょう」では勝てませんね。


「よかったなあ。おめでとう」


「いや…、みんなが引っ張ってくれたから…(いや、僕の能力だからね)」


「そうだよ。みんなにお礼を言わないと」


「みんな!ありがとう!(僕の能力だからね)」


「君たちのおかげだからね」


 そんな日体大君に敗者決定となったけど最後まで同じ組だった人たちが叫ぶ。


「ちくしょお!負けんじゃねえぞ!最後まで行けよ!」


「ほら、ああ言ってくれてるぞ」


「あ、あ、ありがとおおおおお…!(だから僕の能力ね)」


 そして敗者のみんなが倒れ込みながらも拍手をしている。なんて素晴らしい光景なんだ。


「『ふりんと日記とびーえるが大好きなおいすたー』に元気よく行こう。バンザーイ!」


「バンザーイ!」


「もういっちょバンザーイ!」


「バンザーイ!」


「おめでとう、おめでとう」


 パチパチパチパチ。


 そして二十四名から半数が『敗者』となりました。『モブ』です。でもここまで勝ち残ってきた転生者です。勝ち抜きが決定した十二名と握手を交わした後、とめさんがひとりひとりにマイクを向けていきます。


「疲れました?」


「はい。疲れました」


「へっへっへ。あれ最後なあ。日体大を行かせたのは『誇り』だよなあ。やっぱり最後の一人を行かせたのはなあ」


「ち、チームワークですよ!チームワーク」


「チームワークねえ。ここまで残ってどうでした?」


「あ、馬淵が行けて嬉しいっす」


「そうだよなあ。あの馬淵は行かせたかったもんなあ。いい友達だったよなあ」


「はい…。うっうっ…」


「おいおい泣くなよ。綺麗な銀行員はどうだった」


「…ぐすん、シクシク…」


「何が一番心に残ってる」


「…、ぐすん、書くことの楽しさ」


「書くことの楽しさかあ。そっかあ。一生懸命やって、悔いないか?」


「…」


「どう?」


「もう悔いない」


「そうか。これからは毎日書けるな。大丈夫。これを活かしてよ。またおいでよ」


「はい、来ます!」


「また来いよ。絶対だ」


 そしてボロボロ泣きだす転生者の肩を優しく抱きかかえるとめさん。


「よかったよかった。一生懸命頑張ってくれて。これからも君たちの『作品』を楽しみにしてるからな」


「はい!」


 うう…。毎回いつ見てもいい光景です。うんうん。とめさんは本当に優しい。


「だがしかし!これで終わったと思うなよ」


「え」


「ここからは罰ゲームだああああああ!」


「はい?」


「いやいや。だって言ったでしょ。『罰ゲームは恐くないか?おおおおお!』って。『死ぬのは恐くないか?おおおおおお!』って。ねえ?」


 とうとう『異世界ウルトラ』の『罰ゲーム』です!

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