厄災戦争 大魔王アザトースvs世界12
遂に大魔王アザトースの前に現れた世界最強の傭兵。
アドムを含む四人を相手に圧勝を収めたものの、その反動で全身筋肉痛となり暫く動けなかった仁がようやく現れたのだ。
更には、仁の妻でもあり魔女に一切の反撃を許さず嬲り殺しにした花音まで。
そして、アザトースもアドムやニヴが死した事を察したのだ。
「派手に吹き飛ばしてくれちゃって。ここって平原じゃなかったか?」
「何もかもが無くなってるね。あるのは大地のみ。草木や魔物なんかは巻き込まれて全滅しちゃったみたい。で、どうするの?」
「どうするもこうするも、長い間この世界を滅茶苦茶にしてくれたお礼はしてやらないとな。そう思うだろう?大魔王アザトース」
アザトースの頭上から見下ろす仁と花音。
自身の強さに絶対的な自信があるとは言えど、相手は元神の領域に立つ者。
少し力を解放しただけでも、その圧倒的な圧が感じられるほどの強さを持ったアザトースから視線を外さない。
いつ何が起きようと対処できるように。
「........貴様、アドムとニヴはどうした?」
「殺した。今頃大好きな女神様の元に飛ばされたんじゃないか?きっと仲良くやってるよ」
「あー、そう言えば、死した魂は女神様の元へと返るんだったねぇ........あれ?仁。魂まで消したって言わなかったっけ?」
「あ、そういえばそうだな。わるい大魔王アザトース。どっちもかの世界から消滅してるわ。すまんな。死んだあとの感動的な再会が出来ねぇわ」
死した魂は輪廻の中に返り、女神の元で新たな生を受ける。
これがこの世界の魂の循環ではあるが、そもそも魂そのものを消滅させられてしまえば輪廻の中に入ることすら出来ない。
仁や花音の異能は相手の魂に干渉することが出来るため、二度と復活しないようにこの世界から存在を消し去ったのだ。
「........そうか。死んだのだな。輪廻の中に返ることも無く、ほんとんの意味での死を迎えたのか」
「悲しいか?」
「そうだな。ある意味貴様らには感謝すらしている。あの女神の元に戻ることが無くなったのは喜ばしい事だ。気を使ったのか?」
「いや別に?普通に殺しただけだね。後、女神の元に魂が戻った方が苦しんでくれると言うのを忘れてた」
「覚えてたら魂まで殺すことは無かったねぇ。完全に忘れてたよ」
なんとも思ってなさそうな顔でそう話す仁と花音。
仁達にとって既に死したアドムやニヴは既にどうでもいい存在。
親しい間柄であれば、多少なりとも感傷に浸るだろうが、ただの邪魔者としか思っていなかった2人にとって彼らの死とはその程度のものである。
「皮肉なものだ。人ではなく、人の敵たる魔王に哀悼の意があるとはな」
「へぇ、大魔王アザトースにも人の死を悲しむ心があるんだな。その優しさを他の人にも分けれやれば良かったのに」
「まぁ、私達も人のことは言えないけどねぇ。どうでもいい人がどこで死のうが興味無いし」
「それはそうだけだけど、ちょっとは空気を読もうよ花音」
「え?空気読んでなかった?」
すで首を傾げる花音に呆れる仁と、自分もさほど人と変わらない感情を持っていたことに気づくアザトース。
しかし、既に全てが手遅れ。
アザトースは覚悟を決めると、後先考えず本気を出すことにした。
揺れが止まったはずの大地が再び揺れ始め、風が吹き荒れて周囲は魔王の手の中に。
仁と花音もこれ以上の話しは無理だと察すると、即座に戦闘態勢に入った。
「
「
稲妻を全身に迸らせ、圧倒的な魔力量を生み出す黒い箱を周囲に浮かべる仁と、両目が真っ赤に染まり、人としての限界を超えた花音。
「楽に死ねると思うなよ」
「楽に殺してやるよ。俺達は慈悲深いからな」
一時の静寂。
お互いの力がぶつかり、空間が徐々に歪み始める。
絶対的強者達による圧のぶつかり合いは、ただそれだけで世界を壊し始めた。
空間は捻じれ、亀裂が入りやがて周囲のものが空間に引き寄せられ始める。
ここで、魔王の力の解放によって吹き飛ばされた団員達が戦場へと戻って来た。
厄災級魔物と言えど尻込みするような現状を見たストリゴイは、背中に冷や汗をかきながら小さく笑って団員達に指示を出す。
「フハハハハ。団長殿が来たか。諸君、我らはサポートに回るぞ。あれは本気で暴れるつもりだ」
「私はどうする?」
「シルフォードもサポートだ。あの中に身を投じて生き残れると思っているのか?」
「無理無理。そもそもの力の出力が違いすぎる。あのエネルギーだけで一個の国ぐらいは簡単に吹きとばせそう」
「──────────」
「ハハッ、残念だったねサラ。どうやら私達の力では勝てないみたい。でも、それでこそ私達の団長さんと副団長さん。私達もサポートに回ろう。できる仕事は沢山ある」
歪み続ける空間。
その空間の亀裂は徐々に大きくなり始め、世界を壊そうとし始める。
「フハハハハ。これ、戦いが終わった後に世界が残っているのか?」
あまりにも出力が違いすぎるその光景に、ストリゴイは乾いた笑いを浮かべるしか無かった。
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