第40話 まぁ、いっか!


「…………」


「…………」


 何なんだこの空気。一応舞さんの家は伝えて車は走っているけれども。けれども。


 なんとも答えられないまま、車が走り出したため、ずっと俺の答えを堀田さんが待っているという状況である。


「そのー、舞さんとは、何もなくて。月子とか、色んな人とあつまってパーティーしたことがあって、それでその会場が舞さんの家になったことがあるからであって……」


「では、なぜそれがパッと出てこなかったのでしょうか。やましいことがあるから答えられなかったのではないのですか?」


 すいません、その通りです。割とやましいことがありました。


「いや、その…………すいません、自分の口からはちょっと……」


「へぇ……そうですか。…………それはいけませんね」


 なんだか、最後の言葉は聞き取りずらくて、何言っているかわからなかったが、納得してくれていないことは確かだった。



『結城 舞』視点


バタンッ。


 車のドアが閉まる音で意識が少しづつ覚醒しだす。頭が痛い。ちょっと飲みすぎたかもしれない。


 目を開けようとするが、まるで瞼が閉じてくっついてしまっているように硬くて開かない。まぁ、このままでいっか。


 さっきからなんとなく一夜の声が聞こえるし、多分誰か呼んで送ってくれているのだろう。年上なのに申し訳ない。ほんとに。


 なんか、起きてるのに寝てるふりするのデジャブだなーなんて感じながらも、なんとなくひー君と、もう一人いるだろう人の声に耳を傾ける。


「あぁ、月子は同い年だし、学校も一緒ですからね」


 ひー君の声。久しぶりに会ったときは声変わりしていて驚いたけど、今ではこの声は私を安心させてくれる。


「そうですか。まぁ、そんなこと全く興味はありませんが。では出発しますので、結城さんを起こして、住所を聞いておいてください」


 女の人の声? ……あぁ、確か、新しくひー君のマネージャーになった人かな? まぁ、それは良いとして、ここが起きるタイミングかなぁ。


「ぉ——」


「あぁ、それなら大丈夫ですよ」


 あ、遮られた。でも、覚えてるみたいだからいっか。


「確か——」


「え゛?」


 喉から絞り出したような、驚嘆の声。


「…………え?」


 それに釣られて少しビビッてるひー君の声。なんか、かわいい。


「なんで、知ってるんですか…………?」


 あー、あぁ。あー。そ、そーゆーことね? そりゃあ、「え゛」だね。うん。


 取り合えず、ひー君はいい感じに言い訳を——


「…………あ゛」


 …………あ゛、じゃないんだよねぇ。


「…………」


「…………」


 どっちも黙っちゃったし。ここで私が起きたらもっと修羅場になるだろうし。


 ごめんけど、後は頑張ってねー、ひー君。


 私はそんなことを思いながら、二度寝をするために、頭の中を真っ白にした。

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