第18話一万人の『ざまあ』
「とくさーん」
「はい。こちら『敗者の味方』とくさんです。一万人の『モブ』となった方々にお集まりいただいております。あー、君。どうですか。『モブ』になった感想は」
「つまんねえっす!」
「ですよねえー。せっかくトラックにはねられて異世界に転生してきて『さあこれからだ!チートでハーレムで俺TUEEEでウハウハだー!』から一転『モブ』ですからね。やってられませんよねえ」
「はい!」
「そちらのお方はどうですか?」
「あ…、現実世界に戻ることって可能なんでしょうか?」
「それは無理でしょう。でもこっちの世界も住みやすくていいと思いますよ。『モブ』ですけどね。永遠に。フォーエバー」
「はああああああああああ…」
「どうです?あっちで勝ち残っている五十一名を見て。『ハーレム』で『俺TUEEE』で『悪役令嬢』で『追放』で『ざまあ』で『ブラコン』で『Vチューバー切り忘れ』で『幼馴染が俺にずっこんで困ってるんですが』ですよ」
「それは許せませんね」
「ですよね。それで皆さんにあの五十一名の命運を好きにしてもらいます。先ほど、皆さん全員にあの五十一名が書いた『小説』をお配りしました。それを皆さんにそれぞれ作品ごとに『点数』をつけていただきます。まあ、皆さんであの五十一名の小説にランキングをつけるってことです。上位四十名が次の『小説家に楽してなろー』へと進めるのです」
「(ふふふ。さっき読んだけど、リアルの小説投稿サイトでランキングの常連のやつがいたんだよな…。あんなテンプレ量産クソ作品がなんで常に『ランキング上位』におるのか意味が分からんかったし。あいつの作品は読まずに『☆0』でクソ評価じゃあああああああ!)」
と思っている一万人の敗者であり、審査員となる『モブ』くん、『モブ』さんたち。まあ、そうなりますよね。
「とめさーん!こっちは準備オッケーです!」
「了解です。先輩。それじゃあ順番にここから階段で『小説家に楽してなろー』の地へと降りてもらいます。階段の一番下に設置されているあのゲート。自分が書いた作品が無事、『ランキング上位四十位』まで入ってましたら何も鳴りません。その時は『おめでとう!』です。ただ、『ランキング下位の十一名』は不合格のブザーが鳴ります。その時は『残念ながらリタイア』。『Uターン』。『モブ』決定です」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「ん?どうした萩野くん」
「いや!僕って転生前からリアルの小説投稿サイトでランキング上位の常連だったんですよ!」
「そうなの?じゃあ余裕でしょ」
「いやいやいやいやいや!審査するのはあの『モブ』たちですよね?」
「そうだよ。僕ととくさんの二人じゃ偏るってさっき君たちが言ったじゃんか」
「あのですね。あの一万人の『モブ』たちは僕のことを常日頃から『なんであんなテンプレ量産クソ作品がランキングの上位にいつも掲載されるんじゃい!』と掲示板で悪口ばっか書いてた人たちですよ」
「そうなの?なんで分かるの?」
「いやいや!僕、めっちゃ書かれてましたもん!そんなの僕のことが気に入らない人が書くに決まってるじゃないですか!」
「じゃあ聞いてみましょう。とくさーん。そちらの皆さんは『文学を裏切ることは出来ない。いい作品は純粋に評価する』人しかいませんよね?」
「え?そんな意見が出てるんですか?あり得ないなあ。念のため、聞いてみましょう。皆さんは『文学を裏切ることは出来ない』方ばかりですよねえ?」
「おおおおおおおおおおおお!!!!」
「『常にリアルの小説投稿サイトでランキング上位に掲載されてるテンプレ量産クソ作品だろうといいものは純粋にいい』と評価できますよねえ?」
「おおおおおおおおおおおおお!!!」
「とめさーん!お聞きになりました?」
「はい。充分です。ほら見ろ、萩野お!考えすぎだよ!じゃあ君から行ってみよう!」
「いやいや!絶対あいつらは『ざまあ』の準備してますから!」
「いいから早くいけ!階段を降りろ!」
そしてゆっくりと観念しながら階段を最初に降りていく萩野君。
「(いや!信じるんだ!俺の作品はいいものを書いているから受けているんだ!テンプレ量産クソ作品?流行りものに乗っかるのは常套手段じゃないか。俺の作品は一日一万PVを余裕で超えるんだぞ。それがたった五十一名中の四十位に入ればいいだけの話じゃないか。信じろ!信じるんだ!あの『敗者』のなかにも多くの俺のファンがいるはず!俺は勝ち残るんだ!よーし、あと一段降りれば。音なんかなるものか。いくぞー!)」
(溜めて)ブブ――――――!
「うそおおおおおおお!!!」
「ざまあああああああああああ!!」
一万人の『モブ』が一斉に歓喜の『ざまあ』をかます!とめさんもゲラゲラ笑ってます!
「萩野ぉー。大丈夫か?てか、本当に君はリアルの小説投稿サイトでランキング上位の常連だったのか?」
「…は、はい…。書籍化もしてますよ…」
「萩野ぉ!君の作品は五十一名中、最下位の五十一位だ!」
「え!?いやいやいやいやいや!それはない!いくらなんでもそれはないですから!」
「『異世界横断ウルトラクイズ』に不正は一切存在しない!」
恐るべし!人の妬みと嫉妬心!さあ、残る脱落予定者の数、十名!
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