第20話 復讐を誓う追放冒険者


ここは、とある洞窟。

クエストを達成しようと奮闘するB級冒険者のパーティーがいた。



「くそ! こんなはずじゃないんだ!!」



ウェルを追放したB級冒険者。

そのパーティーのリーダー。

剣士ビリー。


巨乳美女だが目つきの悪い魔導士カーリン。

スキンヘッドでムキムキの拳闘士ユルゲン。


3人はクエストのため洞窟に来ていた。



「あいつに負けてから何もかもグチャグチャだ!」



剣士ビリーはウェルに負けて、罰ゲームで街を全裸逆立ちで一周するという醜態をさらした。


親である領主から勘当され、その精神状態のせいでクエストが失敗続きになってしまった。



「落ち着いてよビリー!

また失敗なんてイヤよ!」



基本的にはビリーの先走りや焦りによる失敗が多い。

カーリンはそれを懸念している。



「冷静になれ! あんたはリーダーだろ!」



ユルゲンも同じ気持ちだ。



「うるせえ!!

オークの巣の排除ぐらいで俺が殺られるか!!!」



オーク。

豚のような姿をした魔物で危険度Cランク。

一体ではなく巣を根絶するためBランクの任務だ。



「おやおや、何やらお悩みがありますかな?」



「!? だれだ!?」



後ろの方からパーティーの誰でもない声がする。

全身黒いローブでフードを被った怪しい男がいつの間にか立っていたのだ。



「気味の悪い。何者ですか?」



カーリンに応じる謎の男。



「私は楽園の使徒『ラプラス』の使いです。

この世界を救いたい。あなたがたを救いたい。

そんな善良なる活動をしている組織です」



「自分で善良とか言うやつにろくな奴はいねぇよ!」



謎の男の言葉を否定するユルゲン。



「信じてもらえないかもしれません。

しかし、私にはわかります。

そちらの剣士さん」



「あ? 俺か!?」



「あなたの心は怒りと不安に満ちています。

いったい何があったのでしょうか?

私はあなたに力を与えて救うことができます」



謎の男はフードからチラッと見える目で、ビリーの目に向かって視線を送りながら話し続ける。


そしてたら、ビリーは虚ろな目になっていった。



「ち…か…ら…」



「おいビリー!

こんな怪しいやつの話なんか聞かなくていい!

さっさとクエスト達成しようぜ!」



ユルゲンはさっさとクエストを終わらせようと説得するが…。



「力…力か…そうだ…力だ!」



「ビリー?」



ビリーの様子が明らかにおかしくなっている。



「力! 力!! 力!!!!

力さえあれば俺はこんな惨めな思いをすることはなかったんだ!

力さえあればあのガキに負けることはなかったんだ!

力さえあれば俺は一流の冒険者になれるんだ!!」



ビリーは叫び声をあげる。

まるで力があれば自分の今の状況を全て打開できるかとように。



「そうです! 力です!!

あなたが望むなら力を与えましょう」



謎の男を共鳴するかのように声をあげる。



「おい! どうしちまったんだ!?」



ユルゲンがビリーの肩を掴んだ瞬間。



ズバ!


ズバ!



ビリーはユルゲンとカーリンを斬った。



「ぐはっ!」



「がっ!」



血を流して倒れ込む二人。



「邪魔するなぁ!!!

俺の邪魔をするやつは全員敵だ!!!」



ビリーは狂ったように剣を振り回す。



「くへひゃひゃひゃひゃ!!

ひゃははははっ!!」



ビリーの奇怪な行動と叫び声に感動をする謎の男。



「素晴らしい!!!

あなたには才能があります!!

これほど神の恩恵を与えられるなど!!

さぁ、奥へ参りましょう。

あなたに力を授けます」




「早く!! 早く早く力を!!!

あのガキをぶっ殺してやる!!!」



謎の男とビリーは洞窟の奥へ進んでいった。



「うぅ…ビリー…」



微かな意識の中、二人の姿を目にしながら、

ユルゲンは気を失った。











一方その頃。



グリーンドラゴン討伐から2週間が経過していた。


俺はまた良いクエストがないかギルドの掲示板を眺めている。



「うーん、A級冒険者向けのクエストはないなぁ」



逆に言えば平和の証。


そして俺は、このギルドの唯一のA級冒険者だ。


色んないざこざや、突然の冒険者の決闘を申し込まれるとかあったけど、やっと実力を認めてもらって、今はギルド内の空気はいい。


うんうん、争いはないことに限る!


まぁ、焦ってクエストを受ける必要はないか。

1年分も宿に泊まれる報酬はあるんだし。


よし!


前世で憧れていて一度もやったことのないアレをしてみるか!



そう!!!



真っ昼間に酒を飲む!!!!!!



「よーし! 早速ギルドの酒のカウンターへGO!」



俺はクエストの受付とは別の酒のカウンターへやってきた。



「おねーちゃん! エールを1つ!」



エールとは簡単に言うと地球でいうビールのことだ。



昼間から酒を飲んでのんびりしてみたかったんだよな!



「ボクー?

子供はまだお酒を飲んじゃダメなんだぞ?」




ガーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



しまったーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



俺の姿は子供だったーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



中身36歳なのに酒が飲めないのかーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



「残念じゃったのう!

お子様はジュースでも飲んでおるのじゃ。

そこの者、妾にワインを持ってくるのじゃ」



「…お嬢ちゃんもまだ早いわよ。

お酒は大人になってからね」



「妾は大人じゃーーー!!!!!!」



笑顔は未成年の飲酒を許さないカウンターのお姉さん。


エリスお嬢様ドンマイ!


やれやれ、しばらくお酒はおあずけかな。



ガタン!



誰かが勢いよくギルドの扉を空けた。



「た、た、大変だ!!!

オークの大群がこっちに向かって来ているぞ!」



緊急事態発生か!?

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