厄災戦争 大魔王アザトースvs世界11
ストリゴイの指揮に従い、大魔王アザトースと戦うシルフォード達。
シルフォードと言うアザトースに明確なダメージを与えられる存在がいたとしても、アザトースを圧倒するのは少々難しかった。
「リンドブルム、ジャバウォック。やれ」
「はいよ。落ちろ」
「潰れろ」
シルフォードを優先して倒そうとするアザトースの隙を着いて、リンドブルムとジャバウォックが攻撃を仕掛ける。
地を砕く流星と地を押しつぶす槌がアザトースを襲い、シルフォードに向かって攻撃を仕掛けようとしていたアザトースの動きを止めた。
正直な話、シルフォード以外の攻撃はあまりダメージが通っていない。
しかし、ダメージが無いからと言ってアザトースの動きを止められないという訳では無いのだ。
「エドストル、ドッペルゲンガー、左辺から気を引け。相手の体制を崩させるだけで良い」
「了解です」
「行きますよ」
リンドブルム達の一撃によって僅かに体制を崩したアザトースに、エドストルとドッペルゲンガーが追い討ちをかける。
ゆらりと揺れながら繰り出されたエドストルの剣撃は触手を切れずとも弾き飛ばし、ドッペルゲンガーも同じ剣術を使って数多くある触手達を吹き飛ばしていく。
が、あまりにもアザトースを支える触手が多すぎる。
これではどうやってもアザトースのバランスを崩すことは出来ない。
もちろん、ストリゴイもそれはわかった上で指示を出している。
この戦いでストリゴイがやる事は、勝つことでは無い。
明確なダメージを与えられるのがシルフォードだけであり、そのシルフォードもまだまだ原初の扱いに慣れていない。
そのため、シルフォードと言う矛だけでアザトースを倒すことは不可能。
今、やるべきことはアザトースに本気を出さずとも対処出来る思わせつつ、我らが団長である仁を待つことだった。
(ふむ。適度に反撃のチャンスを与えるのは難しいな。しかし、あの化け物に本気を出させるのは不味い。今、戦線が維持できているのは、やつが本気を出していないからだ。元とは言えど神の域に立つ者は面倒だな)
ストリゴイは内心面倒と思いつつも、的確な指示を飛ばしていく。
仲間が死なない程度にアザトースに反撃の機会を与え、本気を出さずとも勝てるのでは?と大魔王に思わせる。
反撃させる機会があった場合ストリゴイは指示を出していないが、団員達はしっかりと攻撃を避けられるだけの実力があった。
世界最強の傭兵団の名にかまけず、常に強さを追い求めたもの達。
常日頃の訓練から得られた経験と判断力が、ストリゴイの指揮を成り立たせているのだ。
「早く来て欲しいものだ。団長殿。あまりに長引くと、向こうも痺れを斬らすぞ?」
「本気で来られると負けるでしょうね。時間稼ぎされていることにいつ気づくのか不安だわ」
「フハハハハ。幸い、大魔王は戦略についてはさっぱりなようだ。常に強者であったが故の慢心だな。もうしばらくは──────────」
ストリゴイがそう言いかけた瞬間、膨大な魔力を察知すると同時に大地が大きく揺れる。
「うをっ?!」
「ちょっ、ヤバっ........」
「うわぁぁぁ?!」
ゴゴゴゴゴと、大地を使って音楽を奏でたかのように揺れる大地。
大地が揺れるなんてものではない。天変地異が起きたのかと思うほどの大地の揺れは、アザトースとの戦闘をいやでも止めざるを得なかった。
更には肌で感じられる暴風。
地震があまりにも大きすぎて気づきにくいが、木の根を吹き飛ばすほどの暴風が世界を駆け巡る。
神聖皇国軍の中には、この暴風に吹き飛ばされた者も何名か居た。
「これは........ベヒーモスか?」
震える大地から感じられる魔力はあまりにも膨大であり、その魔力の質を感じれば誰のものかわかる。
この時、人類の半数近くが滅んでいたが、今の彼らにその事実を知る由もない。
神聖皇国の大部分も崩壊し多くの人々が瓦礫の山に埋もれてしまっているが、戦場に立つ彼らがその事実を確認することはもちろんできないのだ。
「そうか........ベヒーモス、テンペスト。お前達は負けたのだな。相手はファフニールとリヴァイアサンか?恐らくそうだろうな。勝つと信じていたが........とても残念だ」
「........っ!!不味い、全員退避!!」
仲間たちの中でも最高戦力に近い原初の二体を失った事を察したアザトースは、女神イージスとの戦いの為に残していた力を引き出すことを決意する。
このまま行けば原初を倒した敵がこの場所にやってくる。
アザトースと言えど、原初持ち三体を相手するのは流石に無理があった。
アドムとの約束は破ってしまうが、この場で死んでしまっては意味が無い。
女神に挑む前に死しては、全てが水の泡である。
「吹き飛べ」
アザトースの中に眠っていた力を解放すると、地平線の彼方まで全てが吹き飛ぶ。
事前にアザトースガ力を解放することを察知していたストリゴイが、団員達に退避を命じていた為、前もって防御をすることが出来もののその威力は凄まじく、全員が遠い彼方まで吹き飛ばされてしまった。
戻ってくるには数分掛かるだろう。
アザトースはその時間の間に自分の力をしっかりと制御する。
堕ちた身で神の力を使うには、かなりの集中力が必要とされるのだ。
「本来は女神に使う力なのだがな。誇っていいぞ人間ども。そして、絶望をくれてやろう」
「1人で“絶望をくれてやろう”とか言ってて恥ずかしくないのか?なぁ?花音」
「やめてあげなよ仁。きっと中学2年生なんだから」
「いや、2500年は最低でも生きてんのに厨二病とか救えねぇな。頭の中がお花畑かもしれん」
独り言を呟いたはずなのだが、返事が返ってくる。
アザトースは気配がする方に視線を向けると、その人物達を見て目を見開いた。
「貴様........たしか........」
「やぁやぁ魔王さん。殺しに来たぜ」
「大人しく死んで欲しいねぇ」
世界最強の傭兵“黒滅”こと東雲仁と、その妻“黒鎖”東雲花音。
遂にこの2人が、大魔王アザトースの前に現れたのだった。
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