厄災戦争 大魔王アザトースvs世界14

 

 極光が周囲を埋めつくし、世界の一部が光に包まれる。


 仁の拳に纏った膨大な魔力とアザトースの身体を覆う魔力のぶつかり合いは凄まじく、周囲に破壊を齎して大地が凹む。


 大魔王アザトースを中心に、50m以上も凹んだ大地は隕石が落ちたかのようなクレーターとなっていた。


 「ッグヌゥ........」

 「ぶっ潰す気でやったってのに、随分と頑丈だな。殴った拳の方が痛てぇよ」

 「殴られた方が痛いに決まっているだろう?本当に人間か?貴様」

 「人間さ」


 アザトースから一旦離れた仁は、自分の手首を持ってクルクルと回すと、手首の調子を確かめる。


 正しく殴ったが、アザトースがあまりにも頑丈すぎたが故に軽く手首を痛めたのだ。


 相手が人間や魔物ならば、破裂していていもおかしくないというのに、それ耐えられるだけの耐久力を持つアザトース。


 伊達に神の名を持っている訳では無い。


 「大丈夫?」

 「軽くて首を痛めただけだ。問題ない。花音、それよりも頼まれてくれないか?」

 「なぁに?」

 「光司に最後の一撃を任せたい。一撃殴って分かった。これ、俺じゃ殺せんわ。短い期間で二回も全力を出してるから、かなり体がキツイし、さっきから能力で消滅させようとしてもなにかに邪魔されてる。俺の異能じゃ殺せないみたいだ」

 「へぇ、仁の異能が効かないなんてあるんだ。でも光司なら何とかなるの?」

 「なる。元々光司の異能は大魔王アザトースを殺すために、女神イージスが作った異能だぞ?あの防御を破れる何かがあるだろ........多分。まぁ、無理だったらこっちで何とかするしかないけどな」


 仁は先程からアザトースの体を消滅させようと、異能を使っている。


 しかし、仮にも神の領域に立つアザトースも対抗する手段がある。


 “夢の中は幻想の世界アザトース”。


 自らの名を冠したその力は、眠ることによって発動され特定の攻撃を無力化することが可能である。


 仁の場合は天秤崩壊ヴァーゲ・ルーインの消滅能力が無効化されていた。


 もちろん、アザトースの能力を破る方法もあるが、それよりも手っ取り早い方法があるのであれば使うに越したことはない。


 仁は花音に、光司の参戦を要求するように頼むと再びアザトースとの戦いを再開する。


 「大人しく死んどけよ老害神がよォ」

 「口だけは神にも勝るな。本当に忌々しい人間だ」

 「口も勝てないくせに俺に勝てるのか?もう本気を出してるんだろう?これで負けたら言い訳できないな。人間に負けた神様。冥府の道に降りたとしてもバカにされ続けるだろうよ」

 「........本当に口だけはよく回る」


 イラつきを隠さず魔力を放出するアザトースと、ニヤニヤ笑いながらも決して油断しない仁。


 光司がその一撃を放つまでの間、仁とアザトースは死闘を繰り広げるのだった。


 ━━━━━━━━━━━━━━━


 仁にお願いをされた花音は、周囲の気配を探って光司を見つけるとそこに降り立つ。


 アザトースに吹き飛ばされ、仁とアザトースの戦闘の余波に巻き込まれていた光司の鎧は泥まみれでボロボロだった。


 「花音さん!!やっぱり仁君達だったんだね!!」

 「そうだよ。感動の再会は後にして、今は話を聞け」


 救世主の登場に喜ぶ光司を一言で諌めると、花音は務めて冷静に光司に話す。


 アザトースの討伐は光司がやらなければならない。


 能力的にもそうだが、今後神聖皇国の力を増させる為にも光司の力は必須。


 今後仁達揺レ動ク者グングニルがどう動こうと、光司達にはそれなりの活躍が必要なのだ。


 「光司、最強の一撃をアザトースに叩き込んで」

 「え?僕の一撃を?恥ずかしい話、僕の力じゃ仁君たちの足元にも及ばないよ?」

 「いいからやれ。女神イージスが自ら作った異能なんだから、大魔王アザトース特攻があるでしょ」

 「いや........それは怪しい気がするんだけど........」

 「いいからやるの。やれ。やらなきゃここでお前を殺すぞ?」

 「分かった。分かったから、その怖い顔を辞めてください。仁君がアザトースと戦ってるのが心配なんだね?」

 「........」

 「分かった。できる限り頑張ってみる」


 仁でも簡単に殺せない大魔王アザトース。


 花音は仁のサポートに早く戻りたかった。


 愛する人が1人で苦戦してるいるのを見て楽しむ悪癖は花音にはない。


 時として隣に立ち、時としてその力を使うのが花音の役目である。


 「頼むよ」

 「任せて」


 光司はそう言うと、剣を再び握りしめて集中する。


 静かに自分の中に眠る力に呼びかけ、その力を引き出そうと魔力を体内に貯め続けるのだ。


 しかし、その身に合わない力というのは苦痛を伴う。光司は冷や汗をかきながらも、何とか集中力を保つ。


 「やばいね。滅茶苦茶じゃん」

 「ようやく来てみれば、すごいねー」


 と、ここで聞きなれた声が聞こえてきた。


 かつては共に戦った天使。今は堕天し、翼が黒くなっているが、それでも心優しく頼もしいアルコール中毒者。


 「楽しそうなことしてんじゃん?手伝ってあげるよ。ラファ」

 「分かってるよー。集中力だけで補えるものじゃないからね。私たちも手伝ってあげる」


 タイミングよく現れた堕天使達。


 朱那とラファエルは、そう言うと光司の背中に手を置くのだった。




 ラプラスー確率操作中(激務)

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