第20話チート能力『未来予想図』発動!

 恐るべし。人の妬みと嫉妬心。


「あ、あいつのペンネーム知ってるー」


「え?あのランキングでいつも上位にいる『不正』と『テンプレクソクソ量産作品』で有名なあいつ?」


「そうそう」


(溜めて)ブブ―――――。


「うそーん!俺はランキングで常に上位っすよお!」


「池田君。君の作品。五十一作品中、『五十位』」


「不正だああああああああああああ!」


「かばやろー!『異世界横断ウルトラクイズ』に不正は一切ない!やらせもサクラも一切ない!」


「いやいや!審査してるのあいつらですよね?」


「そうだよ。とくさーん!なんかそちらの皆さんの審査が『不正』だと池田君が言ってますが」


「え?『異世界横断ウルトラクイズ』で『不正』ですと?それは聞き捨てならないですね。みなさん!みなさんは『文学には嘘をつけない純粋な心』を持つ方ばかりですよね?」


「そうだ!」


「文学に嘘はつけません!」


「ほら。聞こえましたか?とめさーん。池田君は一体何を言ってるんでしょうね。自分の実力不足を棚上げしてるだけじゃありませんか?」


「そうだ!」


「さーくーぶん!さーくーぶん!」


 池田君の作品に対し『作文コール』が巻き起こる。それを見ながら一人ほくそ笑んでいる男が。


「(ふふふ。俺はチート能力『未来予想図(ドリカムファンなんでしょうね)』を身に着けているのだ!説明しよう!チート能力『未来予想図』とは!自分が思い描く未来がそのまま現実に起こるという能力!そして俺は先ほど『このランキングで俺の作品が二十一位で勝ち抜けする』と思い描いたのだ!そしてその未来予想図は確実に現実となるのだあ!)あ、次は僕の番ですね」


「お、田所。なんか自信ありそうだな」


「いえいえ。自信なんかありませんよー。でも『モブ』でもいいかなあー、とか思っちゃうと気が楽になりましたね」


「なるほど。そういう考え方もあるか。ちなみに田所。君はどうやってこの異世界に来たんだ?」


「あ、『ウーパーイート』のバイトをしてまして。あそこって結構ブラックでして。給料も完全歩合制ですからね。それで少しでも稼ごうとチャリンコで逆走してたら軽トラと衝突しまして。そのパターンですね」


「へー。新しいね。ちなみに田所はリアルの小説投稿サイトではどうなんだ?」


「あ、空いた時間にスマホでエッセイばかり書いてますね」


「読まれてるのか?」


「ええ。ランキングでは『常に上位』ですね」


「おお。大した自信だなあ。とくさーん!これから階段を降りるこの田所君はリアルの小説投稿サイトでは常に『エッセイ』でランキング上位の常連だそうです」


「聞きました。皆さん。『リアルの小説投稿サイトでは常にエッセイでランキング上位の常連』だそうですよ」


「(知ってるよ…。あいつ、クソみたいな批評ばっか書いてるもん)」


「(俺もあいつにエアリプならぬ『エア批評』でボロクソ自作をけなされたもんな。あいつは消えるだろう)」


「(私は…、あの時の恨み、はらさでおくべきか!)」


 そんな一万人の敗者である『モブ』の心の声の中、自信たっぷりで階段を降りていく田所君。そりゃそうですよね。『未来予想図』というこの場では無双な能力持ってますからね。そしてわざとらしく最後の一段を溜めて、溜めて、ようやく踏みます。


(溜めて)ブブ――――――――――――!


「うそおおおおおおおおおおおおおおお!」


「ざまあああああああああああ!!」


「いやいやいやいやいや!俺の『未来予想図』では確実にランキング二十一位になるはず!おかしい!イカサマだ!ノーカン!ノーカン!」


 一人でうろたえる田所君を見ながらニヤけたとめさんが声を掛ける。


「おい。田所ぉ。残念だったなあ。ところで『未来予想図』ってなんだ?」


「いや!僕のチート能力でして!自分が心の中で思い描いた『未来』がそのまま現実となる能力ですよ!それを僕は使ったんです!ランキング二十一位になり、勝ち抜けるはずなんです!ここまで何度も使った能力ですし失敗したことはなかったんです!それが発動しない時点でおかしいでしょう!僕の能力を消したでしょう!イカサマですよ!それは!」


「おいおい田所ぉ。何度も言わせるな!『異世界横断ウルトラクイズ』に『不正』や『イカサマ』は一切存在しない!」


「じゃあ僕の『未来予想図』が発動しないのは何故なんですか!」


「田所。君はドリカムのファンだろ?」


「…え、まあ。はい…。それが何か関係あるんですか!?」


「よーく考えろ。田所ぉ」


「え…、『あ!』」


「気が付いたか。田所ぉ」


「ま、ま、まさか…」


「『未来予想図』には1と2があるよなあ」


「う、う、嘘だ…」


「君の『未来予想図』はさらに上から『書き換えられた』んだろお。『未来予想図2』だったら君の思惑通りだっただろうなあ」


「ざまあああああああああああ!!」


 そんなこんなでサクサクいきます。結局、リアルの小説投稿サイトでランキング上位の常連たちはほぼほぼ全員下位十一名となり『モブ』決定。普段、リアルの小説投稿サイトで日の目を見ない方々が次のチェックポイントである『小説家に楽してなろー』に勝ち抜け決定!


 現在、生き残った転生者数。四十名。

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