第20話

 俺は洗い物を終わらせ、ゴミ1つ落ちていない廊下を歩いて、新奈さんに場所を教えて貰った配信部屋へ向かう。


「新奈さん、洗い物終わりましたよ」


 俺がそう言いながら配信部屋に入ると……


「し、死んでる!?」


 扉を開けると、新奈さんは床にうつ伏せで倒れていた。


「勝手に殺すな〜」


 そう言いながら新奈さんが身体を起こす。


「見てくれこの部屋を」


 俺はそう言われ、部屋を見渡す。


 最初に見せてもらった時には、物が散乱としていた部屋は、見違えるほどに綺麗になった。


 部屋の中央に、もふもふのカーペットが敷かれ、その上にガラスの机が置かれている。

 机の上には2台のパソコンと配信機材、そしてお茶の入ったペットボトルが2本置かれている。


 もふもふのカーペットの上に寝っ転がったら気持ちよさそうだ。

 だが、新奈さんが倒れていたのはフローリングだ。


「別に何ともないですけど…」


「むぅ、わからないのか?ここを見ろ!ここを!」


 新奈さんはそう言って床をペチペチ叩く。


「床?」


「そう!床だ!床がみえるぞ!」


 あぁ、なるほど、新奈さんには今まで床が物で埋もれてて、床を見る事が無かったから、床が見える事が珍しく感じるのか。


 床で喜んでる人なんて初めて見た。

 なんか、やばい、笑いが込み上げてくる。


「なに、ニヤニヤしてる!笑ったね?その心、笑ってるね!」


 新奈さんは恥ずかしいのか、床で喜んでたことを有名なネタで話を逸らそうとした。


「わ、笑ってッ、無いですけッ、ど?クッ」


 所々少し吹き出してしまった。


「もう、声がプルプルしてるし、笑いが溢れてるじゃん!

 もう怜斗君なんて知らないっ!」


 そう言って新奈さんはそっぽを向いてしまった。


「すみませんって、床で喜んでる人なんて初めて見るからつい……それより時間大丈夫ですか?」


 時計を見ると、配信予定時間の2分前だった。


「大丈夫、もう準備はバッチリだよ」


 なんだ、ずっと床で喜んでて、何もしてないかと思った。


「あ、それと俺のフィルとしての体ってどうするんですか?」


「あぁ、それなら既に響君に頼んで、貰っといたよ。

 ふっふっふー、これでフィル君は僕の物だ」


 いつの間に…


「あなたの物じゃ無いですけどね」


「まぁまぁ、細かいことは気にしない〜、それじゃあ始めるからこっち来て〜」


 配信モードになった新奈さんに手招きされて、俺は新奈さんの横にあるパソコンの前に座る。


「怜斗君はそっちのパソコン使って。

 もうコラボの設定はしてあるから、怜斗君が動くと、こっちの配信でも体が動くからね」


「そうなんですか?」


「そうそう〜それじゃあフィル君、始めるよ〜」


 そう言って新奈さんいや、ミエルさんが配信を始める。


 響とは違って、最初にアニメーションのようなものが流れ始めた。


「このアニメーションが終わったらマイクのミュート外すから、挨拶考えといてね〜」


「わかりました!」


 う〜ん、どうしようか…ミエルさんの配信には、俺の事を知らない人も居るだろうし、初めましてって言った方がいいよな。


 俺が挨拶をどうしようか考えていると、アニメーションが終わり、ミエルさんの体と、俺の体が表示される。


「こんダラ〜」


 :こんダラ〜


 :こんダラダラ〜


 :フィル!!大丈夫か!?


 :フィル君を解放しろー!


「ふっふっふー、フィル君は私の嫁として頂いたぞ〜

 てことで、なんと私のマイホームにフィル君が来て下さりました〜それじゃあフィル君、みんなに結婚の挨拶を〜」


 え?これ大丈夫?本当に炎上しない?

 すっごい心配なんだけど…


「え〜と、初めましての方は初めまして、恋愛経験無しの、フィルって言います。

 結婚はミエルさんが勝手に言ってる事なんで、聞き流していいですよ。

 よろしく!」


「聞き流さないでよ〜結婚しよーよ〜」


 :恋愛経験……無し…だと?


 :なるほど…フィルは俺に1つでも多く初めてを捧げようと、してくれてるのか


 :いやいや、家事の出来る男子が、恋愛経験無し?なら私が…


 :フィル!大丈夫か?襲われなかったか?



「襲われなかったかって、皆私をなんだと思ってるの〜?」


 :イケボなら見境なく飛びつく変態?


 :生活能力皆無の堕天使


 :ストーカー?


 :アホ


 コメント欄に皆、好き勝手に書いていた。

 まぁ、生活能力皆無はあってるね。


「ちょっと〜、皆酷くない?アホはもうただの悪口じゃん

 フィル君酷いと思わない〜?」


 ミエルさんが話を振ってきた。

 一芝居してみようかな。


「へ〜、ミエルさんってイケボなら誰にでも飛びつくんだ〜」


 俺は隣にいるミエルさんの方を見て、できるだけ軽蔑するような声色を出した。


 するとミエルさんは困惑した様子でこちらを向く。


「え?え?フィル、君?」


 :ヒェッ


 :フィルお前、どうしちまったんだ?


 :ミエル大困惑


 :最っ高!もっとその声で罵って!


 :切り抜き師頼んだ!


「いや、あの、別に誰でもって訳じゃないよ?」


 ミエルさんは、素が出るほど困惑しているようだ。

 このくらいにしとくか。


「冗談ですよ!冗談!」


 俺がそう言うと、ミエルさんは机に伏せて、ぐったりとする。


「あ〜もうびっくりしたよ〜焦った〜」


「あはは、少し一芝居させてもらいました」


「もうほんとに、私の事嫌いになっちゃったのかと思ったよ〜」


「大丈夫ですよ、俺はよっぽどの事が無い限り、人の事は嫌いになりませんから」



 :フィル君演技の才能もありじゃない?


 :これは…ボイス販売が楽しみだ


 :【至急】ボイス販売求む


 コメント欄に、ボイス販売を求めるコメントが多数寄せられていた。


「ボイス販売いいね〜」


「ボイス販売か、いつかはしたいね。

 でもまだ自分のチャンネルで1回も配信してないから、まずはそこだな」



 :そういえばそうだったね


 :そうじゃん、早く配信してくれ〜


 :まだ1回も自分のチャンネルで配信してないのに、チャンネル登録1万行ってるのすごくない?


「え?1万?ほんとに言ってるの?」


「え〜?フィル君自分のチャンネル見てないの〜?」


「YouTubeは通知切ってるので、別に確認はしてないですね。

 てかチャンネル作ったの昨日なのに、そんなに増えてるの?嘘だとしか思えないんだけど」


 俺はスマホでYouTubeを開き、自分のチャンネルを見る。


「え?ホントじゃん」


 スマホで の画面には11258と表示されていた。


「フィル君おめでとう〜!」


 :おめでとう!!


 :すげぇぇ!


 :おめでとう🎊


 :ふっ、俺は3桁の時にチャンネル登録できたぜ


 :俺2桁〜


 :ふっふっふー、聞いて驚け!私は1桁だ!


 :参りましたぁぁぁ


 皆俺の事を祝ってくれる。


「皆…ありがとう」


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 読んでくださりありがとうございます。


 今書いてて気づいたんですけど、この小説なんか週一更新できてるくない?

(テストの時以外)

 なのでこれから、基本週一更新をしていこうと思います。


それと男子高校生のは、じ、め、て頂きました!(レビューコメントの事です)


 これからもよろしくお願いします。

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