第14話 楽園の使徒『ラプラス』

先日、村に行く途中の森の中。



「ラーニング2つ同時発動!?」



「そうじゃ」



ラーニングってそんな器用なことができるのか。



試行錯誤をして何度もやった。



右手に炎魔法! 左手は剣術!


遠距離と近距離のバランスの取れた形態!




「うおおおおぉ!!!!!!!!

難しい!!!!!!!!」



片方、剣に集中すれば魔法は消えて打てなくなる。


片方、魔法に集中すれば剣術が使えなくなり、刃物を振り回すだけになる。



うーん、どうしたものか…。



「そうだ! 剣術と魔法で区別するから難しいのか!」



俺には剣術が2つある。


ココさんからラーニングで習得した剣術。

ゲルドさんからラーニングで習得した剣術。


この2つは同じではないが剣術だ。



「うおおおおぉ!!!!!!!!

なんとなくコツがわかった!!!!」



難しいことには変わりないができた!


ココさんのスピード重視でカウンターを狙う剣。


ゲルドさんのパワー重視で大勢吹き飛ばす豪快な剣。



二刀流でタイプの違う剣術を使えるのは、世界で俺だけだろうとエリスお嬢様は言った。


コツを掴んだので次は魔法だ。


やってみると対極する属性の魔法を2つ同時に発動するのは難しい。


例えば炎魔法と氷魔法、雷魔法と水魔法、風魔法と土魔法、闇魔法と光魔法みたいな感じだ。


しかし、剣術で得た要領で似ている属性ならどうだ?



すると炎魔法と雷魔法、水魔法と氷魔法といった具合に片方づつの手から魔法が撃てた!


魔法の研究……面白い!!!!


更なるチャレンジに挑んで3つ同時をやってみたけど全然ダメだ。


どうしてもどれか一個疎かになる。



「今回はここまでか…」



これ以上やっても実践じゃ頭がついて来れず使えない場合もあるからな。




そして、今に至る。




「うおおおおぉ!!!!!!!!」



ズバババババ!!!!!!!!



俺はリザードたちに無双状態。


とはいえ数が多い。


そろそろ魔法で減らすか。



「炎魔法『フレイムバースト』!!」



俺は直径150cmほどの大きな火の玉を手から放ち、20体ほどのリザードを吹き飛ばした。



「とはいえまだまだいるなぁ…。

さすが10,000の数だ…」



さすがにこの数は足止めしかならないのか?


そうだ!

良いこと思いついた!



「水魔法『ウォーターショット』」



俺は初級魔法の水魔法を数発使用した。


リザード立ち向かって撃つのではなく、空に向かって撃った。


そして、50体ほどのリザードはずぶ濡れになり、地面がぬかるんだ。



「何をしておるのじゃ?」



俺の行動に疑問を抱くエリスお嬢様。



「まぁ、見てて下さい。

雷魔法『サンダーバースト』」



雷魔法『サンダーバースト』。


中級の雷魔法で広範囲重視に雷を放つ。


大勢の敵と戦う時に便利。



すると俺の雷を受けたリザードたちは、身体や地面の水から感電をして一気にリザードたちを倒した。


300体ぐらいは倒したかな?



「よし、この調子で…」



俺はまた同じ戦法を使おうとした。





その時!





「うぐ!!」



俺は突然、力が抜ける感覚に陥った。



「な、なんだこれ?」



魔力切れ…?


いやそんなはずはない。


何度か魔法を試したが自分の限界値は把握している。


このくらいで限界が来るはずがない。




「ウェル! しっかりするのじゃ!!」



心配するエリスお嬢様。


限界ではないと思ってもこれは魔力切れの症状だ。



空間魔法『アイテムボックス』は使えなさそうだから、懐にある『マナポーション』を手に取って飲んだ。


本当は『アイテムボックス』にアイテムをたくさん収納していて、懐にあるのは予備だったんだが…。




「困りますねぇ。

私の可愛いリザードを傷つけるのは」



マナポーションを飲むと、エリスお嬢様の声でも俺の声でもない。


聞いた事のない声がすると思ったらリザードたちが整列して道を開けていた。


そして、その奥に全身黒いローブで、深く顔をフードで隠した怪しい男が現れた。




「誰じゃ!? お主は!?」



どうみても不審者。

そもそもこのリザードの大群事態がおかしいと思っていた。



「まさか…この事件の首謀者?」



俺はほぼ確信して問いただした。



「まぁ、そんなところです。

ちょっと、おいたがすぎるので私自らお仕置きしに来ました」



それなら俺はこいつを倒せば全てが終わる!

と、確信して突っ込んだ。


しかし、リザードたちが行く手を阻む。



「くっ! 邪魔だ!」



剣で斬っても次々現れて、魔法で狙ってもリザードたちがその怪しい男の盾となり守る。



「揺らぎいる闇の使者。数多の魔を吸い取り糧となれ…」


あれが魔法の詠唱ってやつか…!


詠唱が終わる前に!




「闇魔法『マナドレイン』」



ぐっ!? また!?


ち、力が抜ける…。


俺は再び倒れた。



「ウェル!!」



「そうそう、あなたの動きが鈍ったのは私の魔法ですよ。

闇魔法『マナドレイン』。

魔力を吸収する魔法です」



そうか、それで俺は魔力切れを起こしたのか。



「それにしてもあなたは凄い魔力の持ち主だ。

平均の魔道士の10倍はありますね。

この私でもずっと持ってはいられないので、この魔力をリザードにしましょう」



なんだと!?



「我が名において来たれ闇の精霊、意志を継ぐものよ、手に取りし魔を授け、その姿を形に変えよ。

闇魔法『マナメイク』」




するとその怪しい男から黒い煙のようなものが立ち込めて、次々とリザードを生み出した。



「そうか…この大量発生のリザードもお前の仕業か!」



俺は今にも死にそうな声でその男に聞いた。



「その通りですよ!

あぁ…なんて可愛いリザードたちなんでしょう…。

私は観てるだけで癒される…」



すまん、その感性はわからない。



「お、お前は何者だ!」



主人公がいかにも負けそうなセリフでその怪しい男に聞いてみた。



「ふっふっふ…私はメイデン。

楽園の使徒『ラプラス』の信者です!

今回の騒動で私は幹部に昇格すること間違いなし!!

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!! 神よ!!!!!!!!

私はこの時のために生まれてきたのか!!!!!」



聞いてもいないことをペラペラと。

こんな情報を喋るヤツなど、俺が上司だったら絶対に昇格させないな。


しかし、楽園の使徒『ラプラス』か…。


異世界転生して2年半でほとんど冒険者ギルドにいたけど聞いたことないな。


もっと情報を探ってみるか…。



「…お前たちは…闇ギルドか!?

何が目的なんだ!?」



するとその男は絶叫した。



「キエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!!!!」



なんだなんだ!?


さらに顔は見えないがめちゃくちゃ怒ってるのはわかった!!!!



「あなた!!!!

あなたあなたあなたあなたあなたあなた!!!!

ラプラスを闇ギルド!!!!

失礼な!!!! 闇ギルドなんて汚らわしい!!!!

その発言はまさに!!!!

ラプラスへの侮辱!!!!!

神への冒涜!!!!

死んで侘びなさい!!!!!!!!」



何やら地雷だったようだ。





最初の『マナドレイン』を受けてから…。


1分経過。

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