厄災戦争 大魔王アザトースvs世界5
大魔王アザトースとの戦闘が始まってから三日目。
最早戦争とも呼べるその戦いは、未だに勝敗が決していなかった。
女神イージスの加護を受け、無尽蔵の体力と魔力を持ってして日夜戦い続ける光司と、光司が無意識にばらまく女神の加護を受けて何とか戦線を維持する神聖皇国軍。
元神であるが故に無限に近い体力と魔力を持ち、神聖皇国軍と相対するアザトース。
草木が生い茂った平原は既に更地と化し、戦闘の余波がかなりの範囲に及んでしまっている。
なるべく村や街から遠く離れた場所で戦っていたものの、次第に戦場は動いて行き、近場の街にも被害を出していた。
特に聖王国側の被害が凄まじく、アザトースの放った魔法が意図せず街を飲み込んだ場所も多い。
厄災達の戦争が始まってからたった2日で、人類の人口は半数近くまで減ってしまっていた。
「まだ来ないのか?まさか、どこかで野垂れ死んでいる訳じゃないだろうな」
「かなり遠く離れた場所から感じた魔力の波動........多分、その中には仁のものもあるだろうが、さすがにどれが仁や花音の物だったかを判断するのは無理だな。それと、アイリス。アイツはたとえ世界が滅びようとも死なんよ。そういう男だ」
「信頼が厚くて羨ましいが、私達は最悪の場合を考えなくてはならない。ジンやその仲間達が敗北していた場合をな」
「ハハハ!!その時は俺たちの負けだろ。最後まで悪あがきして死ぬのさ。あの魔王一体で手一杯なんだぞ?ほかの厄災級魔物がここに来た時点で俺たちの負けだよ」
何度も休息を取りつつ魔王の分身体と戦う龍二達は、この2日間で世界中から感じた膨大な魔力について話し合う。
人の身では決して発することの出来ないその魔力は、まず間違いなく厄災級魔物の物だろう。
しかし、その魔力が敵か味方かは分からない。
最悪の場合、全ての戦場で味方が負け、この場に援護に来る可能性だって有り得る。
その時は死ぬしかないと笑う龍二と、それでも龍二と生き残りたいアイリス。
2人は仁達が勝っていてくれと願いながら、戦場を眺めた。
「ジークフリードも流石に疲れてるな。エルドリーシスやほかの団長達も疲れが見えている。兵士達は言わずもがなだ。持っても後二日。下手をしたら今この瞬間に戦線が崩れてもおかしくない」
「あの分身体が硬すぎるんだよ。未だに抑えることは出来ても倒すことが出来ん。今こうして宣戦を維持できているだけマシではあるけどな」
「リュウジ、弟弟子はまだ来ないのか?」
「まだだね。それよりも、問題は奴だ。光司とロムスが抑えてくれているからまだ何とかなっているけど、あちらが崩れたらおしまいだぞ」
「ロムスの奴、勇者に引けを取らない活躍っぷりだな。流石は我が国を代表するミスリル級冒険者。格が違う」
大魔王アザトースと戦っているのは光司だけではない。
“禁忌”ロムスも光司のサポートとしてありとあらゆる手を使っていた。
「“
「禁術か。そりゃあんな馬鹿げた規模の魔術になる訳だ。未だに死者が出てないのも、彼のおかげだしな」
「個人個人に付与された回復結界。このお陰で傷ついても戦線から下がれば回復できる。化け物だよあのエルフは」
大魔王に雷を落とすロムスを見ながら、この場にロムスが居なければ今ごろもっと苦しい戦いになっていたと心の底から思うアイリス達。
戦闘が始まって半日が計画した頃、戦線の維持が厳しくなってきていた神聖皇国軍を見て、ロムスは個人個人に回復結界を張ったのだ。
禁術“
魂を消費することで欠損未満の怪我ならば完全に癒す禁術。本来ひとつの魂を使ったとしても精々数時間程度、10人分ぐらいにしかかけられない魔術ではあるのだが、ロムスは大量にストックしてあった魂を消費して常時この結界を維持してきた。
更に、アイリス達は気づいていないが、アザトースに弱体化の禁術も放っている。
この戦線は、ロムス1人で持ちこたえられていると言っても過言ではなかった。
「どうしたものか。私達では決定打がない」
「時間の問題ですね。早く来いよ馬鹿弟子........」
残りの魂がどれほどあるか分からないが、これも時間の問題だろう。
決定的な一撃が無いことに誰もがもどかしく思っていたその時、遂に彼らは現れる。
「落ちろ流星」
「貫け魔弾」
天から急に降り注いだ流星。
大魔王アザトースの脳天を目掛けて放たれた隕石は、僅かながらアザトースの動きを止める。
そして、その隙を狙って狙い済まされた魔弾がアザトースの顔を撃ち抜いた。
「─────────っく!!」
初めてまともな一撃を喰らったアザトース。
大きなダメージは無いが、一撃貰ったという事実が衝撃的だった。
「........ハハ、またその姿を目にするとは。皆の者!!援軍が来た!!間違っても攻撃するなよ!!」
援軍に来たのが誰れなのか察したジークフリードは、そういうと剣を掲げて味方を鼓舞する。
魔物?だからどうした。
今の彼らは心強い援軍である。
「さて、団長さんが来るまでに倒せると思うかい?」
「無理ですね。私達では決定打がない。あの勇者とやらがとんでもない一撃を隠しているなら別ですが」
“流星”リンドブルム。“自己像幻視”ドッペルゲンガー。
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