第2話 悪役令嬢と美人巨乳猫耳メイド

あまりにも神秘的で美しいため数秒立ち止まって心を奪われてしまったが、見つかると覗きと間違えられてしまう。


直ぐにここを立ち去らねばと思い逃げようとするが…




パキッ




枝を踏んでしまった…




ベタかよ!!!!



と心の中で叫んだがもう遅い。




「誰じゃ!」




湖の方から声が聞こえた。


水浴びしていた少女だろう。



俺は逃げるように全力で走った。



はぁ



はぁ




「こ、ここまで来れば大丈夫かな?」




テントに戻った。



喉が渇いたから湖に行ったのに全力で走ったから結構こたえた。


とはいえ、どうにもならないし、寝よう。


朝早く湖に行って水を飲めばいい。



そう思ってテントの中に入ろうとしたら…




ゲシ!!!




「ほばぅ!?」




誰かに思いっきり後頭部を蹴られた。


そして、人生で最も変な声が出た。



俺はそのままテントの中に吹っ飛ばされた。




「いてて…」




すぐに蹴ってきたやつを確認しようと振り返ったら水浴びしていた少女が着替えて俺の目の前にいたのだった。



「覗きとは感心せんなぁ。この凡人」



少女はピクピクと眉を動かしてニラみつけていた。



いきなりの蹴り。


そしてこの怒りに満ちた表情。


ここまで気が強い子だとは…



さっき見ていた時の天使はどこへ行ってしまったのだろうか…?



「す、すみません…覗くつもりでは…」



覗くつもりはなかった。


喉が乾いたから水を飲もうとしただけだ。


そう言いかけたら…




「問答無用!!!!」





ゲシ!!!




「アベシ!!!」




少女の強烈な回し蹴り。



うむ。良い蹴りだ。



と、感心している場合ではない!



何回もこの蹴りを受けたら身が持たない。



「ま、待ってくれ!!

俺は喉が乾いたから水を飲もうとして…」



「理由はどうあれ妾の裸体を観たからにはタダでは帰さぬぞ?」



どうしたものか…



というよりこの子、裸足だ…。


いや待て。



俺は足元の悪い森を全力で走って逃げたのに

この子は追いついて来たっていうのか!?


しかも着替えて裸足で…。


いや、良く見たら…。




少し浮いてる!?




「なんじゃ? 浮いてるのが気になるのか?」



「気になる! というより凄いよ!

魔法が使えるんだね!」



異世界に来て2年。

魔法なんて一切使えない俺にとってはどんな魔法も凄いと思う。


しかも14~15歳ほどの少女だと言うにも関わらず。



「ま、妾からすれば朝飯前じゃ!」



というより14~15歳ほどの少女なのに妾か…。



「…話をはぐらかしたとは思ってないであろうな?」



なんか疑われた!?



「いや、思ったこと口にしただけだよ…」




また少女のニラみつける視線が戻ってきた。



「うぅ…」



罪悪感が…。



不可抗力とはいえ覗いてしまったからな。


何かお詫びをせねば…。



そう思っていると少女の方が口を開いた。



「お主…名前は何という?」



そういえばお互い名前は名乗ってなかったな。



「セーイチ…川端誠一…です…」




「川端誠一……お主は鎖ノ国(さのくに)から来たのか?」



「鎖ノ国…とは?」



異世界転生して2年経つが冒険者としていた街の付近ぐらいしか移動したことがない。


だから鎖ノ国と言われてもわからない。




「…そうか…知らぬか…」



少女の表情が大きく変わった。



さっきまでサゲすむかのようなニラみつける怒りの表情から、何か考え事をして物思いにふけるようになった。



「……ふむ、それならお主の処遇は…」




な、何を要求するんだ!?



できる範囲で頼む!




ごくっ





「妾に仕えるのじゃ」







「…え?」




俺は予想外すぎる回答に呆然として思わず声が漏れてしまった。




「聞こえなかったのか?

お主は妾の元でしばらくタダ働きで仕えるのじゃ。

もちろん衣食住ぐらいは用意してやるがのぅ」




「ありがとうございます!!!!!!!!!」




思わず大声で返事をしてしまった。


衣食住さえあればもう何もいらない。


そもそも自由に冒険できるほど強くはない。


むしろ冒険者より天職だ!




「いきなりデカい声を出すでないわ!

びっくりするではないか!」



早速怒られてしまった。



「さて、面白いオモチャが手に入ったから屋敷に戻ろうかのう」



オモチャって俺のことだよな…


やばい、雲行きが少し怪しい…


とはいえ今はこれしかないし…


よし!


変な人体実験とかされそうになったら逃げよう!



「そういえば君の名前は…」



ゲシ!!!



「ふべぼ!?」



また蹴られてしまった。



「主に向かっていう態度ではないな?

もっと言葉を選んだらどうじゃ?」



うぅ…ごもっとも。


少女とはいえ主だ。


よし。



「あなた様のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」




「やればできるではないか!」




よし! 褒められた。


少女でも何度も蹴られたりしたけどやはり褒められるのは嬉しい。



……お人好しすぎるなぁ。



だからよく面倒事押し付けられるのか。




「妾の名前はエリス。

エリス・グランベルじゃ」




エリス…



いい名前だ…



美少女に相応しい。




「よろしくお願い致します。エリス様。

では、屋敷までご案内よろしくお願い致します」



「任せるのじゃ!」



そして、いつの間にか日が登り、朝日がやってきた。


まるで光が新しい人生を祝福してくれるようだ。



エリスの屋敷に案内されて、門の前には1人の女性が立っていた。



「お帰りなさいませ。お嬢様」



美人猫耳メイド!!!

そして、胸がデカ…ゴホン!

メイド服なのに生乳の谷間が見れるとは…



「…私の胸に視線を送るそちらの殿方は…?」



あらヤダ鋭い!!!



「…この覗きドスケベ男は妾の新しいオモチャじゃ」



あぁ…ドスケベという新しいレッテルが貼られてしまった。


違うぞ!

健全なだけだぞ!

しかも童貞なんだから推定Gカップの谷間を見るのはしょうがないだろ!


そして、俺はやはりオモチャか。



「あぁ、かわいそうに…お嬢様のオモチャですか。

では、お嬢様に仕える執事としてご案内致しますね」



オモチャ=執事 で通じるのか!

かわいそうって…一体何されるんだ…


もしかしてエリスはいわゆる悪役令嬢!?


ちょっと先が不安だが切り替えねば!


第一印象悪くても健全な挨拶で挽回だ!



「コホン、先程は失礼致しました。

私の名前はセーイチと申します。

この度はエリスお嬢様の元にお仕えすることになりました。

初めてなことが多く、至らぬ点が多々あるとは思いますが、何卒ご教授よろしくお願い致します」



「…あいさつだけはまともですね」



あいさつだけは!!!


塩対応!!


美人猫耳巨乳メイドさんの塩対応!!!


しかし、悪くない!!!



「ではお仕事をご案内しますね」



「…よろしくお願い致します」



俺は態度を崩さず対応した。



猫耳メイドさんの名前はココ。


なんて可愛らしい名前なんだ。



そして、仕事内容は屋敷の掃除や給仕。

お嬢様のスケジュール管理や身の回りの世話。


なるほど。


執事兼家政婦といった感じか。


というか執事なんてこの世界じゃ地位が高い職業なのに俺に務まるのか?


いや、むしろやってもいいのか?


そのことをココさんに聞いてみた。



「構いませんよ。お嬢様の決めたことですし。

お嬢様はワガママなのですぐにお辞める人が多いんですよね。今までの最高記録は最短24時間でお辞めになった方もいます」



雲行きが少し怪しいと思っていたら

漆黒の闇が目の前に現れた。


俺、大丈夫かなぁ。


というかエリスお嬢様ってどんだけワガママなんだ…。


人がいない理由はすべてお嬢様のワガママにたどりつく。


もしかしてではなく悪役令嬢間違いなしだな。



「…よろしくお願い致します」



俺は覚悟の決めた返事をすると

ココさんは俺の足元から頭まで視線を送るなり嫌な顔をしながら言い放った。



「…とりあえず、汚物と見間違えるほど

ものすごく汚いのでとっとと身体を洗って下さいね」



心臓をくり抜かれるほどのクリティカルヒット!!


セーイチ選手!!

絶命寸前!!!!


しかし意外と悪くない!!!!!!!



…まぁ、風呂なんて街にはないし水浴びしかできないし身体を洗うのが面倒だったからほとんど風呂に入れなかったんだよな。


大浴場に入って着替えを用意してもらい休む間もなく、仕事を始めるのだった。

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