第10話 追放した冒険者再び

俺はA級冒険者として名が広がっていった。


おっさんだった頃はG級冒険者だったのにとんでもない出世だ。


身を隠さなきゃいけないのに

なんでこんな目立つことをしたかと言うと


あくまでも最終目標はグランベル家の復興だ。


しかし、今はエリスお嬢様は死んだとこになり

グランベル家は潰えているとして世間に広がっている。


今はグランベル家の名前を出すのはまずいし

何よりエリスお嬢様は悪役令嬢だったので

人徳がない。


グランベル家を潰した奴らを倒したとしても

どのみち復興は厳しいということだ。


それなら新しい名前で貴族になればいい。


そこで出た案が俺を貴族にするということ。


この世界では一流の冒険者となり

多くの人に認められれば

この国の王から貴族の地位を与えられることもあるらしい。


なので、このギルドで大活躍をすれば貴族になり

新しいグランベル家を気づくことができる。

エリスお嬢様は自分が貴族になる必要はないという。


自分じゃなくても

名前が変わっても

受け継ぐ意思があれば良い。


俺にならそれを任せられるとの事だ。


俺、エリスお嬢様、ココさんの三人で出した答えであり、これからの目標だ。



「では、私はレイリー家の偵察に行って参ります」



ココさんとは別行動になる。

暫く会えないのか。


ほぼほぼ黒と見ているレイリー家なのだが

闇ギルドを雇うのはかなりのリスクがある。


闇ギルドはその強さを利用して

ありえないほどの金額を請求してきたり

多くの生け贄を要求したりする。


下手したら自分の家を潰しかねない。


そこまでしてグランベル家を潰すというのか?


それを調べるためにココさんはレイリー家に向かうのであった。



そして、冒険者ギルド【ルミネスゲート】直営の宿屋で泊まることとなった俺とエリスお嬢様は、



「妾に補助系の魔法を譲渡するのじゃ」



エリスお嬢様はこの状態だと魔法が使えない。


元が人形だからな。


ということで俺が『ラーニング』を譲渡されたとき

と同じように魔法をいくつか譲渡した。



「固有魔法『メタモファ』」



エリスお嬢様に譲渡した魔法は


光魔法『ヒール』

光魔法『リリース』

光魔法『シールド』



光魔法『ヒール』は回復の初級魔法。

俺にはその一つ上の上級魔法『メガヒール』が使えるのだが、もし俺が魔法を使えなかった時の補助だ。


光魔法『リリース』は毒、幻術、魔封じといった状態異常を治す魔法だ。

これももし俺が魔法を使えなかった時の保険。


光魔法『シールド』は中級レベルの強力な結界魔法。



こんな感じでエリスお嬢様は俺のサポートとして回るそうだ。



俺は戦闘、エリスお嬢様はその補助。


うん、バランスがしっかり取れているな!



「では、妾は寝るのじゃ」



「おやすみ。エリスお嬢様」



明日からはここで仕事か。


頑張るぞ!!







冒険者ギルドに入って2日後。


俺と俺の肩に乗ったエリスお嬢様は

冒険者ギルドにやってきた。


ちなみにエリスお嬢様は後日テストを受けるということで仮冒険者という形にしてもらった。


ココさんのお墨付きということでこちらも特例。


感謝だ! ココさん! ゲルドさん!


そんな特例コンビが冒険者ギルドの扉に入ってくると、そこにいた冒険者たちが一斉に俺たちを見る。



あれが噂の新入りか。


まだ子供じゃん。


新人のクセにいきなりA級らしいぞ。


まじかよ! どんなインチキ使ったんだ!?



視線の圧力が…。


中には俺の実力を見てないからギルマスに媚びを売ってのし上がったんだろうと、思っている人もいるみたい。



しかしそんなの気にしても仕方がない。


俺には俺の役目がある。


エリスお嬢様のためにも頑張らなくては!



「…えっと…これにしようかな」



仕事内容は『リザードの群れ退治』。


この仕事はC級ランクの冒険者がやる仕事なのだが

俺は久しぶりの冒険者の仕事。


もっと言うと魔物退治は初めてなので

ウォーミングアップにこれを選ぼうと思った。



「おいおい期待の新人が何こんな仕事を受けようっていうんだい?」



しかし、一人の若い男が話しかけてきた。

そして、その男の声を俺はよく知っている。

そう、忘れもしない。


俺からパーティーを追放した男。


B級冒険者で、そのパーティーのリーダー。

剣士ビリーだ。


そしてその後ろには

巨乳美女だが目つきの悪い魔導士カーリン。

スキンヘッドでムキムキの拳闘士ユルゲンがいた。


あの時のトラウマが…。


この三人と関わっていたこともそうだが

異世界転生する前の34年間も

異世界転生した後の2年間も

無能とレッテルを貼られ続けて

自己肯定感ダダ下がりだった頃の自分が蘇る。



「なんじゃお主ら?」



俺が下を向いて黙っていると

エリスお嬢様が話しかけた。



「A級冒険者なんだからもっとランクの高い仕事を受けたらどうだって言ってんだよ?

実力が本当ならな!」



「先輩のアドバイスは聞くものですよ」



「まぁ、インチキでもC級なら大したもんだがな」



相変わらずビリー、カーリン、ユルゲンの順で話す。


さらにエリスお嬢様はたんかを切る。



「ご忠告感謝なのじゃ。

じゃが仕事を選ぶのは妾たちの自由なんじゃからほっといて欲しいのじゃ」



バチバチバチバチ



なんかエリスお嬢様とビリーの睨み合いで

火花が散っている。



「生意気な小族だな。先輩が指導してやろうか!

訓練場に来い!」



「良いじゃろう。

妾のペットが相手になってやろう!」



え? 待って!

俺が戦う流れになってない?



俺、何にも喋ってないんだけど!?!?!?




「訓練場へ案内してやる! こっちだ!」



「おいビリー…」



「ん? どうしたユルゲン?」



「訓練場はその逆の方向だ」



「………………………」

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