第14話 お昼ご飯
俺はご飯を食べ終わり、持ってきていた緑茶を飲む。
昼ごはんもひと段落がつき、そろそろ午後の授業の時間が近づいてきていた。
「そろそろ行こうか。もうすぐ午後の授業が始まるし」
「あら、そうなの? もっとお話ししたかったんだけど、まぁしょうがないわね」
「あはは、そう言ってくれるとありがたいよ」
慣れない長話を頑張ってよかった。それにしても輝夜さんは次から次へと話題が出るから本当に今までボッチだったのかと時々疑わしくなる。
体育館の裏を出て、渡り廊下を通る。風通りが良く、とても涼しい。
風でその美しい銀髪が揺れている輝夜さんをみて、ふとある疑問を思い出す。
「そういえば輝夜さん、なんで転校してきたの? 前の学校の方がすごくいいと思うんだけど……」
「……えーっと、うーんと、賀久おじさまが『せっかくなら一緒の学校に通ってみたら?』 と言われて……」
少し間があったように感じたが、きっと俺の考えすぎだろう。
「そ、そんな簡単に転校できるのか……さすがだなぁ」
「それは親のちかr……じゃなくって、賀久おじ様が手配してくれたのよ!!そう!」
……今、結構スレスレな発言出てなかったか?
「今親の力って……」
「ちっ、違うわ! 断じて違うわよ!! 親の力をフル活用して無理やり一夜のクラスに転入なんてしてないわよ!?」
……ほぼ自白してるじゃん。それにこう言うところは話し慣れてないの、何なんだよ。
とりあえず話を合わせておこう。世の中には知らなくてもいいことがたくさんあるんだろうし。
きっと今回もそうなんだろう。きっと。
「そ、そうなんだね……」
「そ、そうよ!!」
顔をプイッと逸らし言う輝夜さん。
まぁ、なんで転入してきたのかは謎だが、友達が転入して来るのは俺としてもとても嬉しいことだ。
「ま、まぁ、何がどうあれ、改めてよろしくね?」
「う、うん! こちらこそ!」
そっぽ向いていた輝夜さんはこっちを見ながら少し頬に赤みの残る満面の笑みでそう言った。
※
ホームルームの終わりを告げる鐘が鳴る。それと同時に生徒たちは一斉に各々の部活や帰路に着く。
俺と輝夜さんも例に漏れず、その生徒たちの波に乗り廊下を通り、靴箱へ向かう。
わずかな時間だったが満員電車並みの密度だったためか、輝夜さんがずっと両手で俺の右手を掴んでいた。
「うぅ……」
こんなに人がいることに慣れていないのか、輝夜さんはいつもよりもかなり萎縮していた。
そのせいでまるで小学生を引率する大人の気持ちになる。
まぁ、輝夜さんの凶暴なたわわを見ると、すぐさまその思考はどこかへ飛んでいくのだが。
しばらくすると靴箱に着き、生徒の密集具合が僅かに緩和される。
流石に手を離した輝夜さんと俺は室内用の靴からローファーに履き替える。
「やっと出れたわ……何よあの地獄。毎日あんな物を体験するのはちょっと嫌ね……」
「俺もあの波の中を帰ったのは初めてだ……今まで時間をずらしてたし……」
何よりもデブな時の俺があの中に入ったら、隣で肌が触れている人にどんな顔されるかわからなくて怖かったし。
「時間をずらす……そんな手があったのね。今度からそうしましょう?」
「うん、そうだね。輝夜さんがそう言うならそうしようか」
なぜか一緒に帰る事前提になっているが、まぁいっか。
そんなこんなで校門の前まで来ていたその時、妙に校門の周りがざわついていることに気づく。
「どうしたんだろ……」
「どうしたのかしらね……」
歩いて徐々にそのざわつきの中心に近づいて行く。
そしてそのざわつきの中心には見覚えのある黒塗りの車。
そしてその前には危ない組を引き連れてそうな初老の風貌の男が一人。
「「なんで賀久おじさん(様)が!?」」
取り合えず一言言わせてくれ。なんでそんな登場しかできないの?
あちらも俺と輝夜さんの姿を見つけたようで手を軽く振ってくる。
それと同時にざわついていた生徒たちの視線が一斉にこっちを向く。
まずい。そう直感で判断した俺と輝夜さんはすぐさま黒塗りの車に飛び乗り、そして声を合わせて言う。
「「早く出して!!!」」
翌日、俺と輝夜さんは、学校で危ない人の関係者認定され、先生に呼び出される羽目になり事情を説明するのにかなりの時間を要したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます