書籍12/28発売・予約開始記念SS※ちょびっ……っとだけおセクシーです
「いたっ……!」
人差し指にするどい痛みを感じて、コーデリアはパッと指を引いた。見れば、白い指の腹にはつぅ、と血が少しにじんでいる。
「うう。品質のいい紙はありがたいのですが、指を切るのは何度経験しても嫌ですわね……」
コーデリアは今、ケントニス社に頼んでいた書簡の見本を持っていた。それは厚みのある紙だったため、開こうとした時に人差し指を切ってしまったのだ。
(さっさと治してしまいたいところだけれど、残念ながら私は聖魔法が効きにくい体質なのよね。かといって包帯を巻くほどの傷でもないし……ハンカチでも巻いておこうかしら?)
なんて思っていると、気付いたアイザックが歩いてくる。
「大丈夫かい、コーデリア」
「ええ、これくらい全然大したことではありませんわ。舐めておけば治りますか――」
コーデリアがそう言いかけた時だった。
すっ……っとアイザックの手が伸びて来たかと思うと、コーデリアの手をとって、血の出た指をぱくりと口にくわえてしまったのだ。
「で、殿下……っ!?」
傷口がじん、と沁みて、コーデリアは一瞬顔をしかめた。
「あの、アイザック様。その、血が出ているので汚いですわ……!」
あわてて手を引こうとしたものの、アイザックはその手を強く掴んで離さない。
「あの……!?」
戸惑うコーデリアの目の前で、目を伏せた彼はゆっくりと、まるでコーデリアに見せつけるように指を舐めはじめた。
熱くてとろけるような舌が、ねっとりとまとわりつく。初めての感触に、コーデリアは目を剥いた。
(で、殿下が指を、舐めっ……舐めっ……舐めてる!? そ、そんなのセクシーすぎて反則ですわ!?)
一瞬でコーデリアの顔が真っ赤になった。
そんなコーデリアをアイザックがちらりと上目遣いで見る。瑠璃色の瞳はいつにも増して潤んでおり、そこにはかつて見たことのない妖しい色気が浮かんでいた。
(こっ、こんなご褒美シーン、原作ですら見たことがないのに!?)
原作ゲームに登場したアイザックのご褒美スチルは、手にキスとか髪にキスとか、それぐらいのいたって健全なものがほとんど。それらだって、ハッピーエンドを迎えてようやく解禁されたくらいなのだ。
それなのに。
(な、なん……何ですのこの舐め方は!!! 確かに舐めておけば治ると言ったのは私だけれど!)
気づけば沁みるような痛みは、とっくに甘いうずきに変わっていた。
コーデリアが顔を赤らめてはぁはぁと荒い息をしていると、ぱっと唇を離したアイザックがけろりとして言う。
「うん、治ったね」
見れば、人差し指の傷は消えていた。どうやら、彼が舐めながら水魔法で癒してくれていたらしい。
「あ、ありがとうございますわ……! 水魔法をかけていてくださったんですね」
(なんだ、治療のためだったのね。それなのに私ったら……)
胸の鼓動を聞かれないようそっと手で押さえていると、アイザックが満足そうに微笑んで自分の席に戻る。
それを見ながら呼吸をなでおろしたコーデリアは、ふとあることに気が付いた。
(……あれ? でも水魔法をかけるのに、指を舐める必要はなかったのでは……!?)
バッとアイザックの方を見ると、彼は何食わぬ顔でにっこりと微笑んでいた。
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カクヨムコン7恋愛部門大賞『広報部出身の悪役令嬢ですが~』が、12月28日に角川ビーンズ文庫様より発売!
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私のデビュー作、ぜひ予約して頂けると嬉しいです!
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