第13話七輪が二か所欠けたら

 そしてとうとうこの『じゃんけん』の勝者五十名。正確には『敗者』から復活した十名とそのまま勝者となった四十名を合わせた五十名が決定!途中、十回の『ざまああああああ!!』がありましたのも『敗者が主役』の『ウルトラ』ならでは『ラノベ』ならではの光景です。


「それじゃあ五十名の諸君!おめでとおおおおおおおおおお!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 とめさんの掛け声に歓喜の雄たけびで答える五十名。


「バンザイ!」


「バンザーイ!」


「バンザイ!」


「バンザーイ!」


「バンザイ!」


「バンザーイ!」


「よし!それでは勝者五十名の諸君は用意されたバスに乗ってくれ。次の『機内ペーパー』まで勝利の余韻をかみしめるのだ」


「(え?バス?)」


「(豪華客船『えすぽわーれ号』はなにやったの?)」


「(結局…、『あれ』がやりたかっただけちゃう…)」


 そんなことを思いながら五十名の生き残った転生者たちがバスに移動します。そして残された二千七百六十五人の敗者決定となり『モブ』と化した元転生者たち。そして『敗者の味方』とくさんが。


「『じゃんけん』に勝ったのに飛行機に乗れなかった。そんなことがあっていいのか?心はすでに世紀末。そんなところだろう。特に一度は『勝者』となったはずなのにここにいる十名は。だがしかし!『異世界横断ウルトラクイズ』は『知力』『体力』そしてなんでしょう?」


「『時の運』」


「そう!君たちは『時の運』がなかったから負けたのだ!けれど私は『敗者の味方』です。過去の大会でもずーっとそれを徹底してきました。そしてわたくし、スタッフに交渉しまして。それでですね。手元に今、『飛行機のチケット』を三枚いただいて参りました。つまり、この場にいる二千七百六十五人のうち『多くて』三人はここから復活出来るのです」


「え?」


「(『多くて』?)」


「(敗者復活があるとは聞いてたけれど…。『多くて』ってどうゆうこと?)」


 そんな敗者たちの疑問の声に答えるよう説明を続けるとくさん。


「今から航空券一枚につき、一問ずつ問題を出します。もしその問題を君たちが答えられなかった場合。その航空券は一枚無駄になってしまいます。もし三問ともミスが出てしまった場合、三枚とも無駄になってしまいます。それでは『えすぽわーれ号』敗者復活戦、第一問に参りたいと思います」


「え?」


「いやいやとくさん!」


「問題を出しますって〇×じゃないですよね?どうやって答えたらいいんですか?」


「君たちの頭の上を触ってみてください」


「あ!」


「ボタンが!」


 敗者全員の頭の上に早押しボタンが。これは…。まさか…。


「そうです。松戸のかとう君が一人一人に取り付けてくれました。ちなみに松戸のかとう君は『時を止める』能力者です。それでは問題です。あ、念のために。早押しですが、最初にボタンを押した解答者が不正解だった場合、その時点でこの航空券は一枚無駄になってしまいます。では問題」


「い、いや、ちょっと…」


「え、誰かが先に押しちゃえばもう終わりじゃん!」


「かと言って問題を聞かずに早押し重視で先に押したら…。他のやつらから…」


 あとがない敗者たちがわちゃわちゃしてます。それでもとくさんは続けます。


「問題。『敗者復活戦』、これを漢字で書くと画数は合わせ一体いくつになるか!?」


 チチチチチチチチチチチチチチチチ。問題と共に焦らせる音が『ぶるーすかいの魔』に流れます。


「さあ、制限時間は十五秒だ。分かったらボタンを押してお答えください」


 焦りながらも『敗者復活戦』の画数を数える元転生者現『モブ』の敗者たち。ちなみにとくさんの後ろには大きく『敗者復活戦』と書かれたボードが。松戸のかとう君は優しい!どこまでも優しい!


「(ひやひやしたぜ。しかーし!俺も『時を止める』チート能力を持っている!ここは時を止めて冷静に数え…、あれ?時が止まらない!何故!?あ、今の俺は『モブ』なんだ…。能力もすべて失ってるんだ!やべえー!えーと『敗』はえーと、いち、にい、さん…)」


 そんなおバカなことを普通に頭の中で考えている敗者も多数。そして六秒ほどで敗者の一人がボタンを押します。


 テー―ン♪


 『ぶるーすかいの魔』に設置された大型ディスプレイに番号が表示されます。どうやら1572番の方がボタンを押されたようです。


「はい。1572番の方。どうぞ」


「100!」


 ブ――。不正解を意味する音が『ぶるーすかいの魔』に響き渡ります。


「残念。不正解。何で100と答えた?1572番の藤谷さん」


「え、いや、100かなあーと」


「そんなアバウトな適当な考えで。残念。ちなみにそこの川田君。さっきは強烈な『ざまああああ!』を頂戴していたね。あなたはいくつだと思いましたか?」


「53?」


「そう、五十三画なんですよねえ…。押してもらえればよかったのですが。それではこの航空券はダメです。そして偶然!なんとここにちょうどいい七輪が。はい。ではこの航空券は無駄になりましたので七輪で燃やします」


「ああああああああああ…」


「僕だってこんなことはしたくないですが。実はですね。これはロサンゼルスオリンピック用の七輪なんですよね。二か所欠けてるでしょ?七輪で二か所欠けたら五輪と言いまして」


「はははは、はあ…」


「いやー、本当残念だなあ。こういうことはしたくなかったんです」


 七輪の上で燃えている生還用の航空券の一枚を眺めながら呆然としている元転生者現『モブ』の敗者たち。


「(藤谷のやろおおおおおおお!初めて知ったけどとりあえず後でぶっ殺す!)」


 敗者復活用の航空券はあと二枚。

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