第13話 リザード1000体ではなかった
俺とエリスお嬢様は自身の力を試す為にウォーミングアップがてらCランクの仕事『リザードの群れ退治』を受けることにした。
リザードは危険度Dで、Cランクなら20~30体ぐらいの群れだろうと俺は予測していた。
しかし、実際は推定1000体の異常発生だ。
いくら危険度Dのリザードとはいえ多勢に無勢。
1000体もいれば危険度Aに匹敵するだろう。
村長曰く、その数は村の高いところから眺めて遠くから確認したという。
数体ぐらいの時は村の男たちが退治してくれていたが、1000体のリザードは何故か村を襲わず固まって何かをしていたという。
さらに、その1000体はどこかへ消えたり
また突然現れたりと繰り返しているという。
なんじゃそら!?!?
うーん、ウォーミングアップのつもりがガチじゃないか…。
「まだ子供だというのにこんな危険なことを任せるのはとてもとても…」
そういえば俺は子供だったな。
中身が36歳のおっさんだからいつも忘れる。
まだ慣れないな。
「大丈夫です! 村長さん!
俺はこうみえてもA級冒険者です!」
「そうなのじゃ! 妾たちに任せるのじゃ!」
そう、俺たちならなんとかなる。
「おおおおお!!
こんなにまだ幼いというのになんと立派な!!
是非お願いいたします!」
交渉締結!
日も暮れてるし明日にリザード退治するか。
さて、腹も減ったし…
「村長さん、台所借りてもよろしいでしょうか?」
飯でも作るか。
「なんと! 客人にそのようなことは…!」
「任せるのじゃ村長よ!
妾のペットの料理は格別なのじゃ!」
エリスお嬢様。
初対面の人にペットって呼ぶの辞めて…!
誤解するから!
そして、手持ちの食糧で俺はご馳走様を作ることにした。
「さぁ! 召し上がれ!」
空間魔法『アイテムボックス』。
色んなものを収納して取り出すことができる。
このアイテムボックスの空間は時間が止まるので食糧の長期保存ができる。
出発前に購入した食糧と、途中で倒した魔物の肉を使って、村長さんだけでなく村の人全員に料理を振舞った。
「なんと! こんなご馳走を…」
「こんなご馳走は何年ぶりだ!」
「美味しい!美味しいよ!お母さん!」
「慌てないで! 料理はまだたくさんあるから」
驚く村長さん、喜んで食べる子供たち。
「美味いのじゃ! 美味いのじゃ!」
そして、安定のエリスお嬢様。
俺って色んな人と美味しいものを食べるのが好きなのかもしれない。
前世でイジメられてたからこそ
こういうのに憧れていたんだろう。
そして、種族も異世界も関係なくこうしてワイワイ騒ぐのを見るのってなんか楽しいし、心が落ち着く。
こうしていられるのもエリスお嬢様のおかげだ。
ありがとう。
それにしても1000体ものリザードか…。
そんなにたくさんどこから来たのか?
そしてこの村はよく無事だったな?
そして、今どこにいるのか?
謎が多すぎる。
「お兄ちゃんもどうぞ!」
村の女の子が料理を持ってきてくれた。
「ありがとう!」
俺は笑顔で返して、頭を優しくなでた。
その女の子はほほを少し赤くしながら走ってどこかへ行ってしまった。
ん、どうしたんだろ?
まぁいいか、俺はあの女の子も含めて
この村を守らなければ!
「じとー…」
あれ?
なんでエリスお嬢様が俺に向かってジト目を!?
だが悪くない!!!!!!!!!!!!
一方、その頃。
村から少し離れた洞窟。
「ふっふっふ…もう少し待っててね。
可愛い可愛い私のリザードたち。
すぐに暴れさせてあげるからね」
全身を黒いローブ。
フードを被って顔が見えない怪しい男がそう呟いていた。
翌朝、何やら地響きがしている。
大勢の生物が歩いているような…。
「ウェルさん! エリスさん! 大変です!
リザードの大群がこちらに向かってきています!」
ついに来たか…。
さて、こちらから出向いてやるか!
「皆さんはどこかへ避難していてください!」
1000体のリザードは骨が折れるが
倒せない数じゃない。
俺は空を飛んでリザードたちの様子を見ることにした。
風魔法『エアスカイ』
空を飛ぶ魔法だ。
上空からリザードの大群を発見して俺は驚いた。
…1000体じゃなくね…?
「10000体はいるぞこれ!!!!!」
聞いていた数の10倍じゃねえか!!!!!!!!
なんなのリザードって!?!?
そんなに繁殖するほど交尾するの!?!?
発情期か!? コノヤロー!!!!
などと銀〇ネタを言っている場合じゃない…。
10000体のリザードって下手したら危険度Sランクいくんじゃね?
とりあえずやるだけやってみるか…。
最悪、『アイテムボックス』で村人全員を避難させる方法もあるしな。
「まずは魔力消費を抑えるために剣術で数を減らすのじゃ!」
エリスお嬢様のアドバイス。
固有魔法『ラーニング』の特性として
ラーニングをベースにして色んな魔法を放つのだが、魔法によって魔力の消費量が違う。
そして、威力の高い魔法ほど消費量が高く、威力が低い魔法ほど魔力の消費量が少ない。
なので、まずは剣術で数を減らすという。
あらかじめ土魔法『アイアンメイク』で作っていた剣を両手に持ち、上空からリザードの群れに突っ込む。
ズドーン!!!!
勢いよく『何か』がやってきて動揺するリザードたち。
そして、
ズババババーン!!
リザードの首が、胴体が、足が
一瞬で20体分斬り飛ばされた。
右手にココさんの剣術【迅剣】。
左手にゲルドさんの剣術【剛剣】。
これが俺の新技!
ラーニング2つ同時発動だ!
10000体のリザードと2人の新人冒険者の戦いが始まった。
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