厄災戦争 大魔王アザトースvs世界6
遂に戦場に現れた
かつてその世界を壊し、多くの人々を奪い去った魔物である“流星”リンドブルムと“自己像幻視”ドッペルゲンガーが大魔王アザトースとの戦いに参加したことにより、戦線の維持がより簡単にできるようになっていた。
数多の顔を使いありとあやゆる武器や魔道具を使いながらアザトースを抑え込むドッペルゲンガーと、空から星を降らせて周囲の分身体を吹き飛ばすリンドブルム。
世界を壊した歴史を持つ厄災級魔物が、遂に世界を救う為に戦い始めたのだ。
「全軍!!戦線を下げろ!!巻き込まれるぞ!!」
「ヤバヤバヤバ!!神話の世界に勝たられる様な戦いが何故起こっているのですか?!」
「ちょ、死ぬ!!死ぬって!!」
その戦場は神話に語られる程の規模にまで達し、ジークフリードはこの場に居ることそのものが厄災級魔物達の足を引っ張っていると判断すると兵士達に下がるように命令を出す。
まだ厄災級魔物達は本気を出していない。
ジークフリードがかつて見た1国を滅ぼす流星は、この程度のものではなかったのだ。
星々が降り注ぎ、天からの星は裁きと化す。
その先に残っているものは何も無く、あるのは破壊されただけの大地。
神正世界戦争時に見た厄災の世界が再び再現されれば、自分達が生き残る術は無い。
ジークフリードは、アザトースを討伐することも願いつつそれ以上に厄災級魔物達が人間の生存を考えていてくれることを願うしかなかった。
「ドッペルゲンガー。もう少し暴れていいかな?」
「ダメに決まってるでしょう?貴方が本気で暴れるとここにいる人達全員を殺しますよ。この場には、団長さんのご友人が多く居ます。それを殺して団長さんに怒られないと思うのであれば、好きにしたらいいんじゃないですか?」
「うぐっ、それは間違いなく怒られる。と言うか、殺される」
「ならば、今はあの魔王を抑えることに集中して下さい。私達のやるべき事は、他の仲間が援軍に来てくれるまで被害を抑えながら戦うことですから」
「ったく。全部破壊し尽くしてもいいならもっと楽なんだけどねぇ。それと、ドッペルゲンガー。なんか言葉が流暢じゃないか?」
「顔を変えてますから。今の私は武術の極意に至った武神ですよ」
流星で全てを破壊し尽くすことが出来ず、モヤモヤとしながら戦うリンドブルムに我慢する様言うドッペルゲンガー。
ドッペルゲンガーはこの状況で最もやってはならないことを理解していた。
今は人類の味方としてこの場にいるが、あまりにも味方側に被害を出しすぎると敵として判断される。
今後、仁達がこの世界で楽しくやっていくためにも、敵として判断されてはならないのだ。
「厄災級魔物........お前達はアドムから名を聞いたな。負けたのか」
「少し手こずったけど、私達が勝ったね。残念無念ってか?」
「ほざけ。私一人でも貴様らを殺せるわ」
「と言う割には、人間に苦戦してるでは無いですか。やめたら?魔王。神の名も捨てたのだから、今更失うものも無いでしょうに」
「この先、女神との戦いがあるのでな。あまり無理は出来んのだよ。安い挑発に乗ると思うなよ?」
「ここで死んだら意味ないだろ。馬鹿なのかコイツ」
「馬鹿だから過去に1度封印されているのでしょうね。やーい、バーカバーカ。落ちこぼれの雑魚神。落ちた神の癖に未だに自分が神だと思ってるとか悲しくないの?生きてて恥ずかしくない?」
「貴様ァ........」
怒りを露わにするアザトースと、隙を作るために煽り散らかすドッペルゲンガーとリンドブルム。
仁と出会う前ならばここまで相手を煽るという事をしなかっただろうが、退屈な日々から解放してくれた団長の影響を良くも悪くも受けまくっていた。
取り敢えず敵は煽って冷静さを失わせる。
分身体の攻撃を上手く抑えながら煽り散らかしたリンドブルムとドッペルゲンガーは、自分の口からここまでスラスラと煽りの言葉が出ることに驚いていた。
「どこぞの性悪人間に毒されたもんだねぇ。ドッペルゲンガー、口が悪すぎるぞ?」
「ハッハッハ!!私なんてまだまだ可愛いですよ。団長さんや副団長さんがこの場に立っていたらもっと罵詈雑言が飛び交ってましたよ?私もまだまだ修練が足りませんね」
「プハハ!!それは言えてるな。ほらどうした魔王様。私達に怒りを向けていていいのか?」
厄災級魔物である自分たちが再び人間の影響を受けていることを面白く思いつつ、作戦通りアザトースの意識を自分たちに集中させることに成功させた2人。
もちろん、その隙を逃す程光司も甘くなく、女神の加護によって疲れ知らずの彼はその隙を縫って勇者の剣を振りかざした。
「一刀破局!!」
「ぬぅ!!」
太陽の光を受けて光り輝く聖剣による斬撃。
先程まではその硬い触手に邪魔をされていたが、リンドブルム達の煽りを受けて隙を見せたアザトースの体に傷をつけた。
まる2日以上かけてようやく切り傷1つ。
あまりにも遠い討伐であるが、その一撃は人類にとって大きな一撃である。
「団長さんなら今ので殺してたな。あの人間、まだまだ甘い」
「ハッハッハ!!団長さんと比べたら可哀想ですよ。おっと危ない」
「出来れば奴が本気を出す前に殺したいんだがなぁ.......女神を殺すと宣っている内に」
「団長さんに早く来て欲しいですね」
魔王は女神との戦いに備えて力を残している。元々は神々と戦ってきた邪神だ。
その気になれば一瞬でカタが着いているはずなのに、誰一人としてこの戦場で死んでいないのは女神との戦いを見据えているから。
ここで力を使いすぎると、今この戦いを見ているであろう女神に手の内がバレるから力を隠しているのだろう。
リンドブルムとドッペルゲンガーはそう判断すると、本気を出される前に終わらせたいと思うのだった。
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