第3話 悪役令嬢との日常が終わる
エリスお嬢様の執事として半年が過ぎた。
だんだんとこのエリスお嬢様こと
エリス・グランベル家のことがわかってきた。
実はエリスお嬢様の両親は10年前に病気で亡くなったそうだ。
エリスお嬢様は今は15歳だから5歳のころに両親をなくしたのか。
両親を失い、兄弟もいない、他にも血筋の者がいないの ので5歳にしてグランベル家のトップとなって引き継ぐこととなった。
しかし、両親を失ったショックで自暴自棄になり
荒れに荒れて、屋敷の使用人に横暴な八つ当たり。
温かい家庭を持った他の令嬢に嫉妬して
陰湿なイジメや嫌がらせをするようになる。
悪役令嬢と呼ばれるのにふさわしいほど
性格が歪んだという。
使用人はどんどん辞めていき、悪い噂が広がっていった。
グランベル家は没落貴族というレッテルを貼られて。
しかし、ある事件から性格も前向き(野蛮)になり
魔法の才能を開花させたという。
ちなみにココさんは3年前に冒険者を辞めて
メイドとしてエリスお嬢様に仕えるようになったらしい。
2人の出会いはあまり聞いてないが
グランベル家の復興のため力を合わせているという。
俺も全力で協力しよう。
俺を救ってくれたエリスお嬢様のために。
ズドーン!!!!
「ウボァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」
そして、今日もエリスお嬢様の魔法のトレーニングだ。
魔法耐性のあるミスリルスーツを着ているとはいえ衝撃までは緩和されない。
「避けるのが中々上手くなったではないか。
ココの前のウォーミングアップには良いな」
エリスお嬢様。
ココさんと比べないで…。
あの動きは一生かかっても無理です。
ココさんは凄腕の元冒険者で
今までかなりの死線を潜り抜けてきた
とかなんとか。
詳しいことはあまり聞いてない。
そして、エリスお嬢様の魔法を
相変わらず百発百中で命中させられる俺。
半年経って慣れてきたかと思えば
エリスお嬢様も成長しているから追いつけない。
そして、またココさんとエリスお嬢様の真剣なバトルが始まる。
うん、CG映画を見てるようで楽しい。
厨二病心がくすぐられる。
そして同時に!!!
ココさんの2つの大きなエベレストが激しく揺れるのを眺める。
悪くない!!!!!!!
…トレーニング中、ココさんはたまに俺に向かってゴミを見るような視線を送るので俺の視線バレてるよな…。
話は変わってエリスお嬢様は忙しい。
没落貴族からはい上がろうと色んなスケジュールが組み込まれている。
掃除や給仕も含むのでかなり大変だ。
だが、今までの人生の中で一番充実している。
社畜だったころはやるのが当たり前で褒められたことはない。
冒険者になっても低いランクや荷物持ちばかりなので、重労働だが誰でもできて当たり前。
こんなに頼りにされるのは生まれて初めてだ。
そんなことなら異世界転生して冒険者をやらずに
清掃業務とか料理店を出せばいいものだが
身元不明の俺は国の信用を得るまでできないらしい。
なので身元不明でもできる冒険者をやるしかなかった。
だが、2年経ってもそこまでの信用を得るに値しなったのでそのまま冒険者をやってきたのだった。
こんな俺を拾ってくれたエリスお嬢様のためにも!
ココさんのためにも!
今日も頑張るぞ!
しかし、この日を持って
この日常が終わりを告げるのだった。
深夜0時を過ぎようとしていたころ。
ドカーン!!!!!!!
「な、なんだ!?」
突然の爆発音に飛び起きた。
急いで部屋を出ようとしてドアを開けたら
「う、嘘だろ!?」
屋敷の廊下は火の海となっていた。
すごい熱気で焼き尽くされ、逃げ道などほとんどない。
そういえば、前に会った貴族が言ってたな。
2日前
グランベル家はレイリー家と会食していた。
その時、レイリー家の偉そうな人が何やらうさんくさい契約を要求してきたが
「お気遣い結構じゃ。
妾の身は妾で守れる」
とエリスお嬢様は一蹴した。
その後、レイリー家は
「後悔しますよ」
とボソッと言っていたな。
グランベル家は色んな方向で多くの貴族から反感を買っており暗殺は前に何度かあったらしい。
まぁ、ココさんとエリスお嬢様なら
並の暗殺者ぐらいなんともないから
大きなケガもなく今まで無事だったみたい。
しかし、今回ばかりはヤバいのではないか?
「エリスお嬢様ーーー!!!!
ココさーーーーーーん!!!!」
俺は2人の名前を叫びながら火の海になった廊下を進んだ。
はぁはぁ…
火の手がかなり周り息苦しい。
とにかくエリスお嬢様の部屋に行かなければ。
そのときものすごい悪寒が襲う。
あぁ、これはあれだ。
殺気ってやつだ。
エリスお嬢様とのトレーニングで身についたのかも。
そして、これは…。
振り向いたら死ぬな…。
そしてその瞬間、黒装束の人影に背後を取られ
首をダガーで突き刺そうとする。
カキーン!!!!
金属と金属がぶつかる音がしてダガーが宙に舞い
天井に突き刺さる。
「何をじっとしているんですか!!!!」
すると目の前には見慣れた猫耳メイド。
ココさんだ!!!
生きていた!!!!
しかし、
「…コ…ココさん…」
ココさんは全身血だらけの満身創痍だった。
あんなに強いココさんが…。
これはかなりヤバい状況だということが一目でわかった。
黒装束の侵入者はすぐに距離を取り
別のダガーを取り出し、ココさんに投げる。
しかし、ココさんは剣でそれを弾き
一気に距離を詰める。
俺の目では映らない激しい戦闘が数秒行われた後
黒装束は胴体が斬られて吹っ飛んだ。
「や、やった!」
俺は黒装束を倒したことを喜んだ。
「まだだ! こんなのか何人もいるぞ!!」
マジすか…。
ココさんがそう言うと奥の方から何人もゾロゾロとやってきた。
「ココさん、状況説明をお願い致します!」
「状況は見ての通り最悪だ。
何者かが闇ギルドを雇ってお嬢様の暗殺を依頼した」
闇ギルドとは、国の認定を受けた正規の冒険者ギルドが引き受けない殺しや暗殺を行うギルド。
そのため、闇ギルドは見つけ次第排除されるよう世界中から要請されているが、一つ一つの闇ギルドが強大なためにほとんど手出しができない。
今までの暗殺は退いてきたが今回ばかりはかなりヤバい。
「エリスお嬢様は!?」
暗殺のターゲットはもちろんエリスお嬢様だろう。
エリスお嬢様は無事なのか?
「…すまない…安否の確認がまだだ。
こいつら強すぎてな…いけ! セーイチ!!
お嬢様を…頼む…」
初めて名前を呼んでくれた。
「ココさん…どうか…死なないで!」
そして、俺よりずっと強くて頼りになるココさんが
エリスお嬢様を頼まれた。
その想いに応えねば!!!!
俺は息を止めて全速力で火の海の廊下を駆け抜けていった。
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